Outline of Annual Research Achievements |
3年目の平成26年度の研究会は6月,10月,12月,2月の計4回開催した.平成25年2~3月に実施した「在宅ケアにおけるモラルディストレスへの対処を促すための支援プログラム」へ参加したCMが提示した26事例すべてを複数の研究者で各事例の検討を引き続き行った.その結果,CMの専門職としての行動抑制に関わるMDは次のプロセスをたどって生じることが示唆された.まず事例を前にして自然にわきおこる感情認知があり,その中で専門職の信念や価値観に基づく倫理的/道徳的に適切な行動が必要であるという判断(利用者の主体性を尊重すべき,利用者の生活全体を支援すべき ,家族介護者と良い関係を築くべき ,CMとしての役割を果たすべき ,サービス提供者はその役割を果たすべき)がなされる.しかし,様々な要因(利用者/家族の意思や価値観,サービス提供者の技術が信用できない,サービス提供者のマンパワー不足,専門職者間との連携や協働意識がない,制度上の運用制限,上司の意見,皆で話す環境がない,社会資源不足)によって専門職の信念や価値観を妥協しなければならず,専門職として倫理的/道徳的に適切な行動ができない・適切でない行動をするという行動抑制が起こり,苦痛な気持ちと心理的不安定さ(怒り,自責の念,悲しみなど)を生じていた.それら苦痛な気持ちを増強するものとして,CMの役割不明確感やCM自身の能力不足感が,苦痛な気持ちを癒すものとして,事例検討,スーパーバイズ,コンサルテーションがあった. 日本のCMがその実践において経験しているMDのMoralの部分,すなわち専門職の信念や価値観に基づく倫理的/道徳的に適切な行動が必要であるという判断については,日本人の持つ信念や価値観あるいは倫理的/道徳的判断が影響していると考えられ,今後継続して検討する必要がある.
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