2013 Fiscal Year Research-status Report
PIXE法を用いた乳歯硬組織および唾液中微量元素分析と子どもの環境リスク評価
Project/Area Number |
24600002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
猪狩 和子 東北大学, 大学病院, 講師 (90125493)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 温 東北大学, 大学病院, 助教 (50333828)
松山 成男 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70219525)
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Keywords | 子どもの環境 / 微量元素 / 乳歯 |
Research Abstract |
胎児期および乳児期の暴露物質を蓄積していると考えられる乳歯を試料として、エナメル質および象牙質内の微量元素の種類と量、分布様式についてPIXE法を用いて分析した。検出された微量元素データと児の生活環境背景要素との関連を検索して、乳歯硬組織に含まれる微量元素分析が、子どもの環境リスクを評価するための一方法として有用であるかを検討することを目的に、研究を進めてきた。 胎児期および乳児期の比較を行うための基準となる新産線をPIXE分析のカルシウムマッピング像中に検出することに成功した低出生体重児の症例における検討から、新産線をより多くのマッピング像中に表出させるためには、試料の表面の滑沢さが必要であることが考えられた。そのため、試料切片を作成するために従来用いていた器械をミクロトームから、切断面の位置を正確に設定でき、かつ滑沢な切断面が得られるスライサー(新規購入)に変更して、試料の厚さと表面処理法に改良を加え、安定した条件にてPIXE分析ができるよう方法を確立した。しかしながら、本調整法による試料においてもマッピング像中の新産線の表出は必ずしもすべての試料において可能とはならなかった。本年度の分析に用いた乳歯は健康上のエピソードを有しない児から得られたものであることが理由として考えられたが、実体顕微鏡像による新産線の位置をマッピング像に重ね合わせることによりこれらのマッピング像においても胎児期と乳児期を判別することは可能であった。今後PIXE分析に供していく脳性麻痺、ダウン症、自閉症などを有する児の乳歯試料におけるマッピング像では、出生前後の差や疾患による差が明らかになると期待できる。 唾液中の微量元素分析については、適正なPIXE法による分析法の確立に向けて、検討を継続しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
PIXE法による乳歯硬組織中の微量元素を胎児期と乳児期を比較して分析するために乳歯試料調整法の改良を試みたが、その方法を確立するためのトライアルに時間を要し、健康背景における様々なエピソードを有する児から得られた乳歯の分析まで進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
乳歯試料調整の改良法が確立されたので、最終年度である今年度は、収集している健康背景にエピソードを有する児の乳歯での分析を進め、得られた分析データと健康背景との関連を検討していく。 唾液中微量元素の分析については、新たな分析機器の利用は困難なため、PIXE法における分析の実際について共同研究者とともに検討を重ねていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度はほぼ計画通りの使用となったが、昨年度の未使用額が大きかったことと、PIXE分析に供した乳歯試料数がやや少なかったために、分析にかかわる消耗品の使用に遅れが出た。 試料分析を加速し分析試料数を増加させることに伴い、試料調整や分析に関わる消耗品のための物品費を使用する。 また、成果発表を積極的に行い、研究成果発表のための旅費を使用する。
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