2013 Fiscal Year Research-status Report
明治以降の社会文化と政治機構変動の日本語への影響:分野による表現差の計量解析
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24617015
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Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
金城 ふみ子 東京国際大学, 経済学部, 教授 (50275799)
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Keywords | 文化変容と言語 / 早川三代治 / 有島武郎 / 西欧語の影響 / 言語統制 / 治安維持法 / 社会科学的分析 / 分野による表現差 |
Research Abstract |
社会科学的分析における文章表現への西欧文化西欧語の影響を見るという目的のために、その研究の一部として、平成25年度は早川三代治の作品分析を中心に検討した。 早川三代治(1985-1962)は、日清戦争が終った19世紀の末に内国植民地であった北海道小樽の地主の長男に生まれ、多感な中学生時代にホイットマン、有島武郎と出逢って文学活動を始めた。第2次世界大戦中および戦後に公表した小説などは、地方出版社からであったことから、久しく注目されずに終わったため、後に「知られざる文学者」とも言われた作家でもあり、むしろ経済学者として著名である。早川の長篇小説「土と人」は、昭和4年早春から昭和22年春まで(未刊の最終編の構想を含めると昭和34年まで)の北海道虹別原野の開拓民の生活を描いたものである。 当該年度に実施した具体的な研究内容は、次のとおりである。 (1)早川三代治の執筆活動を文学と経済学の両面から検討し、年表に整理した。(2)早川三代治が長篇小説「土と人」の執筆のために使用した膨大な資料の閲覧と内容について検討をした。(3)計量分析の前段階の準備として、早川三代治の主要作品中、長編小説「土と人」を取り上げ、執筆意図、構成、出版の経緯を中心に解題的検討を行い、同作品が当時の社会情勢、文学の流れの中でどのように位置づけられるかを考察した。(4)上記の考察のため、早川三代治の子息と面談をし、資料の閲覧や疑問点に関しての検討を行った。(5)資料補助者を雇い、今後の計量分析作業のために文学作品資料の電子化作業を進めた。(6)1930年代を中心に日本の言論統制の状況を文学活動について資料調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.分析予定作品の個人所有の資料の調査に手間取った。 2.上記1の理由のため計量分析用資料の電子化作業がやや滞っている。
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Strategy for Future Research Activity |
早川三代治については、分析予定作品の執筆の背景と資料調査がほぼ終わり、計量調査のための資料の電子化を進めている。今年度のなるべく早い時期に計量調査に入れるよう作業準備を行う。 今後の作業予定としては、農村の生活実態が描写の分析(どのような語彙と構文で書かれているか)、欧文脈的影響の計量的検討、文章の分野による欧文脈的影響の差異を計量する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定通りに研究費の執行ができなかったのは、主に以下の2点による。(1)調査予定先の小樽商科大学附属図書館早川文庫が長期工事下にあり、訪問調査ができなかったため。(2)研究資料整理補助ができる適当な人が見つからなかったため。 上記理由は既に解消しているので、今年度以降研究終了までの3ヶ年は、書籍文献資料購入、資料調査、謝金など、所属機関に提出した支出予定明細書に記載したとおりに使用する計画である。
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