2012 Fiscal Year Research-status Report
レジリエントなコミュニティ形成をめざして:在日ブラジル人の震災体験を踏まえた支援
Project/Area Number |
24593473
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
野崎 章子 千葉大学, 看護学研究科, 講師 (90361419)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大塚 公一郎 自治医科大学, 看護学部, 教授 (00291625)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 災害 / 在日外国人 / レジリエンス / メンタルヘルス / コミュニティ |
Research Abstract |
2011年3月の東日本大震災では、在日外国人は日本人とは異なる困難に直面したことが推察される。特に、ニューカマーと呼ばれる南米出身外国人は、アジア系出身者に比べ、言語上の困難が多く日常生活が不自由であるとされる。 本研究においては、在日ブラジル人の東日本大震災以降の生活の状況や困難および心身の健康状態を明らかにし、さらに、その結果を踏まえ、レジリエントなコミュニティ形成のための当事者を主体とした支援プログラムを実施・評価し、支援方法についての基礎資料とすることを目的とする。 平成24年度は本研究の初年度であり、東日本大震災発生時・その後の在日ブラジル人の体験を明らかにするための準備段階であった。 事前調査として、北関東の内陸部に居住する在日ブラジル人3名より、震災時及び以降の状況を聴取した。さらに、震災後の在日外国人に関する書籍および学術雑誌を俯瞰し、概要を把握した。 これらの結果から、震災後は多くの外国人が乗用車などの車中で寝泊まりしていたこと、その背景として疎外感から日本人が大多数を占める避難所に避難民として加われないことが明らかとなった。その他には、津波による被災の有無に関係なく、放射線の脅威による母国への帰国といった家族の離散、水や食品の制限などといった生活上の支障があり、要因としては言語の不自由さによる情報不足があった。母国への帰国については、母国の親族からの帰国の促しに応じた事例では、特に就学児童以下の子どもを持つ母親では顕著であった。配偶者が日本人である場合には滞日を継続していた事例が多くあった。帰国を検討することなく、「日本人を助けたい」「困っている人を助けたい」という思いから、ボランティ活動を行う事例も多々あった。これらの結果を踏まえ、本調査においては、生活に関する事項、測定尺度を用いた心身の健康状況および防災に向けたニーズについて聴取する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は本研究の初年度であり、東日本大震災発生時・その後の在日ブラジル人の体験を明らかにするための準備段階であった。 事前調査として、国際交流事業にもかかわる在日ブラジル人3名より震災時の状況を聴取することができた。さらに、関連学会における情報腫週、そして書籍および学術雑誌を査読し、震災後の外国人の状況について概要をまとめ本調査のための基礎資料とした。 24年度においてはこの文献による調査を在日外国人に関するもの、また震災、レジリエンスに関するものの全方位より念入りに行ったため予定より時間を要し、研究の進捗がやや遅れている状況となった。 これらの文献研究についても、平成25年度中に国際学会において成果を発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の事前準備としての聞き取り調査および文献検討による概要の把握等により、特に生活に関する事項およびその関連要因等の調査項目を明確化することができた。 今後はこの項目をブラジルの母語であるポルトガル語に翻訳しインタビューガイドとして用いるとともに、通訳を介して本調査を実施するなどして進めて行く予定である。 推進方策としては、研究者チームでの定期的なミーティングおよび進捗状況の点検を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度分の次年度使用額については本来在日ブラジル人への聞き取り調査に関する翻訳、通訳等の人件費・謝金等のために支出する予定であった。進捗がやや遅れたものの、平成25年度に、計画通り、本来の使途目的のために支出する予定である。つまり約380千円については、在日ブラジル人の母語であるポルトガル語への翻訳、通訳を主とする人件費、その他は聴取内容のテープ起こし等のその他として、平成25年度分と合わせて使用する。 その他の費目については、平成25年度分の当初の計画通りに使用する予定である。具体的には図書や文具等の物品費170千円、データ収集および成果発表のための旅費500千円である。
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