2012 Fiscal Year Research-status Report
組織切片局所からの脂質表面抽出質量分析法による病態解析
Project/Area Number |
24619007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
田口 良 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (20080210)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | リピドミクス / メタボロミクス / 質量分析 |
Research Abstract |
24年度はナノフローESI装置NanoMateによる微量解析と、新たに開発された溶媒抽出表面直接分析 (LESA)を組み合わせて、病態臓器切片局所及び臨床体液サンプルの脂質メタボロミクスへの応用の可能性を試みた。 組織切片からの直接解析を2通りの質量分析システムにより検討した。まず、4000Qtrapによる部分構造特異的な包括的解析ではリン脂質の各クラス毎の選択的同定や酸性糖脂質のシアル酸や硫酸基による特異的な同定が可能であった。また、Orbitrapによる高分解能、精密質量による解析では、その質量精度の高さから、微妙な元素組成の違いを区別することが可能であった。これらの手法を同時に組み合わせる事により、高度不飽和脂肪酸の変動解析や新規酸化脂質の解析を組織局所レベルでおこなえる可能性が開けてきた。この表面分析法は各種病態モデル動物の病態組織局所や炎症性疾患患者の血しょう等の体液における酸化脂質のメタボローム解析に有効であることが確認できた。 具体的にはマウスやラットの脳、腎臓、心臓等の臓器局所についてそのリン脂質分子種の局在特異性を解析した。また、肥満や高血圧発症モデルラットにおいて多価不飽和脂肪酸含有リン脂質の有意な変動を観察できた。また、ヒトの血しょうや唾液の直接解析についても、ほぼ10μLの液量で可能であることが確認出来た。 今後これらについての論文発表を順次行う予定である。今年度の成果については、質量分析をもちいたリン脂質、糖脂質の同定などに関する共同研究の成果を上げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
田口自身が夏以降体調を崩したため、9月に予定していた国際学会での発表を急遽取りやめる等のアクシデントがあり、学会発表や論文化が当初予定したより遅れている。しかし、溶媒抽出表面分析法そのものの組織切片への適用は順調に進んできており、糖尿病や高血圧発症モデルラットへの解析応用も有効であることが確認出来ている。 今年度はアルツハイマー発症モデル細胞におけるガングリオシドの解析(Neurosci.Lett., 2012)、C型肝炎ウイルスの複製におけるスフィンゴ脂質の解析(ProS Pathog.,2012)、ホスファチジルイノシトールのアシル基リモデリングの解析(Mol.Biol.Cell,2012)、ハムスター拡張心筋症モデルの脂質代謝解析(J.Mol.Cell Cardiol.,2013)、グロボ系糖脂質によるT細胞レセプター制御の解析(Pro.Natl.Acad.Sci.USA,2013)、脂質メディエータープロテクチンD1のインフルエンザに対する効果の解析(Cell,2013)等について共同論文の形で、リピドミクスの成果を報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
溶媒抽出表面解析法 liquid extraction surface analysis(LESA)の組織切片からの脂質分子種分析への活用をさらに進める。具体的には肥満を中心とする生活習慣病等に対するマウスやラット等の発症モデル動物と、それに対する遺伝的又は科学的処置により酸化ストレスの促進又は抑制処理などを施した場合の脂質変動や脂質酸化の状態を従来法と直接抽出測定法により包括的に分析する。さらに、実際にLESAの手法を共同研究等の個別病態モデルや臨床サンプルに適用して得られた包括的データをもとに、自動脂質同定検索ソフトLipid Searchを用いて解析する。また、Simuca P+等の多変量解析ソフトを用いて、サンプル間や代謝物間の差異や類似性等の関係性を明らかにし、病態に関わる主要な代謝因子の検出について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] TLR4-MD-2 complex is negatively regulated by an endogenous ligand, globotetraosylceramide.2013
Author(s)
Kondo Y, Ikeda K, Tokuda N, Nishitani C, Ohto U, Akashi-Takamura S, Ito Y, Uchikawa M, Kuroki Y, Taguchi R, Miyake K, Zhang Q, Furukawa K, Furukawa K.
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Journal Title
Proc Natl Acad Sci U S A.
Volume: 110
Pages: 4714-4719
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] LPIAT1 regulates arachidonic acid content in phosphatidylinositol and is required for cortical lamination in mice2012
Author(s)
Lee HC, Inoue T, Sasaki J, Kubo T, Matsuda S, Nakasaki Y, Hattori M, Tanaka F, Udagawa O, Kono N, Itoh T, Ogiso H, Taguchi R, Arita M, Sasaki T, Arai H.
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Journal Title
Mol Biol Cell.
Volume: 23
Pages: 4689-4700
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 非アルコール性脂肪性肝炎モデルマウス(STAMマウス)の肝臓における脂質メタボローム解析2013
Author(s)
前川京子,上番増喬, 石川将己, 田島陽子, 妹尾勇弥, 村山真由子, 最上(西巻)知子,中西広樹,池田和貴,田口良,藤井庄人,柴崎友一朗, 米山博之,南茂隆生,安田和基, 斎藤嘉朗
Organizer
日本薬学会133回年会
Place of Presentation
横浜
Year and Date
20130328-20130330
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[Presentation] アルツハイマー病モデルマウスの脳組織および血漿における脂質メタボローム解析2012
Author(s)
田島陽子,前川京子,石川将己,村山真由子,妹尾勇弥,最上(西巻)知子,中西広樹,池田和貴,有田 誠,田口良,キョウ建生,奥野海良人,新飯田俊平,滝川修,斎藤 嘉朗
Organizer
第85回日本生化学会大会
Place of Presentation
福岡
Year and Date
20121214-20121216
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[Presentation] アルツハイマー病モデルマウスの脳及び血漿における脂肪酸代謝物のメタボローム解析2012
Author(s)
前川京子, 田島陽子,石川将己, 村山真由子, 妹尾勇弥 ,最上(西巻)知子,中西 広樹,池田和貴,有田誠,田口良,キョウ建生,奥野海良人,新飯田俊平,斎藤嘉朗,滝川修
Organizer
第7回メタボロームシンポジウム
Place of Presentation
鶴岡
Year and Date
20121010-20121012
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