2013 Fiscal Year Research-status Report
プロタミンペプチドのバイオフィルム形成病原真菌に対する作用機作の解明と応用開発
Project/Area Number |
24592791
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
長 環 福岡歯科大学, 歯学部, 准教授 (90131870)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲井 哲一朗 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (00264044)
永尾 潤一 福岡歯科大学, 歯学部, 助教 (30509047)
今吉 理恵子 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (80320331)
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Keywords | Candida albicans / 抗真菌薬 / プロタミンペプチド / 細胞内透過 / 殺菌的作用 / 形態変換抑制 / 環状化ペプチド |
Research Abstract |
病原性真菌Candida albicans (C. albicans)はヒトの表皮、粘膜に常在する真菌であるが、特に中高年以降の口腔では加齢による免疫力の低下や唾液量の減少、さらに義歯装着率の増加などにより本菌による日和見感染症の発症が急増する。本プロジェクトでは急速な超高齢化社会を反映し、より安全な抗真菌薬の開発を最終ゴールとしている。近年新規抗真菌薬としてペプチドの研究が活発化してきていることから、本プロジェクトにおいても食品保存料として開発されたサケプロタミンを構成するアミノ酸の一部分が抗真菌作用を示すペプチドであることに注目し、その作用機序の解明に取り組んだ。 プロタミンペプチドはアルギニンリッチな14残基塩基性ペプチド(VSRRRRRRGGRRRR)でC. albicansに殺菌作用を示す。既に研究が進んでいる抗真菌ペプチド:ヒスタチン-5およびTatペプチドに比べプロタミンペプチドが優れている点として、C. albicansのバイオフィルムマトリクス成分β-1,3グルカンによる抗真菌活性の抑制作用を受けない、Candida glabrataに対し抗真菌活性を示すの2点であった。プロタミンペプチドはエネルギー依存的に菌体内に透過し、細胞からATPを流出させることで殺菌的作用を示すことを解明した。また、プロタミンペプチドのサブリーザル濃度ではプロタミンペプチドはC. albicansの細胞表層に結合し、細胞内に透過しないことから殺菌作用を示さないが、菌糸形発現を抑制することを発見した。一方ペプチドが塩基性であることは塩感受性を意味し、in vivoにおける抗真菌作用の低下が考えられる。そこで塩感受性を軽減できるペプチドの改変を試み、その結果環状化が有効である結果を得た。このことは今後応用開発に有利な改善であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、①ペプチドの塩感受性対策として、ペプチドの改変とその効果、②応用開発のための動物実験での評価に取り組んだ。 塩基性ペプチドの塩感受性試験ではペプチドの長さの検討、ペプチドへのポリエチレングリコールの付加、およびペプチドの環状化の検討を行った。環状型プロタミンペプチドは直鎖型プロタミンペプチドの活性に必須でないN末端のバリン残基とセリン残基を除き、N末端、C末端の両末端にシステイン残基をそれぞれ付与した。酸性条件化でペプチドを反応させることで、N末端とC末端がジスルフィド結合で環状化した環状型プロタミンペプチドを調製した。その結果、環状化により高塩濃度下でも抗真菌活性が維持され、さらにその作用機序は従来の直鎖型プロタミンペプチドと同様であることを解析した。 応用への可能性が期待されることから動物実験のパイロット実験としてC. albincansのマウス口腔感染実験系として帝京大学 安部法で評価した。免疫抑制を施したマウスの舌表面全体にカンジダ菌液を一定回数塗布し、24時間飼育後にプロタミンペプチドを口腔内投与する。投与翌日、舌表面に見られる白苔をスコアー化して評価した。合成ペプチドは高価なため、プロタミンペプチドを25%含有したより安価なプロタミン分解物を用いて効果の有無を検討した。プロタミン分解物が濃度依存的な一定の効果を示したことから、プロタミンペプチドの動物実験を行う指標を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の研究は動物実験によるプロタミンペプチドの効果を確立することである。C. albincansのマウス口腔感染実験系を用い直鎖型ペプチド、環状型ペプチドの効果を評価し、応用開発の基盤を確立して本プロジェクトをまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
プロタミンペプチドの構造上のリスクを改善するためのペプチド改変が順調に効果を発揮したことから、プロタミンペプチドの応用開発への足掛かりができた。そこで本年度は口腔カンジダ症マウスを用いた動物実験のパイロット実験を行い、本格的な動物実験への展開が可能になった。集中的に動物実験を行うため経費の集中化として次年度使用とした。 プロタミンペプチドの口腔カンジダ症における効果を安部法で検討する。方法としてはマウス舌表面全体にカンジダ菌液を一定回数塗布し、24時間飼育後にプロタミンペプチドを口腔内投与する。投与翌日、舌表面に見られる白苔をスコアー化して評価する。直鎖型および環状型プロタミンペプチドの効果を解析する。
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Research Products
(6 results)