2014 Fiscal Year Research-status Report
核磁気共鳴法と電子スピン共鳴法を用いた全身麻酔薬の作用部位に関する研究
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24593044
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渋谷 真希子 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30399951)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平沖 敏文 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), その他 (10125346)
長谷 由理 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (20626121)
藤澤 俊明 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (30190028)
鈴木 邦明 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (40133748) [Withdrawn]
木村 幸文 北海道大学, 大学病院, 助教 (00292037)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 全身麻酔薬 / 電子スピン共鳴 / 核磁気共鳴 / スピンラベル / リポソーム / 生体モデル膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、生体モデル膜における脂質あるいはタンパク質と、全身麻酔薬との位置関係や相互作用について検討することにより、全身麻酔薬の細胞膜における作用点や機序を解明することである。そのために、1)生体モデル膜の作成、2)不対電子の情報から得られるESRスペクトルの測定、3)原子核の情報から得られるNMRスペクトルの測定、4)放射活性の測定から得られるイオン輸送の測定、以上の4つの事項を遂行することが必要である。本年度は昨年度に引き続き、1)を用い、揮発性吸入麻酔薬であるデスフルランがリポソーム中のスピンラベル剤5-DSA および16-DSA に及ぼす影響、特に温度の影響について、ESRスペクトル測定し検討した。その結果、温度を上げるとスペクトル強度が増加し、τ値が減少したことから、温度上昇により膜の流動性が増大することが示唆された。その変化は、高濃度のデスフルランによる影響より大きかった。 また、上記3)として、イソフルランに対するMLV中の5-DSAおよび16-DSAのスピンラベル剤の常磁性効果の影響を調べたところ、イソフルランの線形と化学シフトには変化は認められなかったが, T1とT2はスピンラベル剤との相互作用によって著しく短くなった。両スピンラベル剤で比較すると16-DSAよりも5-DSAのほうがイソフルランのT1,T2は短くなった。これらの結果から、イソフルランと5-DSA の距離はイソフルランと16-DSAより近く、イソフルレンが膜の表層側に存在していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
NMRを用いた実験系に関しては、麻酔薬とスピンラベル剤との位置関係から麻酔薬の存在部位を確認でき、進展が見られたものの、タンパクを含んだリポソームにおける麻酔薬の位置を測定するには至らなかった。ESRを用いた実験系に関してはESR測定の周辺機器の故障に対する原状回復に時間を要し、計画の遂行に支障が生じた。さらに、研究代表者の出産に伴い8ヶ月強休職したことから、実験計画は遅れている状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者の休職中に新しい実験スペースが確保できたため、実験場所の移動と整備を行う。NMRを用いた実験系に関しては、膜タンパクのNa,K-ATPaseを含むリポソームにイソフルランを加え、19F-NMR測定を行うことにより、麻酔薬の存在部位がタンパク質の存在において変化するのか検討を行う。また、コレステロールを含むリポソームでも同様の検討を行う。 ESRを用いた実験系に関しては、引き続きデスフルランを用いた測定、およびセボフルランやイソフルランを用いた測定を行うが、温度変化と麻酔薬の作用強度の変化についても合わせて測定、検討する予定である。また、タンパク質の抽出も試みつつ、コレステロールを含んだモデル膜の作成を優先的に行うことを検討する。
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Causes of Carryover |
1.ESRの周辺機器の原状回復に支障が生じ、実験計画の遂行が大幅に制限されたため。 2.研究代表者の妊娠出産に伴う産休・育休にて、約8ヶ月研究を中断せざるを得なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度に購入予定であった試薬や消耗品の購入に充てるほか、研究代表者の所属する教室に新しい実験室が完成したため、来年度の研究費と合わせて実験環境の整備を行う。また2015年10月に行われる国際歯科麻酔学会議に一連の研究成果を発表するための費用とする。さらに、英語論文として成果を投稿するための費用とする。
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