2013 Fiscal Year Research-status Report
組織培養法による歯髄再生モデルの確立と歯髄細胞の動態解析
Project/Area Number |
24592863
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
吉羽 邦彦 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (30220718)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉羽 永子 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (10323974)
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Keywords | 象牙質・歯髄複合体 / 歯髄組織幹細胞 / 組織培養 / 直接覆髄 / 窩洞形成 / 歯髄保存療法 |
Research Abstract |
歯髄組織の創傷治癒,修復再生過程に組織幹細胞/前駆細胞が関連していると考えられているが,その動態ならびに修復再生機構は不明である。本研究では歯髄・象牙質再生療法開発のための基礎的データを得ることを目的として,歯髄組織培養法を用いた歯髄創傷モデルにおける細胞外基質の変化について観察するとともに,窩洞形成,直接覆髄処置後の創傷治癒,硬組織形成過程における各種関連因子の発現について免疫組織化学的,分子生物学的検討を行った。また覆髄剤に対する組織反応についても同様に検討を行った。 1.ヒト培養歯髄組織ではfibrillin-1の染色性が減弱し,mRNAの発現も有意に低下したが,MMP-3 mRNA発現は有意に亢進した。一方,MMP阻害剤NNGHを添加培養するとfibrillin-1の染色性が向上した。覆髄部直下でのfibrillin-1の局在性の変化が創傷治癒と被蓋硬組織形成に重要な役割を演じており,その変化には,MMPsによるタンパクの分解に加えて遺伝子発現の下方制御も関与するものと考えられた。 2.ラット臼歯窩洞形成後のSmall ubiquitin related modifier(SUMO)化修飾因子および転写因子Osterixの免疫局在を観察した。窩洞形成後,窩洞直下歯髄組織に集積する細胞にSUMO化修飾因子およびOsterixの陽性反応が認められた。基質形成の開始に伴い象牙芽細胞様細胞に各分子の陽性反応が認められたが,その後減弱した。SUMO化修飾因子は象牙芽細胞分化過程においてOsterixの転写を調節することが示唆された。 3.覆髄剤 Mineral trioxide aggregate (MTA)を皮下移植し,各種マクロファージ関連分子の発現状況を観察した。MTA移植部にM2マクロファージマーカー(CD163)陽性細胞が集積するとともに,血管新生因子CD34 mRNAの発現が亢進することが示され,MTAに対する生体反応にマクロファージの関連する創傷治癒・組織修復機構が関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体としてはほぼ予定どおりに進行している。特に,in vivoの実験系は直接覆髄後の硬組織形成過程だけでなく,覆髄剤に対する組織反応についての検討を開始しており,創傷治癒,修復再生過程におけるM2マクロファージの関与が明らかにされた。現在,直接覆髄後の組織修復過程におけるM2マクロファージの動態について検索を進めている。 一方,in vitroの実験系,すなわちヒト歯髄組織培養実験はその方法は確立されたものの,試料の入手に困難性を伴い,より効率的な評価方法についての検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進めている歯髄組織培養系における歯髄細胞の動態解析について,各種覆髄剤やスキャホールドの与える影響について,さらに検討を加える。In vivoの実験系については,ラットを用いた覆髄実験を行い,硬組織形成過程における歯髄細胞の動態ならびに分化機構について,各種幹細胞マーカー,硬組織形成関連マーカーの発現,局在を分子生物学的,免疫組織化学的に検索する。さらに各種覆髄剤に対する組織反応についても検討を加える予定である。 得られた研究成果を定期的に開催される国内学会ならびに国際歯科研究学会(IADR)年次大会に発表し,意見交換ならびに情報収集を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ヒト歯髄組織培養実験において試料の収集に若干の遅れが生じていたため,各種幹細胞マーカー,硬組織形成関連マーカーに対する抗体,ならびに分子生物学的検索に必要な器具および試薬の購入費用が次年度に繰り越しになったため。 実験動物(ラット),各種覆髄剤やスキャホールド,各種幹細胞マーカー,硬組織形成関連マーカーに対する抗体ならびに分子生物学的検索に必要な器具および薬剤を購入予定である。 また得られた研究成果を日本歯科保存学会および歯科基礎医学会等の国内学会,ならびに2015年3月に米ボストンで開催される国際歯科研究学会(IADR)年次大会に発表し,意見交換ならびに情報収集を行う予定である。
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Research Products
(15 results)