2012 Fiscal Year Research-status Report
子どもとの継続的世代間交流はアルツハイマー病者の生活の質を維持改善するか
Project/Area Number |
24593534
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
六角 僚子 東京工科大学, 医療保健学部, 教授 (10382813)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 小百合 東京工科大学, 医療保健学部, 講師 (20238182)
関 由香里 東京工科大学, 医療保健学部, 助手 (20613285)
本間 昭 社会福祉法人浴風会認知症介護研究・研修東京センター, センター長 (40081707)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 老年看護学 / アルツハイマー病 / 継続的世代間交流 |
Research Abstract |
当該研究計画の目的は、子どもとの継続的世代間交流はアルツハイマー病者の生活の質を維持・改善するかどうかを検討するものである。社会保障・人口問題研究所の人口統計資料集2012年版によれば、2010年の総世帯数に対する3世代家族(65歳以上の高齢者が世帯主である直系3世帯以上)の割合は16.2%と低く、小中学生に代表される子供たちが、認知症を含む高齢者の生活と接する機会がきわめて限定されている。日本において、アルツハイマー病は認知症の原因別疾患としては6~7割を占めているにもかかわらず、アルツハイマー病者に特化した世代間交流の取り組みはみあたらない。子どもを介しての社会的交流を継続的に持つことは、アルツハイマー病者の生活の質の維持・改善に寄与すると考えられる。 研究目的を達成するための研究計画・方法は子どもとの継続的にかかわりをもつ世代間交流の介入研究であり、対象群はA市の通所介護施設2か所に通う、臨床的にアルツハイマー病と診断された者10名ずつとする。介入群:保育園児との長期的かつ継続的な世代間交流プログラムに参加するアルツハイマー病者10名 対照群:保育園児との世代間交流の機会を持たないアルツハイマー病者10名 24年度は、介入研究の準備を整え、属性を可能な限り同じくするアルツハイマー病者を選定し、介入群と対照群とにした。8月に介入前の評価を行い、介入研究を始めた。その後2月に中間評価実施した。評価にあたっては7種の尺度を活用し、今後も26年度8月まで実施予定である。現在はデータ分析中であるが、気分状態評価ABS、生活の質QPL-ADに変化が見られ、子どもとの継続的なふれあいによりアルツハイマー病者の認知・情動・意欲など精神機能に訴え、アルツハイマー病者は活力が与えられ、生活の質の維持・改善が図れると考えられる。子どもたちにも高齢者への接し方の変化が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象者が全員高齢者であるため、高齢者の急病・事故による入院や入所などで、当初のグループで準備していた10名の対象が減ってきている。その状況も想定内ではあったが、対象者が少ない中でのデータ分析は今後課題である。 それ以外は研究計画に沿い、毎日の世代間交流が行われている。子どもたちも高齢者との触れ合いを楽しみにし、お気に入りの高齢者のひざに毎朝抱っこされている風景もある。高齢者から子どもたちが来るのを楽しみにしている言葉が聞かれている。月一度程度は子どもの両親が参加できるように企画しているが、参加率が高い。親子で楽しんでいる様子がうかがえる。25年2月に6か月経過後の評価を行っている。現在分析中であるが、おおむね効果がある値である。その中間報告をThe 20th IAGG World Congress of Gerontology and Geriatrics (IAGG2013 Seoul)でシンポジストとして報告予定である。 また研究協力者である、アクティビティディレクター5名、保育士4名との連携も十分図れており、現場に混乱を与えている状況も見受けられない。アクティビティディレクターからアクティビティケアの発展性や質の向上についての評価も聞かれている。3か月ごとの会議も有意義に行われている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はアルツハイマー病者を対象としているが、この場合には対象の状態像等のアセスメントがきわめて重要であり、研究分担者として認知症専門医が加わっていることにより得られたアウトカムを科学的および医学的に解釈し考察することができる。 世代間交流の試みは国内外で行われているが、アルツハイマー病者を直接対象として、継続的世代間交流のアウトカムを明らかにした活動あるいは研究は報告されていない。また従来、デイサービスを含めた介護福祉機関は地域との交流が必ずしも十分ではなかった。世代間交流のアルツハイマー病者にもたらす効果を明らかにし、その継続的世代間交流のモデル構築に取り組みたい。それを学会などで発信していくことで多くの地域で活用されていくと考える。アルツハイマー病者を地域で支えるためには、地域の理解を欠かすことができない。子どもとの継続的な世代間交流が地域に暮らすアルツハイマー病者に効果的な刺激をもたらすことにより、地域における認知症の理解に大きく貢献することが期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)アクティビティディレクター(看護師・介護福祉士等5名)が中心に進めていく。8月に中間評価、2月に介入後評価を行う。24年度の評価結果をデータ化し、介入群と対照群の比較を開始する。分析対象となる生活実態・インタビューについては、六角・小林・関が中心となりデータ収集・整理を行う。他の6項目の評価は主として本間Drが行い、データ整理・分析は小林・関が中心的に行っていく (2)適宜、研究代表者、研究分担者、フィールド先施設代表者、アクティビティディレクター、保育士らと合同でのミーティングを行いながら、介入研究の進捗状況を観察し、調整をしていく。 (3)平成25年度の学会は24年度の6か月間介入研究についての報告を行う予定である。日本老年看護学会 日本認知症ケア学会中間報告予定国際老年医学会(韓国開催)で当報告者として招致されている(六角)。 (4)平成24年度は初年度でもあり、会議開催が計画より少ないこと、また人件費が多くかからなかったことにより、未使用額(69,332円)が生じた。 (5)25年度には、24年度同様に世代間交流プログラムにかかるアクティビティケア・リアリティオリエンテーション物品等の消耗品(40万円)、会議開催に伴う交通費、日当、また海外の学会報告・研究代表者と分担者、研究補助者2名参加予定(The 20th IAGG World Congress of Gerontology and Geriatrics (IAGG2013 Seoul)、国内学会参加などの旅費(66万円)、フィールド先の事務作業、大学での事務作業の補助員、専門医への謝金などの人件費(60万円)、また取り組み記事などの発信費用(10万円)を、24年度の未使用額(69,332円)と今年度170万円の使用としていく計画である。
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