2012 Fiscal Year Research-status Report
レプリカセム観察によるレジン修復物の長期耐久性と辺縁部劣化の経時的変化
Project/Area Number |
24592858
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
笹崎 弘己 東北大学, 大学病院, 講師 (90133991)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 達雄 東北大学, 大学病院, 講師 (20168826)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 長期耐久性 / レジン修復物 / 辺縁部適合状態 / レプリカ / SEM観察 / エナメルエッチング / ボンディング材 / 歯頚部窩洞 |
Research Abstract |
近年、MIの理念のもと、必要最小限の歯質削除によるう蝕治療が臨床では主流になっている。このため、レジン修復材料は改良が進み、ボンディング材、コンポジットレジンともin vitroの研究においては、ほぼ満足できる結果が得られている。筆者は、これら材料で修復した臨床例を、10年以上長期間にわたり経過観察するとともに、辺縁部の劣化の過程を充填直後よりレプリカSEM観察してきた。研究初期では、4-META/MMA-TBB系ボンディング材が象牙質に対し、優れた接合状態を示すことを報告し臨床にも応用してきた。この材料は、修復直後より臨床的不快症状は発現しなかった。歯頚部窩洞において、脱落までに要した日数は、エナメル象牙質マージン窩洞で平均2758日、エナメル質マージン窩洞で3385日であった。辺縁部をレプリカSEM 観察すると、時間が経過するに従い、マージン部に大きなU字型の溝が形成されていた。一方、セルフエッチングプライマー使用ボンディングシステムにおいては、ほとんどの製品において、脱落に要する日数は延長され、現在観察中の多くの症例において、すでに4-META/MMA-TBB系ボンディング材の脱落までの平均日数をオーバーし、ほとんど問題なく口腔内で機能している。修復直後より、経時的にエナメル質窩縁部 をレプリカSEM観察すると、マージン部にボンディング材層が露出した場合には、早期にこの部分から摩耗が起こり、ステップが生じると共に、レジンの破折や摩耗が進行し、大きなステップが生じるようになった。これまでに得られた長期にわたる臨床成績とレプリカSEM観察により得られた窩縁部の接合状態を細かく分析し、レジン修復物の長期耐久性を検討した結果、辺縁部の摩耗、ステップの発生、隣接面隅角部の破折を防止し、レジン修復物の長期耐久性を向上させるにはエナメルエッチングが効果的であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筆者が10年以上長期間にわたり経過観察を行ってきた臨床例、辺縁部劣化の過程を充填直後よりレプリカSEM観察してきた臨床データ、今回行っている症例の臨床成績とレプリカSEM観察により得られた窩縁部の接合状態を細かく分析し、レジン修復物の長期耐久性を検討した結果、辺縁部の摩耗、ステップの発生、隣接面隅角部の破折を防止し、レジン修復物の長期耐久性を向上させるには、エナメルエッチングが効果的であることが判明した。まだ観察期間が短いものもあるが、おおむね順調に研究が遂行されているものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
東北大学病院保存修復科に来院した患者の中から、唇側または頬側歯頚部にC2 程度のう蝕またはくさび状欠損を有する患者に対し、事前に十分なインホームドコンセントを行い了解が得られた後、各種ボンディングシステムにてコンポジットレジン修復を行う。 臨床成績は、東北大学修復物経過判定基準(笹崎弘己:象牙質と接着性複合レジンの適合状態第10報、4-META/MMA-TBBをボンディング材とする歯頚部レジン修復例の長期予後観察;日歯保存誌、1999)に従い臨床成績(自発痛の有無、打診痛の有無、冷水痛の有無、温水痛の有無、褐線の有無、ステップの有無、隙間の有無、修復物表面の滑沢性、着色の有無、辺縁部歯肉の炎症)を評価し、デジタルカメラにて記録する。また、レジン辺縁部の適合状態を観察するため、修復物のレプリカを製作する。修復物表面を10%次亜塩素酸ナトリウム溶液と3%過酸化水素水にて交互洗浄し、水洗乾燥した後、シラスコンにて印象採得を行う。印象材硬化後、エポキシ樹脂(EPON815:4ml、Quetol812:1ml、DDSA:7ml、DMP-30:0.1ml)を注入し、50℃恒温箱中にて48時間放置し硬化させる。樹脂硬化後、白金蒸着し、走査型電子顕微鏡にて辺縁部の適合状態を観察する。患者様には、事前に十分な口腔衛生指導を行い、修復物が脱落したらすぐ来院するように指示する。 リコールは、修復1週間後、1ヵ月後、3ヵ月後、6ヵ月後、1年後、それ以降6ヵ月毎とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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