2012 Fiscal Year Research-status Report
組織培養法による歯髄再生モデルの確立と歯髄細胞の動態解析
Project/Area Number |
24592863
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
吉羽 邦彦 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (30220718)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉羽 永子 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (10323974)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 象牙質・歯髄複合体 / 歯髄組織幹細胞 / 組織培養 / 直接覆髄 / 歯髄保存療法 / 歯の移植 |
Research Abstract |
歯髄組織の創傷治癒,修復再生過程における幹細胞/前駆細胞の動態は不明である。本研究では,歯髄・象牙質再生療法開発のための基礎データを得ることを目的として,組織培養法による歯髄再生モデルを確立するとともに,直接覆髄処置,歯の移植後の創傷治癒ならびに硬組織形成過程について,免疫組織化学的,分子生物学的検討を行った。 1.ヒト歯髄組織培養法を確立し,この系における細胞外基質fibrillin-1とその分解に関連するMMP-3の発現について検討を行った。その結果,歯髄組織創傷治癒過程における細胞分化と石灰化に,初期におけるMMP-3 によるfibrillin-1の分解を起点とする機構とその後の fibrillin-1 mRNA の発現抑制が関与していることが示唆された。 2.ヒト直接覆髄処置後の歯髄細胞の動態,分化ならびに硬組織形成過程における,幹細胞/前駆細胞マーカー,α-平滑筋アクチン(SMA)ならびにSTRO-1の局在を免疫組織化学的に観察した。その結果,α-SMA陽性細胞が覆髄剤直下に一過性に出現し,一部の細胞にnestin陽性反応が認められた。一方,STRO-1は周囲の血管ならびに神経に沿って観察され,覆髄部直下に遊走したα-SMA陽性細胞が修復象牙質の形成に関与している可能性が示唆された。 3.ラット臼歯の皮下移植後の歯髄腔内硬組織形成過程におけるα-SMA陽性細胞ならびに骨芽細胞分化マーカーについて,免疫組織化学的観察を行った。その結果,歯冠部歯髄腔に形成された骨様組織周囲にα-SMA陽性細胞が観察されるとともに,骨芽細胞分化マーカーのSmad4,Runx2,Osterixの発現が認められ,歯髄の未分化細胞がα-SMA陽性の前駆細胞を経て骨芽細胞様細胞へと分化し,骨様組織を形成したものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体としてはほぼ当初の予定どおりに進行している。しかし,in vitroの実験系,すなわちヒト歯髄を用いた組織培養実験は,試料の入手に困難性を伴い,少量の試料を有効利用できるより効率的な培養方法,条件等についてさらに検討が必要である。 In vivoの実験系については,覆髄実験に加えて歯の移植・再植実験系における硬組織形成過程,特に細胞動態の検討も開始しており,おおむね順調と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進めている歯髄組織培養系における歯髄細胞の動態解析について,覆髄剤や各種成長因子等の生理活性物質の与える影響について,さらに検討を加える。 In vivoの実験系については,動物を用いた覆髄および移植・再植実験を行い,硬組織形成過程における歯髄細胞の動態ならびに分化機構について,各種幹細胞マーカー,硬組織形成関連マーカーの発現,局在を分子生物学的,免疫組織化学的に検索する。 得られた研究成果を定期的に開催される国内学会ならびに国際歯科研究学会(IADR)年次大会に発表し,意見交換ならびに情報収集を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は特に歯髄培養系の確立に重点を置いて研究を進めてきた。すなわち培地およびフィルターの選択,培養日数等,主として培養条件の検討に時間を費やしたため,多量の試薬類は必要としなかった。次年度はこの系における,覆髄剤,成長因子等,生理活性物質の細胞動態,分化への影響について検索する予定であり,培養用器具,培養液,覆髄剤,成長因子,ならびに各種抗体,分子生物学検索用試薬等、多数の購入が必要である。またデータ解析用のコンピュータを購入予定であり,次年度の研究費と併せて使用予定である。
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Research Products
(22 results)