2012 Fiscal Year Research-status Report
多形性腺腫細胞の低酸素応答性細胞外基質改変における転移形質獲得機構
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24592829
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
丸山 智 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (30397161)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 達也 新潟大学, 医歯学総合病院, レジデント (70634856)
山崎 学 新潟大学, 医歯学系, 助教 (10547516)
程 クン 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40207460)
朔 敬 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40145264)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 唾液腺多形性腺腫 / 低酸素 / HIF-1α / 細胞外基質 / SM-AP |
Research Abstract |
1) HIF-1α遺伝子発現解析: 低酸素培養条件下におけるSM-AP1とSM-AP4のHIF-1α遺伝子発現について試験管内で比較した。両細胞を通常の培養条件(10% FCS/5% CO2)で3日間培養の後、さらに通常の培養条件と低酸素条件(1%O2/5%CO2/94%N2)で5時間(短期低酸素培養)および48時間(中長期低酸素培養)培養の後、RNAを抽出・精製し、cDNAを調整して定量的RT-PCR法にて検討した。その結果、中長期低酸素培養下で、SM-AP1とSM-AP4ともに通常の培養条件下に比べて高発現が確認された。 2) HIF-1α蛋白質発現解析: 上記1)の結果をうけて、中長期低酸素培養条件下におけるSM-AP1とSM-AP4のHIF-1α蛋白質発現について検討した。培養後細胞層を可溶化して、核分画と細胞質の分画にわけて蛋白質を抽出し、ウエスタンブロッティング法にて確認したところ、SM-AP1とSM-AP4ともに通常の培養条件下でのHIF-1α蛋白質発現に比べて高発現が確認され、特に核分画に多くみとめられた。 3) SM-AP細胞系の細胞外基質(ECM)遺伝子・蛋白質発現解析: ヌードマウス移植腫瘍実験に先立ち、SM-AP1とSM-AP4におけるECM発現について試験管内で比較した。両細胞を通常の培養条件(10% FCS/5% CO2)と低酸素条件(1%O2/5%CO2/94%N2)とで48時間培養後に、RNAを抽出・精製し、cDNAを調整して定量的RT-PCR法にて比較した。その結果、両細胞間で、fibronectinおよびtenascinが高発現していることが確認された。また4%パラフォルムアルデヒドで固定後、各抗体をもちいて、その発現動態を蛍光抗体法にて検討したところ、両細胞間で、fibronectinおよびtenascinが高発現していることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに多形性腺腫由来SM-AP細胞を用いた試験管内における細胞レベルでの検討で、中長期低酸素培養下で低酸素応答を司る転写因子であるHIF-1αの遺伝子および蛋白質ともに高発現をしめす培養条件を確定できた。このことは「乏血管性の間質を特徴とする唾液腺多形性腺腫には低酸素状態があり、その中で腫瘍細胞増殖が維持されている」という仮説が証明されたことであり、さらには癌の微小環境である低酸素環境を多形性腺腫由来SM-AP細胞をもちいて試験管内で再現することができたことを意味する。さらにこの低酸素環境下において、細胞外基質 (ECM)分子のひとつであるfibronectinおよびtenascinの遺伝子発現が高いことが定量的RT-PCR法にて確認できた。よって、すくなくとも低酸素環境の構築にかかわる責任あるECMの候補として、これらの蛋白質が同定できたことを意味し、さらにこれらの分子の発現状態と細胞の増殖や遊走といった機能面に研究を展開させることが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のとおり癌の微小環境としての多形性腺腫由来SM-AP細胞をもちいた低酸素状態の実験モデルを確立したので、今後はこの実験系を用いて、さらなる低酸素環境の構築にかかわる責任ある細胞外基質 (ECM)の候補を検索するとともに、検索しえた分子について、同細部系ヌードマウス移植腫瘤やヒト多形性腺腫を含むヒト腫瘍・癌組織材料をもちいた免疫組織化学的解析により、もっとも低酸素環境の構築にかかわるECMを絞り込んで行く。さらに試験管内で、同定しえたECMの発現またはECM発現誘導遺伝子をノックダウンすることで、細胞の増殖や遊走といった機能面の解析へ実験を展開したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は上述の研究推進方策にのっとり、まず定量的RT-PCR法およびウエスタンブロッティング法にて、低酸素環境の構築にかかわる責任ある細胞外基質 (ECM)の候補を検索するとともに、検索しえた分子について、免疫組織化学的解析により、同細部系ヌードマウス移植腫瘤やヒト多形性腺腫を含むヒト腫瘍・癌組織材料で検討をおこなっていく。これらの実験で多数の検体を効率的に処理するために、試薬としては多種の抗体のほか、キット化された薬品類を多用し、実験器具にもディスポーザブルのガラス・プラスチック器具を多用する。したがって、経費の主要な使途はこれら消耗品費となっている。さらに試験管内で、siRNAおよびshRNAを用いた遺伝子ノックダウン実験にて、同定しえたECMの発現またはECM発現誘導遺伝子をノックダウンすることで、細胞の増殖や遊走といった機能面の解析へ実験を展開したい。組織標本および培養細胞をもちいた組織化学的実験ならびに遺伝子解析実験は、基本的に現有設備によって実施できるが、siRNA およびshRNAを用いた遺伝子ノックダウン実験に関しては学外の専門家との研究打合せが必要になるので、そのための旅費を計上している。さらに組織材料で確認しえたECMの構築を三次元的に解析することも視野にいれている。
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Research Products
(10 results)