2013 Fiscal Year Research-status Report
マウス二次口蓋突起の先端上皮間接着の分子制御と口蓋裂の発症機構
Project/Area Number |
24592780
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
田谷 雄二 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (30197587)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青葉 孝昭 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (30028807)
添野 雄一 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (70350139)
藤田 和也 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (70549055)
佐藤 かおり 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (90287772)
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Keywords | 歯学 / 器官発生 / マウスモデル / 顎顔面発生 / 裂奇形 / 上皮間葉相互作用 / 分子ネットワーク / miRNA |
Research Abstract |
マウス二次口蓋形成における口蓋突起間の癒合機序について、研究代表者らはDNAマイクロアレイ解析と遺伝子改変モデルでの表現型データベースの解析から、Tgfβ3とCaskが接着期の口蓋突起先端上皮(MEE)細胞の表現型を決定する機軸分子であることを明らかにしてきた。これらの分子機能として、Tgfβ3はMEE細胞表面での糸状仮足の形成誘導、Caskは糸状仮足による細胞接着シグナル伝達を担うことにより突起間癒合に寄与すると想定しているが、両分子の連携・相互作用は知られていない。本研究では、接着期MEE細胞における遺伝子・miRNA発現の網羅的解析と機能解析に基づき、口蓋突起形成におけるTgfβ3とCaskを介した分子ネットワークと機能について明らかにする。 本年度では、MEE細胞内での分子局在の解析を継続するとともに、口蓋突起の癒合段階(水平伸長期・接着期・間葉合流期)における遺伝子発現変動については、マイクロアレイ解析データに基づいて遺伝子発現プロファイルを作成し、Ingenuity Pathway Analysis (IPA)による遺伝子群の機能・パスウエイなどのアノテーション解析を実施した。その結果、(1)分子局在解析法の向上により、接着期前後でのMEE細胞内Cask分子の核移行が明瞭となり、核内のp21と協働して細胞増殖活性の抑制に寄与することが検証できた。(2)Caskと相互作用する分子群として103種が抽出された。これらの分子群のIPA解析では、「tight junction」のpathwayが有意な帰属性を示した。このpathway内には、Caskと結合して細胞間接着に働く分子群だけでなく、「Tgfβ pathway」と「RhoA signaling」を介して「cell migration」「cell cycle」「EMT」に関連する分子群と繋がっていることが注目された。(3)Caskとの関係が想定されるTgfβ3, Cdc42, Syndecanは、口蓋突起間の接着に先立って細胞間認識に働く「糸状仮足形成」の分子ネットワークの構成分子であることが注目された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では、ICR系マウスを用いてリアルタイムPCR法によるMEE細胞でのCaskとCask関連分子の遺伝子発現の検証と、蛍光免疫染色による口蓋突起でのタンパク局在の確認を行った。接着期MEE細胞とその近傍にある間葉細胞をマイクロダイセクションにより分離・採取することにより、両細胞種の遺伝子発現レベルを個別に定量解析することができた。タンパク局在については、蛍光多重免疫標識により接着直前と接着途上のMEE細胞における糸状仮足の形成領域、接着部分の細胞膜直下、細胞核での局在を確かめた。 本年度では、初年度からの口蓋突起MEE細胞での分子局在解析を継続するなかで、パラフィン切片から凍結切片への変更や固定・染色条件、共焦点レーザー顕微鏡での観察法などの改良によって、より鮮明な陽性像が得られるようになった。口蓋突起の癒合段階(水平伸長期・接着期・間葉合流期)における遺伝子発現変動については、マイクロアレイの解析データに基づいて遺伝子発現プロファイルを作成し、ならびにIPAによる遺伝子群の機能・パスウエイなどのアノテーション解析を実行し、初年度で行ったCytoscapeとそのプラグインliterature searchおよびBiNGOを用いた解析結果と比較検討した。その結果、IPA解析によりCaskと相互作用する分子群(direct / experiment)として、ネットワークを構成する103種の分子が抽出でき、F11r, Dlg1, Ebp4.1, ID1, Tbr1などのCytoscape解析と一致した分子種が多数含まれることも確認できた。これらの分子群でのパスウエイ解析(Canonical pathway)を実施し、Cask関連分子群と繋がる複数の分子群を明らかにすることができた。また、京都大学が運営するKEGG pathwayデータベースを活用し「tight junction」の経路におけるCaskの上下流に位置する分子種が確かめられた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、IPA解析により確証された「tight junction」のほかに、Cask関連分子群と繋がる「cell adhesion」「RhoA signaling」「cell migration」「cell cycle」「EMT」「Tgfβ pathway」「糸状仮足形成」の分子群のなかで、注目された分子の発現定量解析を行うとともに、タンパク組織内局在の解析、さらに糸状仮足形成に関連してMEE細胞表面の糸状仮足とプロテオグリカン構造等の詳細についても電顕を併用した組織観察を実施する。また、胎仔頭部から摘出した口蓋突起の器官培養系での分子発現抑制実験を開始する。口蓋突起器官培養系では接着期以降のin vivoでみられるMEE細胞の動態を再現できることを確かめている。遺伝子発現抑制では転写開始点を含む領域、miRNA抑制ではRISCに取り込まれるGuide鎖またはDicer切断部位を含むループ領域を標的とした20-30塩基のmorpholino anti-sense ODNとsense ODNを使用し、培養0~48時間での組織形態変化(MEE細胞間接着、増殖)を観察する。二次口蓋試料でのmorpholino-ODNによる阻害実験はこれまでにMEE細胞の間葉形質転換に働くsnail遺伝子発現抑制で有効なことを確かめているが、morpholino-ODNが十分な効果を発揮しない場合には、リポソームや遺伝子導入装置を使って導入効率の向上をはかる。また、分子発現におけるmiRNAを介した転写後制御にも注目して、miRNAマイクロアレイ解析も計画する。発現変動を示したmiRNAの検証にはLMD/リアルタイムPCR法を使用する。miRNAの配列はmiRDB(http:mirdb.org/miRDB/)から入手し、miRNAのプライマーはmiRNAの全長(Fw)とUniversal primer(Rv)を準備する。
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[Journal Article] Generation of a mouse model with down-regulated U50 snoRNA (SNORD50) expression and its organ-specific phenotypic modulation2013
Author(s)
Soeno Y, Fujita K, Kudo T, Asagiri M, Kakuta S, Taya Y, Shimazu Y, Sato K, Tanaka-Fujita R, Kubo S, Iwakura Y, Nakamura Y, Mori S, and Aoba T
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Journal Title
PLoS ONE
Volume: 8
Pages: e72105
DOI
Peer Reviewed
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