2013 Fiscal Year Research-status Report
高齢者福祉施設における肺炎球菌保菌と莢膜型の分子疫学解析~高齢者肺炎予防に向けて
Project/Area Number |
24593541
|
Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
石原 由華 椙山女学園大学, 看護学部, 教授 (30369607)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 美智男 椙山女学園大学, 看護学部, 教授 (20111841)
佐藤 晶子 椙山女学園大学, 看護学部, 助手 (20593510)
社本 生衣 椙山女学園大学, 看護学部, 助手 (40593512)
宇佐美 久枝 椙山女学園大学, 看護学部, 准教授 (80587006)
|
Keywords | 肺炎球菌 / 23価肺炎球菌ワクチン / lytA遺伝子 / 莢膜型 / PCR / 高齢者 |
Research Abstract |
平成25年度も平成23・24年度と同様に、40歳以上の成人を対象とした某市Aと本学との連携講座において、研究の同意を得た参加者に対して年齢、家族構成、孫(小学校入学前)との接触機会、23価肺炎球菌ワクチンならびにインフルエンザワクチン接種の有無等のアンケートを実施後、咽頭ぬぐい液を採取した。de Goria Carvalho Mらの方法(J Clin Microbiol. 2010;48:1611-1618)に準じて、咽頭ぬぐい液から肺炎球菌を分離せずに、そのまま増菌培養してDNAを抽出後、肺炎球菌に特異的であるautolysin遺伝子(lytA, 300bp)をPCRにて検出した。その後、lytA陽性サンプルに関して、23価肺炎球菌ワクチンに含まれる莢膜型をPCRにて検出することに成功した。 その結果、参加者35名中15名(42.9%)がlytA陽性であり肺炎球菌の保菌が認められた。その中で23価肺炎球菌ワクチンに含まれる莢膜型であったのは8名(53.3%)で、14型が3名、10A型が2名、23F型が1名、6B型が1名、4型が1名であった。今回莢膜型が検出された参加者の中で、3名が1~3年未満に23価肺炎球菌ワクチンを接種していた。 さらに、以前の結果から肺炎球菌の感染経路に小児との接触が深く関係していることが示唆されていたため、今年度は某総合病院の小児科外来で肺炎球菌の保菌調査を実施する予定である。また、高齢者に対しては平成25年度に隣接地域である某市Bとの連携講座を新たに立ち上げることに成功し、今年度は40歳以上の成人を対象に肺炎球菌の保菌調査を実施するとともに、23価肺炎球菌ワクチン接種推奨のための講義を行うことになっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
肺炎球菌は自己融解するために増菌培養が非常に困難であるため、検出感度が低く信頼できる結果が必ずしも得られなかった。しかし、今回新たに咽頭ぬぐい液をそのまま液体培地で増菌培養後にDNAを抽出し、PCR(高度遺伝子検出法)により肺炎球菌に特異的なautolysin遺伝子(lytA, 300bp)を検出することに成功した。これにより肺炎球菌の検出感度が飛躍的に向上し、正確な肺炎球菌の保菌率を得ることが可能になった。さらに、lytA陽性サンプルを用いて肺炎球菌の莢膜型をPCRで判定する方法を確立した。これにより、正確な23価肺炎球菌ワクチンのカバー率を得ることが可能になった。 またアンケート調査と今回の莢膜型別の結果から、3年以内に23価肺炎球菌ワクチンを接種したにもかかわらず、ワクチンに含まれている莢膜型を有していたことは、今後の23価ワクチン接種の有効性を考える上で重要なデータとなる。そして、高齢者の肺炎球菌保菌の感染経路を特定するために、某病院の小児科外来で肺炎球菌の保菌調査が実施できることは高齢者の肺炎予防にとって重要な問題提起ができると考える。さらに、調査するフィールドを拡大することによって、市中の高齢者の肺炎球菌保菌率の地域差や地方自治体による23価肺炎球菌ワクチン接種支援事業と肺炎球菌保菌率との関連性を知り、より効果的なワクチン接種推奨のための手立てを考案することができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.某市Aならびに某市Bとの連携講座において、40歳以上の参加者に対してアンケートならびに肺炎球菌保菌調査を実施する。また今回確立したPCRによる方法で莢膜型も判定して、23価肺炎球菌ワクチンのカバー率についても調査する。さらに、23価ワクチン接種推奨のために「肺炎球菌感染症とワクチン」についての講演会も実施する。 2.某総合病院(病床数700床)小児科で外来患児から咽頭ぬぐい液を採取して、市中における小児の肺炎球菌保菌状況を調査する。また、今回確立したPCRによる方法で莢膜型も判定して13価小児肺炎球菌ワクチンンでは予防できない莢膜型がどの程度保菌されているかも調査する。さらに、患児の親(母または父)からも咽頭ぬぐい液を採取して、肺炎球菌の家族内感染の有無についても調査する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25円の余剰を出してしまったのは、さまざまな試薬を購入した結果、その端数がでたためである。 消耗品の購入にあてる予定である。
|
Research Products
(1 results)