2013 Fiscal Year Research-status Report
マイクロRNAを標的としたベーチェット病における抗TNF抗体治療の分子機序の解明
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24592678
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
岡田 アナベル・あやめ 杏林大学, 医学部, 教授 (50303962)
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Keywords | ぶどう膜炎 |
Research Abstract |
これまでベーチェット病に対する抗TNF-α抗体治療の作用機序についての報告は散見されるものの、その分子機序に関する詳細は不明な点が多い。MicroRNA (miRNA)は機能性non-coding RNAの中のひとつの分子群で、20-24塩基長程のsmall RNAであり、相補的な配列をもつ標的mRNAの3’-UTRに結合することでmessenger RNA (mRNA)の分解、翻訳を制御する。本研究課題ではインフリキシマブ治療前後の末梢血単核球のmiRNAに関する網羅的な遺伝子発現解析を施行し、miRNAの変動、miRNAとぶどう膜炎活動性との関連について検討を行った。 今年度はmiRCURY LNA microRNA Arrayを用いてmiRNA解析を行った症例のうち、マイクロアレイによるmRNAの網羅的解析も施行できた4例のベーチェット病ぶどう膜網膜炎患者を対象にmiRNA発現の検討、特に4例に共通して発現の上昇、低下のみられたmiRNAを抽出し、それらのmiRNAの標的となる遺伝子発現(mRNA)をマイクロアレイの手法を用いて解析した。その結果、4例全例でインフリキシマブ治療開始後1年間は眼発作を認めなかったが、1例でインフリキシマブ治療開始2年目以降に眼炎症発作がみられた。MiRNAの網羅的遺伝子発現の検討では、4例に共通して発現の上昇、または低下したmiRNAはなかったものの、4例中3例でmiRNA144の発現の低下がみられた。一方、インフリキシマブ治療開始2年目以降で眼発作のみられた1例で、miRNA144の発現が上昇し、かつmiRNA-144の標的遺伝子群の発現に低下がみられた。本研究結果からベーチェット病ぶどう膜網膜炎に対するインフリキシマブの有効性に末梢血単核球細胞中の特定のmiRNAの発現変動が関連している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題ではベーチェット病ぶどう膜網膜炎患者におけるインフリキシマブ治療前後の末梢血単核球のmiRNAについて網羅的な遺伝子発現の解析をすることで、miRNAとぶどう膜炎の活動性との関連、miRNAの発現変動、さらに並行してmRNAのアレイ解析を行うことでmiRNAとその標的遺伝子(mRNA)との関連について解析した。その結果、1) インフリキシマブ開始前6ヶ月間に4例中3例で眼発作をみとめていたが、開始後6ヶ月では4例全例で眼炎症発作がみられなかった。その後、治療開始2年目以降で4例中1例に炎症発作の再燃がみられた。2) miRNAのマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現では4例に共通して発現の上昇,低下したmiRNAはみられず、症例により発現のばらつきが認められた。一方、4例中3例でmiRNA144の発現の低下がみられた。反対にインフリキシマブ治療開始後、眼発作のみられた1例では、miRNA144の発現が上昇し、かつmiRNA-144の標的遺伝子群の発現が低下していることを確認した。 これらの結果から症例によってmiRNAの発現変動にばらつきはあるものの、ベーチェット病ぶどう膜網膜炎において特定のmiRNAが炎症活動性バイオマーカーとしての利用できる可能性、またmiRNAの発現変動が標的mRNAの発現量を変化させることで全身の免疫応答にも作用する可能性がある。今年度はマイクロアレイを用いてmRNAの網羅的な遺伝子発現解析を行うことでmiRNAと標的mRNAとの関連について検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題ではマイクロアレイの手法を用いて、ベーチェット病ぶどう膜網膜炎患者におけるインフリキシマブ治療前後の末梢血単核球のmiRNAについて網羅的な遺伝子発現解析を引き続き施行する。これまでのところ、インフリキシマブ導入前後で全例に共通して発現の上昇したmiRNA、または低下したmiRNAは認められなかったものの、治療後も炎症の活動性が高い症例ではmiRNA144など特定のmiRNAの発現が上昇していることが明らかとなった。平成26 年度は平成24年度、25年度に引き続いて、以下の項目について検討予定している。 1) 新規インフリキシマブ導入症例におけるインフリキシマブ治療前後でのmiRNA の発現解析、mRNA発現解析:マイクロアレイの手法を用いてmiRNAとmRNAの発現の変動を検討、とくに発現上昇、または低下のみられたmiRNAについてmiRBaseなどのデータベースを用いて個々のmiRNAの機能を解析し、miRNAの標的mRNAの変動の有無について、より詳細に解析を行う。 2) miRNAと炎症活動性との関連の検討:発現の上昇、低下がみられたmiRNAとベーチェット病ぶどう膜炎の活動性との関連について検討する。今年度は新規症例に加えて、すでにインフリキシマブが導入されている症例のうち疾患活動性の高い症例と低い症例に分類し、特定のmiRNA、mRNAの遺伝子発現量について定量PCRを用いて比較し、miRNAが疾患活動性のバイオマーカーとして有用か検討する。 3)難治性ぶどう膜炎の動物モデルとして知られるマウス実験的自己免疫性ぶどう膜炎(EAU)を作成する。さらにインフリキシマブ治療前後で発現の上昇、低下したmiRNAを抽出、それらのmiRNAのアゴニスト、またはアンタゴニスト活性を有する合成miRNAを作成、マウスに導入することでEAUの病態に変動がみられるか検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ベーチェット病ぶどう膜網膜炎の症例に対して、各年度毎に2-3名程度のインフリキシマブの導入を予測していたが、今年度はインフリキシマブの導入例が当初の予測よりも少なく、治療前後の末梢血を用いたmicroRNAに対するマイクロアレイ解析に至った症例が少なかったため研究費の次年度使用額が生じた。 1) インフリキシマブ新規導入症例におけるmiRCURY LNA microRNA Arrayを用いた治療前後のmiRNAの発現解析:新規インフリキシマブ導入症例に対してインフリキシマブ治療前後で発現が上昇、低下したmiRNAをmiRCURY LNA microRNA Arrayを用いて同定する。2) インフリキシマブ治療前後のmRNAのマイクロアレイ発現解析:miRNAは標的となるmRNA遺伝子発現を分解、翻訳を制御することで機能することが知られている。上記1)で発現上昇、または低下のみられたmiRNAについてmiRBaseなどのデータベースを用いて個々のmiRNAの機能、標的遺伝子を解析する。さらに同一の検体からmRNAを抽出、マイクロアレイ解析を施行しmiRNAの標的となる、または標的と予想される分子群の発現について解析を行う。
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[Journal Article] Cost-utility analysis of cataract surgery in Japan: a probabilistic Markov modeling study2013
Author(s)
Hiratsuka Y, Yamada M, Akune Y, Murakami A, Okada AA, Yamashita H, Ohashi Y, Yamagishi N, Tamura H, Fukuhara S, Takura T
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Journal Title
Jpn J Ophthalmol
Volume: 57
Pages: 391-401
DOI
Peer Reviewed
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