2012 Fiscal Year Research-status Report
口臭物質の歯槽骨吸収機序の解明:歯周炎幹細胞モデルによる分子標的予防法の確立
Project/Area Number |
24593171
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
今井 敏夫 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (90120617)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鴨田 剛司 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (00366767)
八重垣 健 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (40166468)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 口臭物質 / 歯周疾患 / 破骨細胞 |
Research Abstract |
先に我々は口臭原因物質である硫化水素が生理学的濃度で、骨芽細胞の増殖抑制および破骨細胞の分化機能抑制と骨吸収に積極的に関与していることを先に明らかにして来た。本研究では幹細胞から骨芽細胞ならびに破骨細胞の分化初期における硫化水素の影響を解明する事を主目的としている。初年度では、マウス骨髄から幹細胞を分離・培養法の確立を検討した。6-10週齢マウス大腿骨を採取し、両端をカットし骨髄細胞を回収した。この細胞溶液を幹細胞系細胞分離デバイス(Kaneka)を用いて幹細胞分離をおこなった。しかしこのデバイスから回収した細胞溶液には多数の血球系様細胞が混入して、dishへの細胞付着が妨げられた。これと同時に10%FCS含有α-MEM、α-MEM、幹細胞分化培地(血清不含)で細胞の付着能を比較検討した。細胞の付着能は10%FCS含有α-MEMが最も高く、次に幹細胞分化培地(血清不含)、α-MEMの順であった。次にこれら培養条件で培養を継続したところ、α-MEMでは付着した細胞は経過日数とともに死滅していった。幹細胞分化培地では、細胞増殖能が遅いものの培地交換を繰り返して培養したところ、血球系様細胞が減少してきた。そこで培地を10%FCS含有α-MEMと幹細胞分化培地を等量混和した培地に交換して培養した。3~4回継代を繰り返した。次にこの細胞集団からさらに均一な幹細胞を分離するため、幹細胞の表面抗原であるCD117に着目して、Magnetically activated cell sorting system法にてCD117(+)の細胞集団を回収した。その結果形態的にも比較的均一な細胞集団を得ることが出来た。そしてこの細胞の高い骨芽細胞分化能を保持した細胞であることが判明した。現在この細胞群の幹細胞の表面マーカ他の特性を解明しているとともに硫化水素に対する影響を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度当初の実施計画では、マウス骨髄からの間葉系幹細胞の分離を確立し、その細胞の特性ならびに硫化水素に対する細胞応答を解明することであった。幹細胞の分立確立は概ね良好な結果を得ることが出来た。そしてその細胞の特性も順次明らかになっている。しかし、硫化水素曝露後の幹細胞の遺伝子解析が若干遅れているものの、本年度計画の遂行は概ね進行・達成していると考える。この24年度から得られた情報は次年度の研究進行に役立つものである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度はマウス骨髄からの血球幹細胞の分離・培養法を確立と分化因子の発現を主目的とする。 a. マウス骨髄細胞:前年と同様の手技でマウス骨髄から骨髄細胞を採取する。 b.血球幹細胞の分離の確立:骨髄細胞をMagnetically activated cell sorting (MACS) system法にて血球幹細胞を分離する。その際細胞表面マーカーとしてCD34をターゲットにして、CD34陽性の分画を血球幹細胞として採取する。血球幹細胞の分離はHematopoietic Cell Lineage Markers: Cd19, Cd3d, Cd4, Cd8a, Cd8b1, MmeをターゲットにしてStem Cell PCR Array(GIAGEN社)にてそれらの発現を検索評価する。次にこれらの細胞に分化因子M-CSF, RANKLを加え培養して成熟骨芽細胞に分化することをTRAP陽性細胞を指標として評価する。 c. 硫化水素存在下における血球幹細胞の初期分化のシグナル:血球幹細胞から破骨前駆細胞、破骨細胞への分化に硫化水素がどのような影響をもたらすのかを検証するため、硫化水素を作用させた後に分化因子M-CSF, RANKLを添加、あるいは分化因子を作用させた後に硫化水素を作用させ、分化程度をTRAP陽性細胞の数とカテポシンK活性を指標に、どのステージが最も分化誘導に効果を示すかを明らかにする。さらに、分化誘導のシグナルマーカーであるPKCの発現をwestern blotにて検索する。硫化水素作用後における血球幹細胞のマーカー遺伝子Cd19, Cd3d, Cd4, Cd8a, Cd8b1, MmeをターゲットにしてStem Cell PCR Array(GIAGEN社)にてその変化を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度の実施予定であった硫化水素曝露後の間葉系幹細胞のマーカー遺伝子解析が若干の遅れが生じて、その必要経費が繰越金となった。この繰越金は細胞の遺伝子解析のために充当する。また平成25年度は前年度と同様にマウス骨髄細胞から血球幹細胞の分離の確立、幹細胞の破骨細胞への分化能と遺伝的マーカーの解析、硫化水素に対する細胞の情報伝達解析を企画している。ついては本年度予算はマウス、各種細胞培養に必要な物品、各種抗体、遺伝子解析用試薬等の消耗品に充当する。
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