2012 Fiscal Year Research-status Report
触法精神障害者家族に対する支援体制の確立に向けた基礎的研究
Project/Area Number |
24593520
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
小池 純子 自治医科大学, 看護学部, 助教 (00617467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲本 淳子 昭和大学, 医学部, 准教授 (20306997)
針間 博彦 公益財団法人東京都医学総合研究所, その他部局等, 研究員 (30462782)
半澤 節子 自治医科大学, 看護学部, 教授 (50325677)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 触法精神障害者 / 家族 / 実態調査 |
Research Abstract |
本研究の目的は、触法精神障害者家族の現状の中でも、特に心理的影響と支援ニーズについて、1.入院制度の特性、2.触法行為の重大性、3.地域特性に着目しながら現状を明らかにし、触法精神障害者家族に対する支援体制を確立するための基礎資料を得ることを目的としている。これまで行われてきた家族に対する調査の対象は、主に地域で生活する一般精神障害者の家族である場合が多かった。しかし本研究は、実際に他害行為を行ったために入院医療が必要となった精神障害者とその家族を対象とした多施設共同研究であり、幅広い観点から現状を明らかにすることができる。 平成24年度は、分担研究者らの綿密な打ち合わせを行った上で、調査項目を確定するための予備調査を実施した。予備調査では、措置入院をした精神障害者家族6名に対して、(1)医療者に最も伝えたいこと、(2)医療制度に対する思い、(3)医療者に対する思い、(4)患者に対する思い、(5)現時点での家族の困りや医療制度および医療者への要望を中心にインタビュー調査を行った。また措置入院をした精神障害者10名を対象とした実態調査を行った。診療録をリソースとし、調査項目は(1)行った他害行為の具体的内容、(2)他害行為を行った当時の精神症状、(3)生活歴病歴、(4)社会的役割などである。本調査によって、全ての家族が本心として感じていることが把握できたと同時に、実際に調査を行う手続きとして強化する必要がある観点が明らかになった。 行った予備調査の結果を分析しつつ、先行研究を整理しこれを参照しながら、家族に対して行う質問紙、および患者の実態調査を行うための調査票を作成した。作成した質問紙等を用いて行う本調査については、具体的な調査方法が決定しており、倫理委員会において承認が得られ次第、着手していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は、実際に使用する家族に対する質問紙と調査票の内容や、実際の調査方法を確定する過程で、多く議論を要した。特に、様々な苦労を抱えている触法精神障害者家族に対し、(1)質問をする内容や表現が適切であるか、(2)質問数が適切であるか、(3)どのような方法をとることが、家族にとって苦痛を最小限にできるか、などの観点について、慎重に決定する必要があった。これに対しては、予備調査を実施したこと、および全体会議と施設ごとの打ち合わせを行うことによって解消されつつある。 また、措置入院をした精神障害者の家族が計画段階に見込まれた人数よりも減少していることから、研究全体に関わる調査の方法について、当初予定していた、尺度を用いた心理的負担の状態の第1回調査と第2回調査(追跡調査)を行うことよりも、現在の家族の困りや心理的状態に対して丁寧に聴取しながら確実に収集することのほうが、研究意義があるという議論の結果になった。このため、調査対象者の若干の修正と拡大を試みて、調査対象者を確定し、協力機関への依頼を済ませた。 以上のように、実際に調査を行う段階において、計画の修正や予備調査を行う必要が生じたために、調査の遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
先に記した経緯があり、当初の予定と比較すると約半年間の遅れが生じている。しかし本研究は、制度そのものや他害行為を行う精神障害者の性質上、家族数の変動を含め研究計画の変更が生じることは、全く想定されなかったことではない。そのため、本研究は4年間にわたる研究として申請している。また、当初より研究が遅れている現状はあるが、既に研究対象者と調査対象機関を決定し、研究を統括する機関ならびに調査を最初に開始する機関においては倫理申請を済ませ、結果が出次第調査を開始することができる状況である。このことから、若干の遅れが生じているものの、最終的には期間内に目標とする調査と結果のまとめを行うことができる予定となっている。 今後の研究の推進の方策としては、研究計画の修正後の取り組みを確実に進めていくことが何よりも求められる。また、現在の研究協力者に加え、各施設における調査協力者を増やすことを考えている。さらに、調査までの準備期間や打ち合わせに要する期間が各施設によって異なることが把握されているため、遅れが生じる可能性がある機関に対しては、早めに取り組みを開始する。これらの取り組みによって、研究を予定通りに行えることが見込まれる。 現時点で課題として残っている点に、調査対象者が予想以上に少ないことが懸念されていることが挙げられる。これは触法精神障害者と家族の関係性の変化など、複雑多岐な事情によって、家族の所在が不明になるなどの調査を依頼できない状況が生じているためである。この場合は、期待するデータ数が得られるように、予定している調査期間を延長したいと考えている。ただし、このように調査期間の延長を行った場合においても、現時点では、予定通りの期間で研究を終えられる見込みになっている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2年目である平成25年度は、本調査として家族に対する質問紙調査、および患者の実態調査を行っていくため、印刷にかかる費用、郵送費用、調査機関に赴く旅費、研究協力者への謝金が主な支出項目になる。
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Research Products
(9 results)