2013 Fiscal Year Research-status Report
卵子成熟と関連したヒト及びマウス流産因子の検索と人為的卵子改良の検討
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24592455
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
渡邉 誠二 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10241449)
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Keywords | 卵子成熟 / 染色体異常 / 初期発生 / 細胞周期 |
Research Abstract |
本申請は雌性発生評価法を用いてヒト及びマウス卵子の成熟不良・加齢変性メカニズムを解明し、体外成熟系を利用した卵子クオリティー改良法の確立を最終目標としている。25年度にかけては(1)マウスを用いて卵子体外成熟(IVM)系の確立とIVM卵子の雌性単為発生における卵子活性化率および胚盤胞形成率低下の因子を明らかにする。(2)マウスおよびヒト未熟卵子において「卵子成熟不良と染色体異常の関連性」を検討する。 (1)に対して、各種系統マウスを用いて卵子体外成熟(IVM)系の確立とIVM卵子の雌性単為発生における化学刺激による卵子活性化法の確立を行った。塩化ストロンチウムによる刺激法では、その活性化効率は若齢体内成熟卵>老齢体内成熟卵=若齢体外成熟卵>老齢体外成熟卵となり、体外成熟や老化による活性化率の低下が顕著である事を確認した。これに加えて新たに細胞内のCaイオン上昇を直接誘起すると考えられるイオノマイシンによる活性化法を導入しその有効性を確認できた。このため両活性法による活性化率、発生率の違いをもとに、多角的に成熟不良・加齢変性を検討する事が可能となった。特に、ヒト卵子ではストロンチウムの効果が弱く、イオノマイシンによる活性化が必須である事が確認でき、マウス卵子実験系とヒト卵子実験系の整合性をつける事が可能と思われた。 (2)ヒト未熟卵子における成熟と染色体異常に関連する因子の検索を第一に行った。ヒト未熟卵子の微小管分布を化学薬品を用いて変化させることにより、減数分裂途中での染色体の異常分離が抑制されると同時に胚盤胞形成率が高まる事が確認された。このとき、細胞周期依存性蛋白キナーゼの局在が高まる可能性が蛍光免疫染色により確認され、このキナーゼ活性の低下が卵子形成不良に関わる因子の重要な一つである可能性が確認された。そこで、マイクロアレイによる網羅的な解析による比較が進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、マウス卵子の雌性単為発生胚による解析が中心であり、当初、電気刺激により非浸潤的に単為発生を誘導することを計画していた。しかしながら、現有設備である電気刺激装置が実験開始当初に故障・修理不能となり、代替機の準備に時間を要した。また、マウス卵子を用いたマイクロアレイを委託したが、原因不明のRNA分解により再度の委託が必要となった。これらの点が、研究の遅れとスケジュール変更の原因となった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)「ヒト卵子成熟に伴う遺伝子発現変化の検索」:当初はマウス卵子を用いてマイクロアレイを行う予定であったが、サンプルの分解というトラブルに遭遇した。そこでヒト卵子成熟過程において変動する遺伝子を先にマイクロアレイで網羅的に検索し、それらの変化をヒト及びマウス卵子でReal time-PCRおよびウエスタンブロットを用いて発現量を詳細に検討すると共に、免疫組織化学を用いて視覚的に発現量の時間的位置的変化をとらえる。 (2)「卵子成熟不良と染色体異常の関連性」:雌性発生評価ではマウス成熟不良卵子において卵活性化と極体放出が著しく乱れるため細胞膜の流動性が変化していると考えられる。また、この現象が卵割初期のモザイクや倍数性染色体異常増加の一因であることを示唆するデータを得ている。そこでアクチン分布及び表層顆粒膜の変化を蛍光色素又は抗体を用いて定量化する。同時に新たにアクチン修飾作用のある試薬とヒアルロン酸を用いて膜流動性の変化や極体放出異常を抑制する効果があるかを検証する。 (3)ヒト卵子成熟において特定のキナーゼの発現量が減数分裂における染色体分配に作用し、結果として受精後の初期発生能に関わる事を確認した。マイクロアレイの結果を元にこのキナーゼ活性を左右する因子のノックダウン及びmRNA注入による発現誘導により減数分裂と発生能への影響を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に外注したマイクロアレイにおいて、原因不明のRNA分解が起きたために発現解析の前段階で中止し、残額を使用して再度のマイクロアレイ委託が必要となった。繰越金はこのための資金である。 新たなマイクロアレイ委託はすでに発注済みであり繰越金はこのための支出予定に組み入れられている。
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Research Products
(7 results)