2013 Fiscal Year Research-status Report
骨折治癒過程における血管新生因子angiogeninの発現と生物学的役割の解析
Project/Area Number |
24592987
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
吉岡 徳枝 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (50362984)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 朗 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00170663)
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Keywords | angiogenin / 骨折 / 骨代謝 |
Research Abstract |
血管新生蛋白であるangiogenin (ANG)は,血管内皮細胞の増殖に重要な役割を果たす.骨のリモデリングには骨芽細胞,骨細胞,破骨細胞間のクロストークのみならず,骨髄中に存在する多種の細胞から産生される因子との密接な相互作用(オステオネットワーク)が重要な役割を果たし,血管内皮細胞も関連している.本研究計画では,骨折治癒過程におけるANGの生物学的な役割について未解明の基礎的な問題を解決し,顎顔面領域の骨折治療,顎矯正手術,口腔癌切除後の顎骨再建における術後の早期骨修復過程にANGの関与の可能性を見いだすことにより,骨再生医療へのANGの応用を展開するための研究基盤を確立することを目的とした.マウスANGには4種のアイソフォームが存在するが,マウスANG -1 はヒトANGと相同性が最も高く,血管新生能をもつことから,ANG-1をノックアウトしてANG KOマウスを作製した. ANG KOマウスは外見上ほぼ正常に産まれ,特異な表現型は認めなかった. 7週齢ANG KOマウスの肋骨骨折モデルを作製し,経時的に肋骨を周囲組織と一塊にして摘出し,病理組織学的に検討した.骨折後3日目では骨折部位の骨膜肥厚と炎症性細胞の浸潤を認め,骨折後5日目では骨折断端部に紡錘形の線維芽細胞の増生や破骨細胞,骨芽細胞を認め,断端付近の骨膜には軟骨様細胞を認めた.骨折後7日目では骨折断端周囲に肥大軟骨細胞の形成を認めた.骨折28日目には層板骨の形成が見られた.これらの過程はHE染色ではANG KOマウスとWTで有意な差はみられなかった. in vitroにおいてはWTマウスの骨髄細胞にANGを添加して培養したところ,ANGは濃度依存的にTRAP陽性破骨細胞数を増加させ,骨吸収活性も促進することが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ANG KOマウスの繁殖が遅く,実験データをとる際に信頼性のある個数を同時に確保することが難しく,骨折モデルの作製やin vitroの実験が効率よくできるように,現在,大量にマウスを繁殖させているところである.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度にひきつづき,骨折モデルの解析を行う.CT解析においては,週齢の若いANG KOマウスはWTマウスと比較して骨密度が少ないことが明らかとなっており,異なる週齢で骨折モデルを作製し,治癒過程を比較検討することも計画している. ANGはin vitroにおいて破骨細胞分化形成,吸収活性を促進することが明らかとなったが,制御シグナルであるRANK/RANKLシグナル伝達系に関与するTRAF-6, NF-kBなどの発現や,破骨細胞分化のマスターレギュレーターであるNFATc1の発現について検討を加える.また,今年度は骨芽細胞にANGが与える影響についてWTマウスの骨髄細胞にANGを添加して骨芽細胞の分化形成について検討を行うとともに,骨芽細胞分化制御シグナル系におけるRunx2/Cbfa1などの発現について検討し,骨代謝機構におけるANGの役割を明らかにする.
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