2012 Fiscal Year Research-status Report
アルコール依存症の回復支援―1次嗜癖の諸相の解明と効果的な看護支援の構築―
Project/Area Number |
24593537
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Health Care University |
Principal Investigator |
伊藤 桂子 東京医療保健大学, 看護学部, 講師 (40600028)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 美弥子 東邦大学, 医学部, 教授 (30158000)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アルコール依存症 / 1次嗜癖 / 回復過程 |
Research Abstract |
アルコール依存症者の自助グループのミーティング(25回)での分かち合いや,手記(「BOX-916 2010年1月~2012年4月」・「回復への道PART1,4」・「信じるようになった」に掲載された92編)から「回復」および「生きづらさ」に関する内容を抽出し,その類似性で分類し「人との関係」,「生きる」,「感謝・喜び」,「過去の自分への気づき」,「自分に対する考え」,「他者に対する考え」,「考え方の変化」,「感情」,「居場所」,「仕事」の10個のカテゴリーを抽出した。 これらの結果から,アルコール依存症者の回復に影響する「生きづらさ」は,その人の物事に対する認知や言語的・非言語的な対人行動,人間関係の形成と維持,自己肯定感,対人信頼感,感情のコントロール,社会的な役割に対する満足感の7つの因子の程度で決定されると考え,アルコール依存症者の「生きづらさ」と「生きづらさ」に影響する因子の概念的定義と枠組みの明確化した。 本研究では,これらの概念に基づいて,「生きづらさ」に影響する7つの因子と心理特性である「誇大性」と「過敏性」の傾向に着目して,アルコール依存症者の「生きづらさ」の存在とその特徴を探索的に明らかにし,回復過程を考察する。 本研究の研究仮説は,①アルコール依存症者は多くの「生きづらさ」に影響する因子を抱えている,②アルコール依存症者には特有の「生きづらさ」がある,③断酒期間が長くなると「生きづらさ」は軽減する,とした。研究デザインは,横断的後ろ向きデザイン,自記式質問紙留置調査法による量的研究を用いて,仮説検証を行う。アルコール依存症者特有の「生きづらさ」を特定するために,アルコール依存症者群とアルコール依存症ではない健康者の集団をコントロール群として調査を行う。「生きづらさ」を測定する尺度はないため,「生きづらさ」に影響する因子に関連する質問項目を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルコール依存症者の自助グループのミーティング(25回)に参加し,アルコール依存症者の分かち合いを聞いたり,手記(「BOX-916 2010年1月~2012年4月」・「回復への道PART1,4」・「信じるようになった」に掲載された92編)の内容分析を行う質的な調査から「回復」および「生きづらさ」に関する内容を抽出し,その類似性で分類し「人との関係」,「生きる」,「感謝・喜び」,「過去の自分への気づき」,「自分に対する考え」,「他者に対する考え」,「考え方の変化」,「感情」,「居場所」,「仕事」の10個のカテゴリーを抽出し特定した。この結果に基づき,アルコール依存症者の「生きづらさ」と「生きづらさ」に影響する因子の概念的定義と枠組みの明確化した。 この概念に基づいて,研究仮説を,①アルコール依存症者は多くの「生きづらさ」に影響する因子を抱えている,②アルコール依存症者には特有の「生きづらさ」がある,③断酒期間が長くなると「生きづらさ」は軽減する,として研究デザインを決定し,質問紙を作成した。 本研究の目的は①アルコール依存症回復者の1次嗜癖の回復過程の諸相と回復像を明らかにする,②アルコール依存症の1次予防・3次予防に効果的なアディクション看護の支援を明確にする,であり,現在のところアルコール依存症の1次嗜癖と関連する回復に伴う生きづらさの概念的定義を明確化し,量的調査の準備を行ったため,達成度は3割程度である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の研究は,前年度までの研究を基に質問紙を作成し,横断的後ろ向きデザイン,自記式質問紙留置調査法による量的研究を用いて,仮説検証を行う。 本研究の対象は,関東甲信越全都県のアルコール依存症の自助グループ(断酒会およびAA)に参加し回復を目指して取り組んでいるアルコール依存症者である。また,コントロール群として,健康者の集団(関東全都県内)を対象とする。標本の大きさの推定には2群の母平均値の差の検定を行い,有意水準α0.05,効果サイズ0.20,検出力0.80のとき,2群のそれぞれで必要なデータ数は392であり,総数で784のデータが必要となる。回収率を40%と見込んで各群へ約2000部の調査票を配布する。 収集したデータは統計解析ソフトを用いて,分析を行う。分析は,アルコール依存症者群およびコントロール群の各項目について,単純集計,基本統計量(平均値,標準偏差等)の算出を行う。また,周囲の人との関係性,生活で生じる困難さに関する項目,評価過敏性‐誇大性自己愛尺度について,アルコール依存症者群とコントロール群における差を,t検定,クロス集計,χ2検定を用いて分析する。さらに,アルコール依存症者群内の断酒5年以上と5年未満の2群でも同様の項目で分析を行う。アルコール依存症者の「生きづらさ」に影響する因子を特定するため,主成分分析を行う。また,判別分析にて,「生きづらさ」の程度と他の要因,周囲の人との関係性と他の要因,「生きづらさ」に影響する因子に関する項目と他の要因,評価過敏性‐誇大性自己愛尺度と他の要因を解析する。 これらの手続きにより,アルコール依存症者の「生きづらさ」の存在と「生きづらさ」に影響する因子を明らかにし,アルコール依存症者の1次嗜癖の回復過程の特徴を明らかにし,アルコール依存症の1次予防・3次予防に効果的なアディクション看護の支援を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度までの研究を基に自記式質問紙を作成する。標本の大きさは,2群の母平均値の差の検定を行い,有意水準α0.05,効果サイズ0.20,検出力0.80のとき,2群のそれぞれで必要なデータ数は392であり,総数で784のデータが必要となる。回収率を40%と見込んで各群へ約2000部,総数4000部の調査票を準備する。この調査票の印刷代,調査を実施するための配送料や返信料などの諸経費に研究費を使用する。返送された調査票を管理するための鍵付きロッカーを購入する。 収集したデータを統計的手法により解析するため,統計解析ソフト(IBM SPSS Statistics 21,共分散構造分析ソフト Amos,IBM SPSS Text Analytics for Surveys)を購入する。
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