2012 Fiscal Year Research-status Report
視細胞変性に伴ったsynaptic remodelingが網膜機能に及ぼす影響
Project/Area Number |
24592677
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
町田 繁樹 岩手医科大学, 医学部, 准教授 (30285613)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 貴光 岩手医科大学, 医学部, 講師 (30405766)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 網膜変性 |
Research Abstract |
1. P347Lロドプシントランスジェニックウサギ(Tg):硝子体内にシグナル伝達をブロックする薬剤を注入し、視細胞変性に伴った網膜各層の機能変化を検討した。網膜電図(ERG)波形を薬剤投与前後でdigital subtractionし、薬剤によって消失した成分を分離した。生後12週齢のTgでは、視細胞およびOFF型双極細胞からの電気応答がWTに比較して低下していた。しかし、驚くことにON型双極細胞の応答は増大していた。特に、刺激強度が弱から中等度では、その増大が顕著であった。つまり、ON型双極細胞がhypersensitiveな状態になっていると考えられた。24週齢ではON型双極細胞の電気応答の増大は認められなかったが、視細胞変性の進行にもかかわらず、その振幅はWTと同等に保たれていた。従って、Tgでは視細胞変性の初期ではON型双極細胞の応答が増大あるいは保たれることが明らかとなった。 2. Royal College of Surgeons(RCS)ラット:RCSラットでは、視細胞の変性が急速に進行しても、網膜内層に由来するscotopic threshold response(STR)およびphotopic negative response(PhNR)は保たれていた。RCSラットのSTRとPhNRは、N-Methyl-DL-Aspartic Acid(NMDA)の硝子体内投与で消失した。また、律動様小波(OPs)の振幅は、WTではNMDA投与によって不変であったが、RCSラットでは視細胞変性が進行すると、NMDA硝子体内投与でその振幅は著しく低下した。従って、RCSラットのSTR、PhNRおよびOPsの発生メカニズムはWTとは異なり、それらの発生には網膜内のNMDAレセプターが関与すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝性視細胞変性動物モデルでは、網膜電図(ERG)を用いることで、視細胞変性に伴った網膜各層の機能変化を観察することができた。P347Lロドプシントランスジェニックウサギでは、ON型双極細胞の電気応答が変性早期に増大することが、初めて明らかとなった。また、Royal College of Surgeons(RCS)ラットでは、変性の進行に伴って、網膜内層のN-Methyl-DL-Aspartic Acid(NMDA)の機能的な変化が生じていると考えられた。以上の二つの事象から、視細胞変性が進行する過程では、網膜中層や内層でsynaptic remodelingが生じている可能性が強く示唆された。今後、synaptic remodelingを形態学的な手法で証明する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 臨床研究への発展:網膜色素変性(RP)患者からの通常のERG解析は困難である。なぜなら、RP患者が受診する時期には視細胞変性が進行しており、ERG振幅が極めて低下しているからである。RPでは黄斑部の機能が保たれているので、黄斑局所ERGを記録し解析することが可能である。黄斑局所ERGには上記の網膜内層に由来するPhNRおよびOPs、更にONおよびOFF応答が含まれている。光干渉断層系で得られた網膜中層ならびに内層と黄斑局所ERGの各層の電位との関係を検討する。また、光視症および羞明といった“視覚過敏”症状の程度とERG所見の関連を検討する。 2. 動物実験の進展(免疫組織染色):12~48週齢のP347Lロドプシントランスジェニック(Tg)ウサギとWTウサギの眼球を摘出し、杆体双極細胞に特異的に発現しているprotein kinase C (PKC)と錐体に特異的に発現しているcone transducin に対するモノクローナル抗体を使ってdouble immmunostainingを行い、蛍光顕微鏡で観察する。二つのタンパクのco-localizationを観察することで異所性シナプスの存在を調べる。また、3~8週齢のRCSラットの眼球を摘出し、NMDAレセプターに対するモノクローナル抗体を用いて免疫組織染色を行って、dystrophicとcongenic controlでの発現形態の違いを検討する 3. 他疾患への発展:網膜外層のみならず網膜内層が変性する疾患も対象とした。具体的には網膜神経節細胞は変性する緑内障や黄斑円孔術後の症例を対象とし、変性にともなった黄斑局所ERGの変化を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物、薬品、コンタクトレンズ電極等の消耗品に使用する予定である。更に、論文作成のための英文校正費を計上したい。
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Research Products
(7 results)