2013 Fiscal Year Research-status Report
医師の裁量権に関する倫理・法・社会的視点からの複合的研究
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24610010
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
村岡 潔 佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (10309081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粟屋 剛 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (20151194)
山下 登 岡山大学, 法務研究科, 教授 (90210418)
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Keywords | 医師の裁量権 / 患者の自己決定権 |
Research Abstract |
本研究班は、前年度に引き続き、医学哲学・生命倫理担当の村岡(研究代表者)と生命倫理・医事法担当の粟屋(研究分担者)及び、法務担当の山下(研究分担者)が、医師の裁量のあり方について、前半期は、個々に情報交換・議論を行ってきた。2年目の研究成果は村岡が、「医師会・医学界の裁量でリスク病が決められることの生命倫理の問題点」や「<医師―患者関係>と医師の裁量(権)とについて」、生命倫理国際会議、日本医学哲学・倫理学会大会で、生命倫理学会年次大会で発表した。後半では、2014年3月8日―9日に研究班外の関連研究者をも招き、拡大研究会を開催した。 第一日(8日)は、粟屋から、福島県立大野病院産婦人科において帝王切開後に出血多量で妊婦が亡くなり医師が訴追された事件と、松山における死後生殖の2つの判決文を中心に2時間ほど問題点の指摘がなされ、ワークショップ形式で討論をおこなった。第二セッションは、元・松本歯科大学・倉持武教授(医学哲学・生命倫理)から、「先制医療」の一例として、アンジェリーナ・ジョリーで有名になった「予防的乳房切除術」を例に、予防的切除術を正当化する合理性があるかどうかについて報告があった。この合理性の有無が、医師の裁量権に影響するはずだが、現時点では不確定性の問題が大きいと結論した。 第二日(9日)は岡山大学・山下登教授(医事法)の立場から、「医師の裁量権」という概念と「患者の自己決定権」の問題点について専門のドイツ法との比較から解説がなされ、日独の「医療水準」の考え方の異同について参加者全員で討論した。その結果、生命倫理学者と医事法学者の間では、「医療水準」や「医師の裁量(権)」に関する概念や使用法に大きな違いがあることが判明した。この相違点をどう共通のものにするかを次年度(最終年度)の課題とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) 研究会開催は1回であったが、それ以前に、研究班員が各自の領域で医師の裁量に関する問題について予備研究を踏まえておいた結果、年度末の拡大研究会では、哲学・医学哲学・看護学・薬学などの幅広い分野の研究者を交えて、十分時間をとって有意義な研究会を開催することができたから。特に、医療水準の規定が、日本における法のレベルと生命倫理のレベルでは解釈が慣習的に乖離している点が判明し、最終年度の課題とした。 2) このため、アンケートに使うケーススタデイが遅延してしまったが、これは最終年度の課題とする。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 第4回研究会を7月ないし9月に開催する。特に、医療現場で活躍している現役の医師でかつ医療倫理にも詳しい臨床医を招聘して、大野病院事件やそのほかの医療過誤事件において、実際の医師の裁量が事例の結果にどのような影響を与えたかを解明する。 (2) 社会調査を行う。アンケート調査では、医師を含む医療者並びに非医療者を中心に、事例に関してどのように意思決定がなされるかを問うもの。 (3) 上記の結果を岡山生命倫理研究会や日本生命倫理研究会でミニ・シンポジウムないしはワークショップのような形で発表する。 (4) 年末には、第5回研究会を開き、この研究班の締めくくりを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年三回開催予定の研究会が、諸般の事情で1回しか開催できなかったことと、アンケートによる社会調査が延期になったことが主な理由である。このことは、研究の全体の進行度には大きく影響はしていないと考えたため。また、班員一名のモスクワでの国際生命理会議への出席が都合により取りやめになった結果でもある。また、年度末の研究会の経費支払いが一部最終年度に繰り越しになったこともある 京都および岡山、その他の都市での研究会開催のための旅費・諸経費。また、関西地区以外の、名古屋、東京、北海道(道東生命倫理研究会)などの医療者並びに医療倫理・生命倫理研究者との研究会・意見交換会のための旅費・諸経費。また、臨床医の招聘のように有識者の意見聴取の費用もある。医事法理論と生命倫理のケーススタデイのための文献(特に雑誌類)の購入費。アンケート調査用紙の作成費、郵送費、解析費用(アルバイト代と計算機ソフトなど)。成果の発表等の印刷費。昨年度の繰越分は、研究会の開催を増やすこと、並びに、研究代表者または研究分担者の一人が海外の生命倫理関係の国際学会(生命倫理国際会議2014等)に参加する予定であり、そちらに充当したい。
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[Presentation] Why does 'risk factor' matter to bioethics?2013
Author(s)
村岡 潔
Organizer
International Conference on Bioethics and Ethics of Science by International Association of Law, Ethics and Science (IALES)
Place of Presentation
Kushiro Tourism and International Relations Center (Kushiro, Hokkaido, JAPAN)
Year and Date
20130828-20130828
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