2012 Fiscal Year Research-status Report
介護老人保健施設入居者の終末期のQOLとリスク管理に関する看護ケアモデルの開発
Project/Area Number |
24593538
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
清水 みどり 自治医科大学, 看護学部, 講師 (50294806)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 介護老人保健施設 / 後期高齢者 / QOL / リスク管理 |
Research Abstract |
平成24年度は,まず老健に入居する後期高齢者にとってQOLを維持しつつそれによって生じるリスクを管理する終末期ケアの内容の焦点化をおこなった.文献検討の結果,ケアに関する知見の蓄積があり比較的最後まで残存する能力である「食べること」と誤嚥のリスク管理に焦点化し取り組むことにした.その理由として「食べること」は最後まで生活上の楽しみである場合が多く,誤嚥性肺炎を予防しつつ栄養状態をできるだけ維持することは,成人と比較して長期にわたるとされている後期高齢者の終末期の生命予後改善に資すると考えたためである. 次に文献検討の結果を踏まえてヒアリングおよび参与観察の項目を抽出し,パイロットスタディとして摂食嚥下に積極的に取り組んでいる老健1施設,特養2施設で調査をおこなった.対象に特養を加えたのは,本調査のためのヒアリングおよび参与観察の項目を広く収集するためである.対象者は看護職(主任も含む),介護職(主任も含む),リハビリ職,栄養士とした.現在調査結果を分析し,その結果を踏まえたインタビューガイド等の調査項目を作成中である.また研究計画書の段階では老健のタイプ別に対象施設を抽出する予定であったが,文献検討およびパイロットスタディの結果,介護保険施設では誤嚥予防を含む摂食・嚥下への取り組みは,介護報酬の経口移行・維持加算など他職種連携チームによる枠組みが確立されているため,加算を基準に対象施設を選定するよう修正した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成24年度の計画として,まず文献検討により老健に入居する後期高齢者のQOLを維持しつつ,それによって生じるリスクを管理する終末期ケアの内容の焦点化を行い,焦点化した内容に沿って,施設の看護職(管理者含む)・介護職(管理者含む)・リハビリ職・栄養士へのヒアリング項目および参与観察項目を抽出,次に終末期ケアへの取り組みタイプ別に9施設を抽出して各施設の職員にヒアリング・参与観察し,調査結果と文献検討の結果を踏まえて作成する看護ケアモデルの構成概念の明確化,理論的枠組みの図式化を行う予定であった. しかし実際は文献検討による研究の焦点化,文献検討を踏まえた職員へのヒアリング・参与観察項目の抽出,および予定していた施設数の1/3である3施設の看護職(管理者含む)・介護職(管理者含む)・リハビリ職・栄養士へのヒアリング・参与観察調査の実施までしか到達できなかった.これは計画段階でケア内容の焦点化を含めた文献検討にかかる時間を少なく見積もり過ぎたこと,その結果パイロットスタディの実施時期がずれ込み,年度内に3施設の分析までしか終えることが出来なかったことによる.現在3施設の結果をふまえて調査項目を作成中である.よってH24年度の目標である文献検討および質的帰納的調査による看護ケアモデルの構成概念の明確化,理論的枠組みの図式化までには至らず,これらはH25年度にずれ込むことになった.
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Strategy for Future Research Activity |
3施設の調査結果の分析および文献検討から得られた知見をもとに,ヒアリングおよび参与観察項目を修正しながら,引き続き対象となる6~9施設を選定して10月末までにヒアリング・参与観察調査を実施する.対象施設についてはH24年度の結果を踏まえて,老健のタイプ別ではなく介護報酬の経口移行・維持加算を基準に対象施設を選定するよう修正する.得られたデータを質的帰納的に分析し,看護ケアモデルの構成概念を検討する.調査結果と関連する先行研究の成果を照合し,その独自性や特徴を明瞭に言語化する.以上の検討を経て確定した内容を,理論的枠組みとして図式化すると共に,作成した図に従い文章化する.次に質問項目を作成する.質問項目は質的帰納的研究から産出されたカテゴリーの構造を網羅し,看護職のケア行動を導く根拠となる看護職の意図や判断を組み込む表現とする.理論的枠組みの作成および質問項目作成には,臨床家および施設ケアの専門家から助言を受ける.これらの作業には時間を要することが予測されるため,平成25年度3月末までに終了することとする. H26年度は作成したケアモデルの信頼性・妥当性を確保するための調査を行う.方法としてConsensus development methodのひとつであるDelphi法を用いる.その理由として作成したケアモデルの信頼性・妥当性の検証に必要な資料や根拠が,現状では十分にそろっているとは言い難く,実際に後期高齢者の誤嚥予防を含む摂食・嚥下ケアに携わっている老健の看護職の合意を得ることで,ある程度の信頼性・妥当性を確保出来ると考えるからである.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に予定していた質的帰納的調査の遅れに伴い,H24年度の調査費予算額が消化できなかったため,残額をH25年度に繰り越し,選定した施設の職員を対象にしたヒアリング・参与観察調査のための交通費・データ入力補助謝礼費・資料整理補助謝礼費等に使用する.またH25年度は学会等への成果発表用を行うため,予算に計上した成果発表用の交通費からまかなう.看護ケアモデルの理論的枠組みおよび質問項目作成には臨床家および施設ケアの専門家から助言を受ける必要があるため,専門的知識の提供への謝金および通信費として計上した予算を予定通り使用する.作成したケアモデルの信頼性・妥当性の確保には,専門家を調査対象者にして繰り返しアンケート調査を行うDelphi法を用いるため,統計処理のための統計ソフト購入費およびアンケートの郵送・回収のための通信費として計上した予算を予定通り使用する.
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