2013 Fiscal Year Research-status Report
アルコール依存症の回復支援―1次嗜癖の諸相の解明と効果的な看護支援の構築―
Project/Area Number |
24593537
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Research Institution | Tokyo Health Care University |
Principal Investigator |
伊藤 桂子 東京医療保健大学, 看護学部, 講師 (40600028)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 美弥子 東邦大学, 医学部, その他 (30158000)
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Keywords | アルコール依存症 / 回復過程 / 1次嗜癖 |
Research Abstract |
本研究では,生育歴によって形成される1次嗜癖が2次嗜癖であるアディクションを成立させているという概念を提唱しており,アルコール依存症者の「生きづらさ」は1次嗜癖から生じるものであると考える。 そこで,アルコール依存症者の生きづらさの存在と1次嗜癖の回復過程を明らかにするために,自記式質問紙留置調査法による量的研究を行った。研究対象は,関東甲信越全都県のアルコール依存症の自助グループに参加し回復を目指して取り組んでいる男性アルコール依存症者である。また,コントロール群として,同地域の30-70歳代の健康な男性を対象とした。アルコール依存症者本人が書いた手記の分析を基に開発した「生きづらさ」に影響する因子に関する質問と評価過敏性‐誇大性自己愛尺度(中山他, 2006)で構成した質問紙を用いた。分析方法は,アルコール依存症者群およびコントロール群の各項目について,単純集計,基本統計量(平均値,標準偏差等)の算出を行い比較した。また,アルコール依存症者を断酒期間で4群に分けて,統計的な分析を行った。 今回対象としたアルコール依存症者の半数以上が生きづらさを抱えており,コントロール群よりも生きづらさを強く感じていた。アルコール依存症者の「生きづらさ」は,アルコール依存症者の他者評価への過敏な傾向と他者を理解する力と自己を承認する力が低く,孤独感の欠如,認知の歪みが強いという形で現れることが特徴であった。これらはアルコール依存症者特有の「生きづらさ」であり,幼い頃の愛着欲求の充足困難と自我確立の阻害に起因するという依存の精神病理の傾向である一次嗜癖の存在を証明できたと考えられる。アルコール依存症者の生きづらさは,断酒期間が長くなると低減し,生き方への満足感と自己肯定感,他者を理解する力が高くなるが,孤独感を感じるようになることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は①アルコール依存症回復者の1次嗜癖の回復過程の諸相と回復像を明らかにする,②アルコール依存症の1次予防・3次予防に効果的なアディクション看護の支援を明確にする,であり,現在のところアルコール依存症の1次嗜癖と回復過程を明らかとしたため,達成度は6割程度である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,これまでの研究結果から,アルコール依存症回復者の1次嗜癖に対する効果的な支援・アルコール関連問題予防対策を構築する。 まず,アルコール依存症治療に携わる医療者に向けた勉強会等を企画し,研究結果から治療施設や地域での医療的な支援導入の方向性を検討する。そのうえで,1次嗜癖の回復を支援する看護の要点をまとめ,回復期間や回復状態に応じて必要な介入を明確にする。また,治療施設内および地域における1次嗜癖への看護介入方法を具体的に構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査依頼のための旅費として計上していた予算が、一度で複数個所を訪問したり、メールやアルコール依存症者が集まるイベントを活用したため削減できた。また、当初の計画では、国際学会の参加や勉強会などの企画を予定していたが、平成26年度に実施することとしたため、次年度使用額が生じた。 アルコール依存症治療に携わる医療者に向けた勉強会等を企画し,研究結果から治療施設や地域での医療的な支援導入の方向性を検討する。勉強会の開催を予定している施設は、関東甲信越地域の専門治療病棟および外来などを有している医療機関である。そして、勉強会参加者の意見を質的に分析し、1次嗜癖の回復を支援する看護の要点をまとめ,回復期間や回復状態に応じて必要な介入を明確にする。複数の専門家の協力を得て、質的な分析の信頼性や妥当性を確保する。勉強会企画準備などの旅費や勉強会資料、会場費、分析における研究協力費(交通費含む)、会議運営などの諸経費に研究費を使用する予定である。 研究結果は、日本アルコール・薬物医学会、アルコール関連問題学会、日本アディクション看護学会などの学会で発表するため、そのための諸経費にも研究費を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)