2012 Fiscal Year Research-status Report
長寿命住宅が50年後、100年後にも価値を持つためのデザイン学的仕掛けの研究
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24603020
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
原田 昌幸 名古屋市立大学, 芸術工学研究科(研究院), 准教授 (20283393)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 住まい手 / 持続的価値 / インタビュー調査 / 魅力 / 戸建て住宅 / 中古住宅 / 愛着 |
Research Abstract |
住む中で生まれる住宅の価値や魅力を明らかにするために、住まい手を対象にキャプション評価法を応用したインタビュー調査を実施した。住む中で生まれる住宅の価値や魅力には、さまざまな側面(観点)があるのではないか、と考え、「どういったことが住宅の愛着や魅力といった価値につながるのか」については、『住み始めた時よりも、愛着が出てきたところ、味わいが出てきたところ、趣が出てきたところ、しっくり馴染んできたところなど、良くなってきたなあと思うところや、好ましくなってきたなあと思うところ』など、多面的に問う設問を用意した。また、「どういったことが住宅の寿命感(余命感)を短く感じさせるのか」については、『お住まいのなかで、ここはちょっと気にいらないなあと思うところ、少し何とかしたいなあと思うところ、人にはあまり見せたくないなあと思うところ』など、多面的に問う設問を用意して調査した。さらに、当初は2年度目に実施する予定であった、「家族の記憶(家族の歴史)や、お気に入り・こだわりといった能動的行為」に関する設問も用意して実施した。対象者は親世代と子世代、それぞれ40名程度で、実際に住む自己の住宅を対象にしたインタビューに加え、写真撮影も依頼した。 その結果、価値や魅力を感じるものとして指摘された要素は、大きく6つに分類でき、例えば、個室に代表される【住宅(個の空間)】については親世代と子世代で特徴が異なり、子世代での指摘割合に比べ親世代での指摘割合が大幅に小さく、親世代では個の空間がそれほど重要でないことや、玄関に代表される【迎客空間】は親世代、子世代ともに来客を意識した価値や魅力の存在を指摘しており、住まい手が意識する「第三者の視点の存在」とその重要性などを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画の主であるインタビュー調査は、人数として予定していた人数を実施できなかったが、代わりに、次年度(25年度)に予定していた内容も含める形で実施しており、研究の進捗としては、おおむね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、初年度(24年度)実施した「住宅の愛着や魅力」、「住宅の寿命感(余命感)」と「家族の記憶などの能動的行為」に関するインタビュー調査を継続実施し、データ数を合計で60組程度に増やす計画である。なお、このインタビュー調査は、当初25年度に実施する予定であった内容も含んでいる。 さらに、初年度(24年度)の調査結果から、インテリア・エクステリアの建築素材の経年特性の把握と、住まい手ではない第三者からみた価値や魅力の把握の必要性が強く示唆された。そこで、まず、当初予定していた建築材料サプライヤーを対象とした材料の経年変化や耐久性などの特性に関するヒアリング調査について、対象者を倍増し20名程度に増やす。さらに、当初予定していたインタビュー調査の被験者を減らす代わりに、住まい手ではない第三者からみた住宅の価値や魅力についても、50名程度のインタビュー調査を実施する。 3年目の平成26年度は、特に「時間を経た建築としての魅力のメカニズム」に焦点を当てて、調査分析する。重要伝統的建造物群保存地区にある住宅を対象に、時間の経過とともに変化する風合いや趣の魅力、手入れや作り込みなどといった能動的行為にともなう価値の発生について考証する計画である。 そして、以上、3年間の調査分析をもとに、建て替えようと思うのではなく、住宅に愛着を感じ、手を入れながら住み続けようと思うための、住まい手の意識のメカニズムと、それを実現するための、住宅の空間計画法や建築素材の使用法など、デザイン学的な仕掛けのあり方を究明し、得られた結果を取りまとめ、成果発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は、住まい手を対象としたインタビューの追加調査(計50名程度)、建築士と材料サプライヤーを対象としたインタビュー調査(計20名程度)、住まい手でない第三者からみた住宅の価値や魅力についてのインタビュー調査(計50名程度)を予定しており、そのための協力者謝金50万円と、インタビュー調査実施補助とデータ整理のアルバイト謝金として50万円を予定している。 また、成果発表のための旅費8万円と、建築士および材料サプライヤーのインタビュー調査と資料収集のための旅費12万円を予定している。 備品購入の予定はなく、若干の消耗品(15万円)と、調査票の印刷費(3万円)などを予定している。
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