2013 Fiscal Year Research-status Report
ヒルシュスプルング病および類縁疾患の原因遺伝子解析と神経堤幹細胞移植治療
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24592700
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
下島 直樹 慶應義塾大学, 医学部, 講師(非常勤) (30317151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒田 達夫 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (60170130)
芝田 晋介 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70407089)
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Keywords | ヒルシュスプルング病 / ヒルシュスプルング病類縁疾患 / hypoganglionosis / 腸管神経 / 腸管グリア / 神経堤幹細胞 / 再生医療 / 網羅的遺伝子解析 |
Research Abstract |
ヒルシュスプルング病類縁疾患の一つであるhypoganglionosisの病態解明を目的として、前年度におこなった臨床検体を用いての研究を発展させるために、症例数を増やして検証を重ねた。 具体的には前年度、hypoganglionosis 6検体、正常コントロール 5検体を用いて神経マーカー(Tuj1), グリアマーカー(S-100)を対象とした免疫染色を施行し定量的に解析した結果、hypoganglionosisでは正常コントロールに比べて神経よりもグリアの方が割合的により少ないという結果を得たので、今年度は検体数をhypoganglionosis 27検体、正常コントロールを20検体にして検証した。定量的な解析のために今年度も免疫染色を行ったが、より客観性に富んだ染色を行うための最適な抗体を見直し、神経マーカーにHu C/D、グリアマーカーにSox10を抗体として用いることにした。現在、免疫染色を終了し、定量的な解析を行っている最中である。 もし、症例数を増やしての解析でやはりhypoganglionosisにおいて神経よりもグリアがより少ないということがはっきりすれば、今後の幹細胞移植による治療計画が、神経により分化しやすい条件で移植治療を考えるのみならず、グリア細胞への分化を促進できるような条件での移植治療を考えていくべきとも考えられ、重要なデータになり得ると考えている。 またhypoganglionosisの原因遺伝子探索として同疾患患者4人および患者の父、母1人ずつの計6サンプルを用いて、次世代シーケンサーによる網羅的遺伝子解析を施行し、得られた遺伝情報から原因遺伝子の特定を試みている。今年度は最近の解析ソフトウエアにて解析をやり直し、候補遺伝子を現在絞り込んでいるところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に得られた貴重な知見であったhypoganglionosisの臨床検体における神経とグリアの比率の点に焦点を当て、より客観性に優れた抗体で検体数も格段に増やし免疫染色を進めることができたことで、本研究を前進させることができている。 また、hypoganglionosisの臨床検体から得られた遺伝情報を最新のソフトウエアにて解析を進めることができていることも今年度の前進である。 一方で正常、およびhypoganglionosisの腸管から分離、同定された神経堤細胞の自己増殖能、多分化能の検討については、今年度対象となる腸管検体が得られず、前進させることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成26年度はこの2年間で積み上げてきたデータを元に、論文として報告することに注力したいと考えている。 hypoganglionosisにおける神経、グリアの比率については現在行っている定量的解析を進める。同疾患は最近行われた国内の主要機関を対象としたサーベイランスでも100症例程度の稀少疾患である。この意味からも論文化して世に報告することは意義深いことであり、解析結果が仮説と合致するしないに関わらず論文化する所存である。 一方次世代シーケンサーによる網羅的遺伝子解析は、本疾患が遺伝性の疾患であるかどうかすら分かっていない中での研究であり、現在までに挙がっている候補遺伝子も互いの関連性などについては不明確なものである。今後は、一つ一つの候補遺伝子についてこれまでに報告されている論文を検索し、hypoganglionosisの病態や腸管神経の発生分化と関連づけられる可能性があるかを検討していくことになる。また、一方では症例数を増やして新たな遺伝情報を加味して候補遺伝子を新たに見つける、またはさらに絞り込んでいくことをしたいと思う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に未使用額が発生した理由は、効率的な物品調達を行った結果である。 上記計画を推進させるために抗体や試薬の購入、および次世代シーケンサーによる網羅的遺伝子解析の症例数を増やすべくその解析費用に充てたい。 また、今年度は学会発表に加えて論文化も重要であり、そのための英文校正や論文投稿費用などにも充てる予定である。
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