2012 Fiscal Year Research-status Report
敗血症におけるプロカルシトニンの意義―プロカルシトニン欠損マウスを用いてー
Project/Area Number |
24592757
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Kawasaki Rehabilitation University |
Principal Investigator |
中村 美砂 大阪河崎リハビリテーション大学, 公私立大学の部局等, 教授 (70285386)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | カルシトニン |
Research Abstract |
プロカルシトニン(PCT)は、新しい信頼性の高い敗血症のマーカーとして近年注目されている。しかしながら、そのメカニズムはよくわかっていない。そこで本研究は申請者が作成したプロカルシトニン欠損マウス(PCT KO)を用いて、リポポリサッカライド(LPS)により誘発された敗血症における生理的、病理的変化を探求することにより、敗血症の発生、進行および増悪の過程でのPCTとその関連因子の役割を明らかにすることである。すでにPCT KOを作出しており、甲状腺でPCTのRNA発現が見られないことをRT-PCR法により確認している。生殖能および生育能は、野生型と比較して差が見られず、安定して系統を維持することが可能となっている。また外観、全身臓器形成および組織形態も野生型マウスと比較して相違が認められていない。このPCT KOマウスを用いて、LPS投与が生存期間に与える影響について調べた。まず野生型マウスを用いて24時間で死亡するLPS濃度の決定を行ったところ、35mg/g体重が適切であった。次に、KOマウスと野生型マウスにおいて35mg/g体重の濃度でLPS腹腔内投与し死亡するまでの様子を観察した。その結果、両者に大きな違いは見られず、約24時間後には両者とも死亡した。しかしながらKOマウスの方が若干動きが活発でかつ数時間延命であった。本結果よりカルシトニンは敗血症による死亡には大きく影響しないが、敗血症症状を増長する働きのあることが推測された。今後は、そのメカニズムについて解明することが必要と考えられたため、解析個体数を増やし敗血症マーカー物質の比較を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最初マウスの繁殖率が低く、実験に供給できる引数が不足していた。そこでケージ内に出産、育児用のスペースを設置することで出産率および育児率が向上した。現在では、安定してマウスを得ることができているので25年度は研究の進度が進むことが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度の研究結果より、カルシトニンが敗血症症状を増長する働きのあることが推測された。今後は、そのメカニズムについて解明する。また、マウスミルク中のPCTがマウスに与える影響についても明らかにする。 ①PCT KOマウスにおけるLPS投与が臓器障害に与える影響 LPS投与して数日経過したKOマウスの全身臓器を摘出、組織標本を作成、観察し、野生型でのそれと比較することにより、PCTが臓器早期障害へ及ぼす効果を明らかにする。 ②PCT KOマウスにおけるLPS投与がTNF-α、CRP, IL-6などに与える影響 LPS投与したマウスから時間経過を追って血清を回収しELISA法まどにより上記物質を定量し、野生型でのそれと比較する。 ③PCT KOマウスにおけるLPS投与がNO産生に与える影響 Nitric oxide (NO)はその血管拡張作用により敗血症性ショックの血行動態に深く関与する物質であり、マクロファージ等で誘導されるinducible nitric oxide synthase (iNOS)によって産生されるNOは重要な役割を果たすと考えられている。NOの安定した酸化物であるnitriteをNO産生量の指標として測定する。LPS投与後、継時的に、野生型マウスおよびKOマウスより血清を採取し、除タンパク後、Griess法により、nitriteを測定する。これにより、PCTが血管系へ及ぼす影響が考察できる。 ④母乳中のPCTが仔マウスに与える影響 授乳期にあるKO仔マウスを2群に分け、1群では授乳可能な野生型雌マウス (母乳中にPCTがある)が、もう1群では授乳可能なKO雌マウス(母乳中にPCTがない)が哺乳する。授乳期後期にLPSを投与し、仔マウスの病態の比較を経日観察および病理解剖により行うミルク中のPCTが仔マウスの感染症へ及ぼす影響が明らかとなる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マウスの繁殖率学低かったため、計画していた測定・検索に係る試薬等の未使用額が発生した。前述のとおり、現在の研究進度は良好であることから、次年度は以下の使用計画で進める。 【物品費】1)生化学用試薬(炎症物質のELIZA測定など)として83万円、2)分子生物学的研究(各臓器の発現RNAの検索など)として32万円、3)組織標本作製試薬 (各臓器の障害変化の検索など)として10万円 【人件費】1)実験助手に係る人件費として、36万円
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