2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24593167
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
冨田 かをり 昭和大学, 歯学部, 兼任講師 (80338532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 摩理 昭和大学, 歯学部, 兼任講師 (20445597)
大岡 貴史 昭和大学, 歯学部, 講師 (30453632)
向井 美惠 昭和大学, 歯学部, 教授 (50110721)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 摂食・嚥下 / 口腔感覚 / 温度 / 物性 / 形状 |
Research Abstract |
【対象と方法】24年度は若年男女23名(男性13名、女性10名)を対象に、温度・形状の異なるテストピースを用いて、それぞれ口腔で大きさを同定する能力を測定し、立体識別能力が温度、形状の影響をどのように受けるかを男女別に検討した。実験に用いたピースは歯科用即時重合レジンを用いて、円柱状のものを7種類(高さ5mm,直径11,12,13,14,15,16,17mm)、直方体のものを7種類(高さ5mm,1辺11,12,13,14,15,16,17mm)作成した。温度はインキュベータで、5℃、36℃、65℃に保ったものを用意した。各10個ずつ用意したので、同日にまとめてデータを取ることが可能であった。【結果】女性の場合は、全体に過小評価する傾向があり、温度の上昇とともにそれがなくなり正解率が上がった。一方男性では温度の上昇とともに過小評価が少なくなった点は女性と同じであるが、常温が最も正解率が良かった。回答時間はどの温度でも女性のほうが短く、また男女ともに回答時間が短いほうが過小評価する傾向があった。形状の影響は認められなかった。 従来口腔内のサーマルスティムレーションでは冷刺激が効果的とされているが、冷刺激に敏感であるということは、必ずしも冷たいものの大きさをしっかり認識できるということを意味するわけではないことが示唆されている。冷たいものは過小評価しやすいということは、丸呑みや窒息のリスクにもつながる可能性がある。さらに回答時間が短い方が過小評価する傾向があるということは、口腔内にある程度とどめることで、大きさを理解していることが推察される。”安全にかつ味わう”ために、口の感覚という要因は欠かせないことが示唆されたことで、次年度以降はさらに物性による違いについて検討することとする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定より多い23名を対象に測定を行うことができた。当初はテストピースとして食物を使う予定であったが、食欲や好みの影響を受けてしまうこと、誤嚥やアレルギーのリスクもあることなどから、口に入れるが飲み込まない試験ピースを用いることとした。口腔内で用いられる安全性の高い歯科用即時重合レジンを用いて技工所に外注することで、大きさや物性が正確で均一のものを作成することができ、精度や再現性が上がったと考えられる。さらに誤嚥防止のフロスをつけたことで、安全にスムーズにデータ採取を行うことができた。さらに同じものを10ピースずつ用意したことで、同日に3人のデータを取ることができた。また薬液で滅菌できる材料を用いたことで、日を変えれば、再利用も可能となり、データ取得が短期間で可能となった。物性の違いを検討するためには、異なる材料を用いて同様のピースの作成が必要となる。現在材料については物性と安全性を調査中であり、24年度は物性の違いについてまでは検討することができなかった。25年度以降、同じレジンでもやや弾力のある軟性レジンを用いて同様のピースの作成をする予定であり、当初の予定通り物性が口腔の立体識別能力に及ぼす影響についても知見が得られる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
口腔での物体の大きさ認識能力が物体の物性の影響をどのように受けるかを調べる。一般的に摂食・嚥下障害の進行に伴い、提供する食物を柔らかくするという対応がなされるが、物性が変わると飲み込みやすくなる反面、物体として正しく認識できなくなる可能性もある。食べやすくするために食物を柔らかくすること、温度を体温に近づけることのメリット、デメリットを検証することは食の安全と味わいの両立に向けた要件を明らかにしていくためにも重要である。 また24年度の研究から冷たいものは実際より小さく感じられることが明らかになったため、誤嚥や窒息を防ぐための適正な一口量は温度によって違う可能性があるということを踏まえて、一口量と口腔の感覚の関連についても検証していく。 また、超音波診断装置などを用いて、口腔内で大きさを確かめるときの舌の動きや位置についても測定する予定である。 実験の性格上被験者全員は難しいため、同定能力が高い者、低い者を抽出して、両者に動きの違いがあるのかどうかを測定する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
口腔の大きさ同定能力が、物性の影響をどのように受けるかを検討するために、新たに軟性レジンを用いたテストピースを作成する必要があるので外注する。そのための技工料が発生する。またその測定に新たに20名以上の被験者が必要となるので,謝金が発生する。またデータ測定には補助者が必要であり、研究分担者で間に合わない場合はアルバイトを雇用する可能性もある。さらに25年度は24年度の成果発表を行っていく。摂食嚥下リハ学会での発表と第1報の論文投稿を行う予定である。 そのためのポスター作製、旅費、学会参加費等にも予算を使っていく予定である。25年度の成果については、国際学会発表を視野に入れているが、時期については25年度のIDRにするか、26年度のIADHにするかは、研究の進み具合による。
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