2012 Fiscal Year Research-status Report
被災地でのボランティアにおけるケアリング学習プログラムの検討
Project/Area Number |
24593264
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The Japanese Red Cross Toyota College of Nursing |
Principal Investigator |
中島 佳緒里 日本赤十字豊田看護大学, 看護学部, 准教授 (90251074)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥村 潤子 日本赤十字豊田看護大学, 看護学部, 教授 (40300222)
竹内 貴子 日本赤十字豊田看護大学, 看護学部, 助教 (70387918)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | コミュニケーションスキル / ナラティブ |
Research Abstract |
2012年度は,文献検討を行いケアリング概念を取り入れたコミュニケーションスキルの抽出を行うことを目的とした。 災害時の外部支援者の役割として,渥美(2006)はナラティブモードを促進する手法を提案している。被災者が自分の置かれた状況や自分自身を現実認識するには,「自己が自己について語った物語」を通して,その体験や気持ちを言語化する過程が重要であると報告している(渥美,2000,野口,2010,瀬,2012)。また,能智(2006)は,語りには常に「聞き手」という存在が重要であると述べている。つまり,被災地におけるナラティブは,外部支援者の「聞き手」によって反応され,共感を得ることで,漠然とした感覚やストーリーとして語られることのない被災者の自己物語が形成されるのである(宮本.渥美, 2009)。従って,この聞き手としての役割は,コミュニケーションスキルの中で最も重要であると考えた。 よい聞き手となるためのスキルは,国内データベースによる文献検索の結果,共感性,内的状態の理解,間を使って行われる同調性・共振性の4つの技法が抽出された。コミュニケーションスキル学習には,積極的傾聴を促すための「間」による感覚情報の理解,同調性・共振性としての反応潜時・表情・身体動作,内的状態を知覚するための身体内感覚のメタ認知的言語化を用いることにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,被災地の中・長期的な生活自立支援システムを勘案する基礎資料として,ボランティアにおけるケアリング学習プログラムを作成し,協力が得られたボランティア団体で導入することを目的として計画した。 2012年度は,ケアリング概念を取り入れたコミュニケーションスキルについて文献検索を行い,短期間で効果が得られると考えられるスキルを抽出すこととを目標にした。文献検索をする中で,災害急性期や仮設住宅での自立支援にはケアリング概念が重要であるが,長期的な視点ではケアリングそのものよりむしろ被災者に対するナラティブモードが重要であることがわかった。そのため,ケアリング概念におけるナラティブモードの位置を確認した後,有用なコミュニケーションスキルを抽出した.これらの手続きにより,研究計画スケジュールよりも多少進行が遅れた。 2013年度は,擬似クライエントと援助者を設定し,コミュニケーションスキルの効果を検証する予定である。また,今回抽出したスキルがナラティブに活用できるかを,被災者と関わった学生の体験から検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度は,以下の2つの調査・実験によりスキル学習の効果を検証する。 (1) ナラティブモードとボランティアの感情 被災地に行った学生10名程度を対象に,ナラティブモードの経験とその時の感情の動きについて,面接を用いて記述的情報を収集する。ナラティブモードは被災者との相互作用により促進されるが,外部支援者には論理的コミュニケーション(システムズアプローチ)からの脱却が求められ,コミュニケーションが未熟であると感じている学生には困難さを抱く場面も多いと推測される。実際の被災地でのコミュニケーションではナラティブモードをどのように体験しているのか,その時の感情の動きはどうであったのか明らかにし,文献検索によって抽出されたスキルが有効か検討する必要がある。 (2)スキル学習の効果の検討 30名を対象に,擬似クライエントと援助者を設定し,身体内感覚のメタ認知的言語化,同調性・共振性の評価,共感性の評価を行い,コミュニケーションスキルの効果を実証する。スキル学習としては,コミュニケーションスキル(同調性・共振性,感情の反映等)を学習する。スキル学習後,必ずエクササイズを実施し,体験する。身体内感覚のメタ認知的言語化の訓練は,DVD視聴あるいはエクセサイズ後の自分自身の内部に生じた漠然とした感覚や感情について言葉で表現する。効果の実証は,スキル学習後,心電図を装着した疑似クライエントに対して,コミュニケーションを10分間とり,心電図上にリアルタイムで生じる自律神経反応とクライエントのアフェクトグエリッド,自由記述によりコミュニケーションの評価を行う。これを1クールとし,1週間に1回,計5回のトレーニングを実施する。効果は,同調性・共振性(反応潜時,表情・身体動作)と共感性(アフェクトグリッド,情動知能尺度)を介入前後で測定し,被験者内比較により確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)ナラティブモードとボランティアの感情の検討には,面接内容を逐語録にするためボイスレコーダー1台(オリンパスボイストレック DM-4:18,800円)を購入する。 (2)スキル学習の効果を検証するための実験に必要な物品として,DVD撮影時の記録メディア(スマートメディア32G:14,800円),共感性の評価尺度(情動知能尺度 30名分:30,000円),ECGディスポ電極(50個: 7,500円)を購入する。 (3)今年度の研究成果は,第60回日本学校保健学会(東京)で発表予定であり,研究協力者を含めて旅費を請求する。
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