2012 Fiscal Year Research-status Report
PIXE法を用いた乳歯硬組織および唾液中微量元素分析と子どもの環境リスク評価
Project/Area Number |
24600002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
猪狩 和子 東北大学, 大学病院, 講師 (90125493)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 温 東北大学, 大学病院, 助教 (50333828)
松山 成男 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70219525)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | こどもの環境 |
Research Abstract |
PIXE法を用いて胎児期および乳児期の暴露物質を蓄積している乳歯エナメル質内の微量元素を分析するために、脱落乳歯の収集とその乳歯を有する児の健康背景に関する情報収集を進めた。マイクロPIXE分析に供するための乳歯試料の調整法については先行研究においてほぼ確立したが、よりクリアな分析のために保有する抜去乳歯を用いて検討を行い、試料の厚さと表面処理方法について改良を加えた。本年度は脳性麻痺、ダウン症、自閉症などを有する児の乳歯の収集が進んだ。収集した個々の乳歯におけるエナメル質含有微量元素の分析(検出微量元素の種類、量、新産線前後での比較)のデータは蓄積されてきたが、提供された乳歯を有する児の健康背景は多種多様であり、健康背景との関連を検索するには今後限定した背景因子に着目して比較検討を進める必要がある。 震災後の瓦礫による土壌汚染や大陸から飛来する化学物質の存在が子どもの健康に及ぼす影響が懸念される現在において、乳歯エナメル質含有微量元素のデータは、子どもを取り巻く環境汚染のリスクを評価する際の基礎データとなりうる有用なものであるといえる。 一方、安静時混合唾液にはリアルタイムの暴露物質が溶出していると考え、エナメル質における分析法と同様にPIXE法を用いての微量元素分析を試みようと検討したが、必ずしも均質でない混合唾液の1滴をマイクロPIXE法で分析することの妥当性について再考する必要性が明らかとなり、唾液中の微量元素分析の方法について再検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
乳歯エナメル質含有微量元素の分析については、得られた試料の分析がほぼ順調に進んでいるが、年度内に得られた試料数が今後健康背景との関連を分析していくには十分とは言えない状況である。 唾液中の微量元素分析の方法について、液体試料のPIXE分析についての専門的知識の提供を受ける予定であった研究者が急逝したため、具体的分析方法の検討に時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
PIXE法による乳歯エナメル質含有微量元素分析の方法については確立することができたため、今後は他施設への協力依頼も考慮して、健康背景との関連を検索するに足る試料数を得られるよう分析試料数の確保に努める。 唾液中微量元素の分析について、PIXE法以外の適切な方法の検討と、その方法を用いてのリアルタイムの暴露物質の検出が可能かどうかの検討を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度はPIXE分析に供した乳歯試料数が少なかったため、分析に関わる物品費の使用が予定どおり進まなかったが、次年度では試料収集に努め分析数を増加させ、それに伴う物品費を使用する。 また、今年度は唾液分析にかかわる方法論の検討に時間を要したため、唾液分析に関する研究費の使用が滞ったが、次年度では、専門的知識の提供を受けるとともに、検討した新たな方法で遂行するために謝金、物品費等を使用する。 次年度は、研究成果発表のための旅費を使用する予定である。
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