2012 Fiscal Year Research-status Report
口腔がんに対する新しい分子標的薬の臨床応用に向けた基礎的研究
Project/Area Number |
24593041
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
藤原 久子 鶴見大学, 歯学部, 助教 (80396746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 浩之 鶴見大学, 歯学部, 講師 (90267542)
堀内 俊克 鶴見大学, 歯学部, 助教 (90454165)
新井 剛 鶴見大学, 歯学部, 助教 (80454164)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 口腔癌 / 分子標的薬 / 化学療法 / 放射線療法 |
Research Abstract |
本研究では、がん治療における化学療法・放射線療法におけるPARP阻害剤の作用増強効果について検証した。 口腔がん細胞をRIKENより購入し、Ca9-22とHSC2の2系統で解析を行った。PARP阻害剤はメルク社のPJ34を用いた。まず口腔癌細胞のPARP阻害剤に対する感受性を検証するために、PARP阻害剤の濃度を10段階に分けて、細胞の生存曲線の検証を行うためにクリスタルバイオレット染色法によるMTSアッセイを行った。その結果、PARP阻害剤が低濃度では、有意な生存阻害作用は認められなかったが、高濃度では濃度依存的に生存が阻害されることが分かった。 次にPARP阻害剤存在下におけるCa9-22の細胞計測法による成長曲線を調べたところ、コントロール群との有意差は認められなかった。また間葉系幹細胞においても同様に成長曲線を調べたところ、コントロール群との有意差は認められなかった。したがってPARP阻害剤による細胞障害作用がないことが確認された。 さらに抗腫瘍薬のPARP阻害剤併用による増強効果を検証した。頭頸部癌領域で用いられる5-FUおよびCDDPを用いた。濃度を変えて比較した結果、5-FUを投与した細胞群では、抗悪性腫瘍効果の有意な増強効果は認められなかったが、CDDPを投与した細胞群では2系統とも、低濃度投与群において有意にPARP阻害剤の併用効果が得られた。一方、高濃度のCDDPを投与した細胞群では、有意な抗悪性腫瘍効果の増強効果は認められなかった。以上より、PARP阻害剤の増強効果は、すべての抗悪性腫瘍に対して得られるわけではないこと、また濃度依存性に増強効果が得られることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
口腔がん細胞をRIKENより購入し、Ca9-22とHSC2の2系統で解析を行った。PARP阻害剤はメルク社のPJ34を用いた。 まず口腔癌細胞のPARP阻害剤に対する感受性を検証するために、PARP阻害剤の濃度を10段階に分けて、細胞の生存曲線の検証を行うためにクリスタルバイオレット染色法によるMTSアッセイを行った。その結果、PARP阻害剤が低濃度では、有意な生存阻害作用は認められなかったが、高濃度では濃度依存的に生存が阻害されることが分かった。 次にPARP阻害剤存在下におけるCa9-22の細胞計測法による成長曲線を調べたところ、コントロール群との有意差は認められなかった。また間葉系幹細胞においても同様に成長曲線を調べたところ、コントロール群との有意差は認められなかった。したがってPARP阻害剤による細胞障害作用がないことが確認された。 さらに抗腫瘍薬のPARP阻害剤併用による増強効果を検証した。頭頸部癌領域で用いられる5-FUおよびCDDPを用いた。濃度を変えて比較した結果、5-FUでは有意な増強効果は認められなかったが、CDDPでは低濃度において有意にPARP阻害剤の併用効果が得られ、高濃度CDDPでは有意差はなかった。以上より、PARP阻害剤の増強効果は低濃度のCDDPでは得られることが分かった。 研究の進捗が遅れている最大の原因は、当初購入した癌細胞の増殖が順調ではなく、培養液に添加する適切なウシ血清の検索に時間を要したことである。現在は適切なウシ血清が得られたことから、今後の細胞培養に支障はないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策としては、in vitroとin vivoの両方から検証を予定している。 In vitroにおいては、DNA障害剤による細胞死のメカニズムを調べるために、まず、細胞のアポトーシスについては、細胞を固定後PI染色し、FACSをもちいてアポトーシス細胞の割合および細胞周期の変化を解析する。また、Widlak Pらの方法に則って2-D gel electrophoresisでも、細胞周期に対する影響を比較検証する。細胞内のATP含有量・NAD+含有量・PARP活性については、HPLCによる解析を行い、細胞周期に対する影響と併せて経時的な細胞死のメカニズムの検証を行う。 In vivoにおいては、口腔がん細胞をヌードマウスの両肩に移植して腫瘍を作製する。腫瘍径が5mm以上に増大した時点で、PARP阻害剤+抗腫瘍剤の投与を行う。マウスに投与するPARP阻害剤はAZD 100 mg/kg(olaparib)を第1~5日目に腹腔内注射する。抗がん剤の投与は、CDDPは第1日目のみ、5-FUは連日投与とし、実際の臨床と同じ濃度とする。その後、経時的に腫瘍径を計測し、経時的に組織学的な解析を行う。また同時に血液検査も行い、マウスの全身への影響を網羅的に検索する。 腫瘍本体の解析は、通法通りに凍結切片を連続で作製してHE染色を行う。免疫染色は腫瘍細胞に特異的なCD31, Ki67, p53, VEGF, p21, cyclinD1などを予定している。1切片に対し1抗体で免疫染色を行うが、連続切片を用いることにより、遺伝子発現の局在から因子間の相互作用を示唆する所見が得られれば、多重染色により検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず口腔癌細胞株による差を検証するために、他の口腔がん細胞株(SAS,KON,HSC4)についても同様に、細胞増殖/colony formation assay/MTS assayを行い、PARP阻害剤の単独投与による細胞の増殖能や、細胞死の指標となる細胞内NADレベルの変化を比較検討する。 今年度行ったCa9-22とHSC2の結果を併せて、一番有意差の大きかった口腔がん細胞株を選び、口腔がんの化学療法で汎用されているCDDPと5-FUを濃度を変えて投与し、PARP阻害剤の併用効果を検証する。抗がん剤投与は様々な濃度を培養液に添加し、16時間培養した後、PBS洗浄、8日間通常培養し生存細胞数をカウントする。次に細胞が再増殖まで培養を続ける。これによりPARP阻害剤を併用する際の、抗がん剤の最適濃度を決定するとともに、治療効果の継続期間を比較する。 DNA障害剤による細胞死のメカニズムは、以下の方法を用いて検証する。まず、細胞のアポトーシスについては、細胞を固定後PI染色し、FACSで解析する。また、Widlak Pらの方法に則って、2-D gel electrophoresisを行い、細胞周期に対する影響を比較検証する。細胞内のATP含有量・NAD+含有量・PARP活性については、HPLCによる解析を行い、細胞周期に対する影響と併せて経時的な細胞死のメカニズムの検証を行う予定にしている。
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