2012 Fiscal Year Research-status Report
卵子成熟と関連したヒト及びマウス流産因子の検索と人為的卵子改良の検討
Project/Area Number |
24592455
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
渡邉 誠二 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10241449)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 卵子成熟 / 染色体異常 / 単為発生 |
Research Abstract |
本申請は雌性発生評価法を用いてヒト及びマウス卵子の成熟不良・加齢変性メカニズムを解明し、体外成熟系を利用した卵子クオリティー改良法の確立を最終目標としている。24年度~25年度にかけては(1)マウスを用いて卵子体外成熟(IVM)系の確立とIVM卵子の雌性単為発生における卵子活性化率および胚盤胞形成率低下の因子を明らかにする。(2)マウスおよびヒト未熟卵子において「卵子成熟不良と染色体異常の関連性」を検討する。 (1)に対して、各種系統マウスを用いて卵子体外成熟(IVM)系の確立とIVM卵子の雌性単為発生における化学刺激による卵子活性化法の確立を第一に行った。塩化ストロンチウムによる刺激法では、その活性化効率は若齢体内成熟卵>老齢体内成熟卵=若齢体外成熟卵>老齢体外成熟卵となり、体外成熟や老化による活性化率の低下が顕著である事を確認した。塩化ストロンチウムは細胞膜下でのフォスフォリパーゼC上昇に関わると考えられているが、これに加えて新たに細胞内のCaイオン上昇を直接誘起すると考えられるイオノマイシンによる活性化法を導入しその有効性を確認できた。このため両活性法による活性化率、発生率の違いをもとに、多角的に成熟不良・加齢変性を検討する事が可能となった。 (2)に対して、マウスでは実験系の確立途中であるので、ヒト未熟卵子における成熟と染色体異常に関連する因子の検索を第一に行った。ヒト未熟卵子の微小管分布を化学薬品を用いて変化させることにより、減数分裂後の染色体の異常分離が抑制されると同時に胚盤胞形成率が高まる事が確認された。このとき、細胞周期依存性蛋白キナーゼの局在が高まる可能性が蛍光免疫染色により確認され、このキナーゼ活性の低下が卵子形成不良に関わる因子の重要な一つである可能性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、マウス卵子の雌性単為発生胚による解析が中心であり、当初、電気刺激により非浸潤的に単為発生を誘導することを計画していた。しかしながら、現有設備である電気刺激装置が実験開始当初に故障・修理不能となり、代替機購入の可能性の検討およびこれと平行して、新たなる化学物質による単為発生誘発法の代替導入が急遽必要となった。この点が、研究の遅れとスケジュール変更の原因となった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)マウス卵子において、24年度の成果すなわち活性化効率が若齢体内成熟卵>老齢体内成熟卵=若齢体外成熟卵>老齢体外成熟卵と異なる事を利用し、受精後の遺伝子発現の差をマイクロアレイにて検出し、成熟不良と老化による卵子変性因子の検索を行う。候補となった因子については、マイクロインジェクションによるノックダウン及びノックインを用いた体外成熟・雌性単為発生法により活性化及び発生率への影響を検出し、卵子のクオリティー改善が可能か否かを明らかにする。 (2)ヒト卵子においては、24年度の成果すなわち微小管修飾により局在が高まった細胞周期依存性蛋白キナーゼに対して人為的リン酸化誘導を試み、薬剤による微小管修飾を介さなくても染色体異常と発生率が改善するかを明らかにする。 (3)以上に加え、マウス成熟不良卵子において極体放出が著しく乱れることを発見しており、細胞膜の流動性変が卵割初期のモザイクや倍数性染色体異常増加の一因であることを確認する。そこで、卵活性化に関わるフォスフォリパーゼC・IP3 濃度・小胞内Ca 蓄積・cAMP濃度、アクチン分布及び表層顆粒膜の変化を蛍光色素又は抗体を用いて定量する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
使用する機械の故障により、マイクロアレイに使用するマウス雌性単為発生胚の作製が不可能となった。化学刺激による代替法が必要となり、これの確立のため本年度中のマイクロアレイの施行を延期せざるを得なかった。本年度から持ち越した研究費はこのマイクロアレイによる解析に使用する。 具体的には、マウス卵子を用いて雌性単為発生を誘起し、2 時間後及び8 細胞期に卵子RNA を抽出してマイクロアレイ(外注)を行う。体内成熟卵子を対照にして発現量に差のあった遺伝子についてRealtime-PCR(共同設備)により発現量を再確認する。同時にウエスタンブロットによりタンパクレベルでの発現量変化も確認し、抽出した遺伝子が卵成熟不良関連因子であることを確定する。マイクロアレイ自体は外注であるため、時間的な遅れは十分に取り返す事が可能である。翌年度請求予定の研究費は当初の予定通りの研究に使用される。
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Research Products
(10 results)