2013 Fiscal Year Research-status Report
重症敗血症における酸化ストレス制御を目的とした新たな血液浄化カラムの開発
Project/Area Number |
24592741
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
日高 正剛 大分大学, 医学部, 助教 (00404385)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
萩原 聡 大分大学, 医学部, 講師 (50527661)
野口 隆之 大分大学, 医学部, 教授 (90156183)
|
Keywords | 酸化ストレス / 臓器傷害 / 血液浄化療法 / ビタミンE |
Research Abstract |
本研究のテーマは,酸化ストレスを血液浄化療法で制御するために,新たなカラムを作成することである。元来,急性期の臓器傷害における酸化ストレスの関与は明らかとされており,当教室からもその重要性を指摘してきた。現在,様々な治療法が臨床応用されてはいるが,酸化ストレス制御に特化した治療法は確立しておらず,新規治療法の開発が望まれる。 昨年度の研究成果として,まず挙げられるのは,新規ビタミンE誘導体であるLypoil-Vitamin Eの合成に成功したことである。更に,LPS誘発ラット全身性炎症反応モデルにおけるLypoil-Vitamin E の抗炎症効果を,経時的な血清中サイトカイン濃度並びにLPS投与後の各種臓器の傷害度を評価した。結果,LPS投与に誘発されるTNF-αやIL-6といった炎症性サイトカインの上昇は,Lypoil-Vitamin Eの投与により有意に抑制できることが示された。更に,LPS投与後の各種臓器傷害を軽減できることがHE組織の顕鏡結果により示された。以上のことより,Lypoil-Vitamin Eは,強力な抗炎症効果と臓器保護効果を有することが示された。 上述した成果を基に,本研究計画3ヶ年のうち2年目の今年は,Lypoil-Vitamin Eをコートした新規カラムの作成と最終年度に向けたラット体外循環モデルの確立を目標とした。カラムの作成は,従来のポリスルフォン膜の内側にLypoil-Vitamin Eをコートすることを目標として行い,中空糸の膜内部に均一にコートすることが困難でかなりの時間を要してしまったが,協力者のアドバイスもあり,新規カラムの作成に成功した。同時に,次年度の研究をよりスムーズに行うために,正常ラットに対してヒト用カラムの200分の1に縮小したミニカラム,安定して体外循環を施行できる回路を作成し,体外循環モデルを確立した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究において,化学合成に詳しい学内の専門家の全面的な協力の下,一番の困難が予想されていた新規合成ビタミンE誘導体であるLypoil-Vitamin Eの合成が達成された。本年度は,安定してこのLypoil-Vitamin Eを供給していただき,中空糸の膜内部に均一にLypoil-Vitamin Eをコートした新規体外循環用膜素材を完成することができた。また,次年度の実験につなげるためのラット体外循環モデルの手技的な確立も同時に達成できたことから,最終年度に向けて実験を順調につなげることが可能と考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は,本研究の最終年度として非常に重要な年度となってくる。本年度までの研究を更に進めることが重要で,1)Lypoil-Vitamin Eをコートした体外循環用カラムの有用性の証明,2)Lypoil-Vitamin Eを透析膜表面にコートした新規カラムの作用メカニズムと酸化ストレス制御の関係を解析すること,を中心に研究を進める。そして,最終目標である酸化ストレス制御に有効な血液浄化療法の臨床応用に向けて,基礎的研究成果をより強力に推進していく予定である。 そのためには,Lypoil-Vitamin Eをコートしたカラムの有用性の証明とそのメカニズム解析が本研究遂行における重要課題だと考えている。各種解析においては,第一に現在大分大学内のバイオラボセンターに実験に必要な大型機器の設置が進んでおり,昨年度同様本施設をうまく活用することで,実験を効率的に行うことを心がける。第二に,すでに当教室が保有している実験機器を最大限駆使する。以上の基本方針のもと時間とお金の無駄を省き,研究年度内での完了をめざし実験を遂行していく。実験途中で生じた疑問点などについては,大学内外の専門家に適宜アドバイスをいただきながら,研究を進めていくこととする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
カラムの作成において,中空糸の膜内部に均一にLypoil-Vitamin Eをコートすることが困難で,予定外の時間を要してしまった為。 最終目標である酸化ストレス制御に有効な血液浄化療法の臨床応用に向けて,基礎的研究であるLypoil-Vitamin Eをコートしたカラムの有用性の証明とそのメカニズム解析が本研究遂行における重要課題であるので,本年度は大学内の実験機器を最大限駆使し円滑に解析を行い,無駄のない研究を行う。 特に,新規合成ビタミンE誘導体であるLypoil-Vitamin Eの引き続き安定的な供給をしていただくこと,ラット体外循環モデルを用いた更なる基礎的研究成果の為に前年度未使用額を使用していき,本年度内の研究完了を予定している。
|