2013 Fiscal Year Research-status Report
長寿命住宅が50年後、100年後にも価値を持つためのデザイン学的仕掛けの研究
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24603020
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
原田 昌幸 名古屋市立大学, 芸術工学研究科(研究院), 准教授 (20283393)
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Keywords | 住まい手 / 持続的価値 / インタビュー調査 / 魅力 / 戸建て住宅 / 中古住宅 / 愛着 |
Research Abstract |
本年度は主に「住む中で生まれる住宅の価値や魅力」に関する調査と「第三者からみた住宅の価値や魅力」に関する調査を実施し、分析・考察を行った。 「住む中で生まれる住宅の価値や魅力」に関しては、親世代(未婚の子どもをもつ世代を対象)と子世代(未婚の大学生・大学院生を対象)を調査し、「愛着が生まれたところ」や「気に入っているところ」「残したいところ」などが持つ心理構造について明らかにした。例えば、親世代の愛着には、主として3つの構造が見られた。一つめは、木材を始めとする素材(建材)の自然な色みの変化に価値を感じる構造で、二つめは手間をかけた庭の植木や草花や野菜に愛着を感じる構造、三つめは建設当初から魅力(例えば、「趣を感じる」)がある要素に愛着を感じる構造であった。これに対して、子世代でも主に3つの愛着構造がみられたが、一つめの素材の自然な変化と二つめの手間をかけた庭の植木などは、親世代と共通の構造であった。しかし、親世代の三つめの建設当初から魅力がある要素に愛着を感じる構造はほとんど観察されず、代わりに、子世代では自身の記憶や成長・思い出に関する要素に対する愛着構造がみられ、『シールの痕』などのような客観的にはマイナス要因になりそうなものでさえ、愛着を感じることなどがわかった。 また、「第三者からみた住宅の価値や魅力」に関しては、学生を被験者に、公道から見える住宅の外構と外観について、フィールドで調査した。その結果、住まい手と似た魅力発生の構造が観察され、塀や門・玄関などに使われて素材の自然な色みの変化に価値を感じる構造と、手入れされた庭の植木や草花や野菜に魅力を感じる構造は共通していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、3つの方法で研究を進める計画であった。1つめは「住む中で生まれる住宅の価値や魅力」に関するキャプション評価法によるインタビュー調査の追加、2つめはインテリア・エクステリアの建材サプライヤーに対するインタビュー調査、3つめは住まい手でない第三者からみた住宅の価値や魅力の調査であった。このうち、1つめと3つめの調査はほぼ完了しているが、2つめの建材サプライヤーに対するインタビュー調査は、調査項目が確定したところで、まだ実施に至っておらず、遅れている。その一方で、26年度(3年目)に実施する予定の重要伝統的建造物群保存地区に立つ住宅を対象とする調査については、すでに調査項目の設計が完了し、インタビューも開始した。研究全体としての進捗としては、おおむね順調に進んでいると考えている
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Strategy for Future Research Activity |
最終の26年度は、3つの方法で研究を進める予定である。第一は、「時間を経過した建築の魅力のメカニズム」に焦点を当て、重要伝統的建造物群保存地区に立地する年月を経た住宅の居住者を中心に調査を行い、経年住宅の魅力に迫る。第二は、25年度に計画のみで実施できなかった、建材サプライヤーに対するインタビュー調査を実施し、建材の役割から、建築の魅力について考察する。第三は、建築士の住宅の設計姿勢に関するインタビュー調査である。長い期間魅力を維持する住宅を作るためには、建築士の役割は大きい。 そして、これらの調査成果をもとに、建て替えようと思うのではなく、住宅に愛着を感じ、手を入れながら住み継ぎたいと思わせるための、住宅の空間設計法や建材の使用法など、デザイン学的な仕掛けのあり方を究明し、得られた成果をまとめ、成果発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査協力を依頼している研究室の学生の学務と就職活動の関係で調査の実施が3ヶ月ほど遅れたために調査協力の謝礼の額が小さくなったことと、無償で調査協力を申し出た被験者が出たために謝金の額が小さくなったことが理由で、次年度使用額が発生した。予定していた調査の実施は遅れたが、次年度実施予定の調査を前倒しで計画、若干名であるが実行しているため、研究全体の進捗に遅れはほとんどない。 26年度は、経年住宅の魅力に関するインタビュー調査の実施と謝礼に80万円、建材サプライヤーのインタビュー調査に25万円、建築士に対するインタビュー調査に30万円を予定している。 また、成果発表と資料収集のための旅費として22万円、消耗品の物品費に25万円などを予定している。
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