2014 Fiscal Year Research-status Report
母体経鼻免疫における仔マウスにおける免疫学的メモリーの研究
Project/Area Number |
24592557
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
保富 宗城 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (90336892)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 真司 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10244724) [Withdrawn]
戸川 彰久 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (70305762)
杉田 玄 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (20407274)
玉川 俊次 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (40543781)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 母体免疫 / 肺炎球菌 / メモリー |
Outline of Annual Research Achievements |
肺炎球菌表面蛋白抗原PspAを用いた母体経鼻免疫による仔マウスへの免疫誘導のメカニズムとその免疫学的記憶についての検討をおこなった。とりわけ、母乳中に含まれる母マウスのリンパ球が仔マウスの小腸上皮を経由して全身循環に入りさらに脾臓や胸腺に移行することにより、母マウスの免疫学的記憶が仔マウスに伝達・維持される。PspA母体経鼻免疫を行なった母マウスから出生した仔マウス(母体免疫由来仔マウス)において肺炎球菌感染あるいはPspA刺激後の抗PspA特異的免疫反応と肺炎球菌感染予防について検討するとともに、仔マウスを6週齢まで哺乳飼育した後にも免疫学的記憶が存在するかについて検討した。また、母乳を介して抗体以外に新生児に移行しうる抗肺炎球菌特異的免疫応答について検討した。 母体経鼻免疫由来の仔マウスでは血清中抗PspA特異的IgG抗体が上昇することから母体経鼻免疫により仔マウスへの免疫移行は確認された。さらに、PspA母体経鼻免疫を行なった母マウスから出生した母体免疫由来仔マウスでは、出生後にPspAの追加免疫を行なうことで良好な抗PspA特異的IgG抗体の再上昇が認められるとともに、これらのPspAを追加免疫された母体免疫由来仔マウスでは肺炎球菌の腹腔内感染後の生存率が有意に高いことが認められた。また、母体免疫母マウスの血清中にはIL-17が有意に上昇していること、母体免疫由来仔マウスの脾臓リンパ球にはIL-17産生細胞が含まれることから、母体経鼻免疫後に得られた新生児マウスにおいて誘導された抗肺炎球菌特異的免疫応答が成熟後にも観察され長期的な免疫学的メモリーを有することが確認された。さらに、母体免疫母マウスにグリーンマウスを用いることで、母体免疫由来仔マウスでは母体免疫母マウス由来の免疫担当細胞が移行する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肺炎球菌表面蛋白抗原PspAを用いた母体経鼻免疫により、母体免疫由来仔マウスの脾臓には抗PspA特異的IgG産生細胞が存在することが確認されたとともに、この母体免疫由来仔マウスが6週齢に達した時点では、血清中には抗PspA特異的IgG抗体は検出感度以下までに低下していたにもかかわらず、PspA単独の追加皮下免疫により母体免疫由来仔マウスではコントロールマウス(非免疫仔マウス)に比べて有意な血清中の抗PspA特異的IgG抗体価の再上昇が確認された。とりわけ、PspA経鼻免疫母マウスが非免疫母マウスが出産した仔マウスを育てる場合には、仔マウスには存在しなかった抗PspA特異的IgG抗体が経時的に上昇する。さらにこれらの免疫学的記憶の背景には、IL-17を中心としたTH17系細胞が関与することが示唆されている。母体経鼻免疫母マウスから仔マウスへの免疫担当細胞の移行については、グリーンマウスを用いた検討で母マウス由来の細胞が仔マウスに移行する可能性が示唆されている。この免疫担当細胞の母マウスから仔マウスへの移行については、まだ十分な結果が得られておらず更なる検討が必要となるが、これらの結果から母体経鼻免疫により仔マウスに免疫学的記憶が誘導されていることが確認されており、本研究の主たる目的の結果が得られており、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、肺炎球菌表面蛋白抗原PspAを用いた母体免疫母マウスに誘導された抗PspA特異的免疫担当細胞が母体免疫由来仔マウスへ移行するかについて検討されており、今後さらに特異的免疫記憶の機序の解明をおこなう必要がある。 本研究では当初仔マウスにNOD/ShiJic-scid Jclマウス(NOD/SCIDマウス:T・B細胞機能欠如、NK活性・補体活性・マクロファージ機能低下マウス)を用いた検討を行ったが、母体免疫母マウス由来の免疫担当細胞の識別が複雑であった。新生児マウス中の母体由来細胞を追跡するために、6週齢のC57BL/6-Tg(AG-EGFP)(グリーンマウス)雌マウスとC57BL/6雌マウスを使用することで問題点は解決されている。さらにPspAにて母体経鼻免疫したグリーンマウス母マウスでも母乳中への良好な免疫誘導が確認されている。今後、このグリーンマウスを用いた実験系を用いることで母体経鼻免疫による仔マウスへの免疫応答の誘導と免疫学的記憶の誘導機序に焦点を当てた検討を行う。すなわち、仔マウスの消化管粘膜に注目し、仔マウスの腸管における母マウス由来の免疫担当細胞の取り込みの検討を行う。また、仔マウスの中でも特に生後0~7日の新生児期マウス(哺乳中マウス)での免疫応答の構築と維持における母乳栄養の重要性に焦点を当てた研究への推進を予定している。
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Causes of Carryover |
母体免疫による新生児マウスへの免疫応答の誘導と感染予防効果は確認された。さらに新生児マウスにおける特異的免疫応答の免疫学的記憶について、追加免疫による特異抗体の再上昇我確認されている。しかしながら、母乳栄養による母マウスの母乳中の免疫担当細胞の新生児マウスへの移行について NOD/ShiJic-scid Jclマウス(NOD/SCIDマウス:T・B細胞機能欠如、NK活性・補体活性・マクロファージ機能低下マウス)仔マウスによる検討では交配期間の複雑化に伴い、免疫担当細胞の識別が十分に確認ができなかったため、C57BL/6-Tg(AG-EGFP)(通称グリーンマウス)を用いた検討を行なうこととしたため次年度での使用が必要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
既に、新生児マウスでの免疫学的記憶の可能性が示唆されており、C57BL/6-Tg(AG-EGFP)(通称グリーンマウス)を用いた母体経鼻免疫実験を継続する。すでにグリーンマウスでの免疫応答の誘導は確認されている。今後、このグリーンマウスを用いた実験系を用いることで、さらに免疫担当細部の存在を確認することで母体経鼻免疫により、免疫母親からの免疫担当細胞の新生児マウスへの移行について解明する予定である。すなわち、母体経鼻免疫による仔マウスへの免疫応答の誘導と免疫学的記憶の誘導機序に焦点を当てた検討を行うおり、仔マウスの消化管粘膜に注目した仔マウス腸管における母マウス由来の免疫担当細胞の取り込みの検討と生後0~7日の新生児期マウス(哺乳中マウス)での免疫応答の構築と維持における母乳栄養の重要性に焦点を当てた研究へ計画している。
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