2013 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子改変マウスを用いた生体内骨形成におけるSUMO化修飾の機能解析
Project/Area Number |
24592787
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
雪田 聡 静岡大学, 教育学部, 講師 (80401214)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 浩彰 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (50227930)
細矢 明宏 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (70350824)
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Keywords | SUMO化修飾 / 骨芽細胞 / 遺伝子改変マウス / 分化制御 / 培養細胞 / Osterix |
Research Abstract |
マウス筋芽細胞由来培養細胞株C2C12細胞およびマウス骨髄間葉系幹細胞由来培養細胞株ST2細胞を用いた研究から、これらの細胞株においてSUMO化修飾の阻害がBMP誘導性の骨芽細胞分化を促進させることが明らかになっている。この原因の少なくとも一部はBMPシグナル伝達において転写因子として機能するSmad4のSUMO化修飾にあると考えられるが、SUMO化修飾の標的となるタンパク質は多岐にわたり、SUMO化修飾が骨芽細胞分化に与える影響は未解明な点が多く残されている。 本研究課題ではSUMO化修飾に必須の酵素であるUbc9を骨芽細胞特異的に欠失した遺伝子改変マウスを作成し、骨形成について野生型と比較することによって生体内の骨形成におけるSUMO化修飾の役割を明らかにすることを目的としている。 これまでUbc9 folxマウスを作出しコンディショナルノックアウトマウスを作出することを予定していたが、遺伝子改変マウスの作製に必要なターゲティングベクターの構築が難航している状況である。 その一方で、C2C12細胞やST2細胞よりも骨芽細胞への分化が進んだ骨芽細胞前駆細胞由来MC3T3-E1細胞を用いた研究から、Ubc9の機能阻害は骨芽細胞の石灰化を阻害するという結果が得られている。この結果は骨芽細胞分化の段階によってSUMO化修飾の影響が異なる可能性を示しており、現在、SUMO化修飾阻害剤としてアナカルジン酸を用いてSUMO化修飾を阻害することを計画している。さらに、骨芽細胞分化に必須の転写因子であるOsterixがSUMO化修飾を受けることを新たに見出し、Osterixの機能がSUMO化修飾によりどのような影響を受けるのかを検討している。その結果、OsterixはN末端領域から中央部にかけてSUMO化修飾を受け得る領域が存在すること、BMP刺激による骨芽細胞分化促進はOsterixのSUMO化修飾を抑制することが示唆されるデータを得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究課題の目標の1つであった遺伝子改変マウスの作出については、未だコンストラクトの作製に成功しておらず、目標を達成できていない。 その一方で、SUMO化修飾が骨芽細胞分化に与える影響を解明する、という点については、大きく進展したと考えている。1つは骨芽細胞分化に必須の転写因子であるOsterixがSUMO化修飾の標的となることを見出し、OsterixのN末端側から中央領域を含む変異体はSUMO化修飾を受ける一方で、C末端側のみからなる変異体ではSUMO化修飾が見られないことを示唆するデータを得られた点である。今後、どのアミノ酸残基がSUMOタンパク質と結合するのかを明確にすることによりSUMO化修飾を受けない変異型Osterixを作成し、その機能を解明する。 2つめは、SUMO化修飾阻害剤としてアナカルジン酸を用いて骨芽細胞分化への影響を時期特異的に検討する実験系を立ち上げたことである。現在、C2C12細胞、ST2細胞ではアナカルジン酸の添加によりBMP刺激による骨芽細胞分化が促進される一方で、MC3T3-E1細胞では分化促進は見られず、Ubc9の阻害と同様の傾向を示すことが判明した。 以上の結果はSUMO化修飾がSmad4のみならず骨芽細胞分化に重要な複数の転写因子の機能を制御する可能性を明らかにし、骨芽細胞分化においてSUMO化修飾が時期特異的に様々な影響を与えることを示唆するものであり、順調に研究が進展していると考えている。 以上の事から、研究全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在コンストラクト作製が難航している遺伝子改変マウスの作出については、このまま継続しても期間内にデータを得ることは極めて困難である。そこで、現在順調に進展している(1)OsterixのSUMO化修飾が骨芽細胞分化に与える影響の解明、(2)アナカルジン酸を用いたSUMO化修飾が骨芽細胞分化に与える時期特異的な影響の解明、の2点に的を絞った研究を計画している。 (1)についてはこれまでにN末端側または中央領域にSUMO化修飾を受けるサイトがあることが示唆されているため、これらの領域のうち、SUMOタンパクが結合するリジン残基をアルギニンに置換した変異体を作成し、SUMO化修飾を受けるかを検討することにより、OterixのSUMO化修飾部位を明らかにする。さらに、この変異体のDNA結合能や細胞内局在、安定性を検討することにより、OsterixのSUMO化修飾がどのような影響を与えるのかを明らかにする。さらに、内在性のOsterixがSUMO化修飾を受けるレベルを明らかにし、それが骨芽細胞分化が進行するにしたがってどのように変化するのかも明らかにする。 (2)については、BMP添加により骨芽細胞分化を誘導した後、経時的にアナカルジン酸を用いてSUMO化修飾を阻害してた場合、ALP活性および骨芽細胞分化マーカー遺伝子の発現がどのように影響を受けるのかを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究に使用する試薬を必要最小限に絞って使用し、学会発表が計画していた2回から1回に減少した結果、次年度使用額が13,389円生じた。 次年度の研究に必要な消耗品(試薬など)に充てるよう計画している。具体的には細胞培養に必要な培地および培地に添加する試薬を購入する予定である。
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