2013 Fiscal Year Research-status Report
キラル分子認識化学を活用した質量分析法による高感度キラリティー解析
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24619015
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Research Institution | 地方独立行政法人大阪市立工業研究所 |
Principal Investigator |
靜間 基博 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 生物・生活材料研究部, 研究主任 (40416318)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木曽 太郎 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 生物・生活材料研究部, 研究主任 (90416313)
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Keywords | 質量分析 / 立体構造 / 光学異性 / ホスト-ゲスト化学 / 光学活性有機金属 / 同位体標識 / 光学純度決定 / エナンチオマー |
Research Abstract |
本研究では、質量分析法で分析物の立体構造、特に光学異性体に関する情報を得るための手法を確立することを目的としている。そのために、光学異性体に対して異なる親和性を有する光学活性ホスト化合物を活用する。光学異性体どうしは質量分析では区別できない。そこで、光学活性ホストの一方の光学異性体に重水素を用いて安定同位体標識したものを合成した。同位体標識したS-異性体と非標識のR-異性体とを当モル量混合し、疑似ラセミ光学活性ホストを作成した。そこに光学活性ゲスト(分析物)を加えて質量分析を行うと同位体標識ホストとゲストとの錯イオン、および、非標識ホストとの錯イオンの2本が観測される。そのピーク強度比は光学異性識別能を反映する。1年目は、キラルアンモニウムイオンと錯形成できる光学活性クラウンエーテルおよびポタンドの安定同位体標識物の合成に成功した。今年度は、新しい光学活性ホストの同位体標識・非標識光学異性体のペアの合成を引き続き行うとともに、前年度合成した光学活性ホストの光学活性ゲストに対する光学異性識別能を評価した。光学活性ゲストとしては、基本構造が同じで側鎖構造の多様性に富むアミノ酸エステルアンモニウムイオンを選択した。質量分析の結果、光学活性ホストにより同じ絶対配置の光学活性ゲストに対する選択性が一致する傾向を示すことがわかった。プロリン誘導体だけはその傾向から外れた。側鎖構造は選択性の大きさに影響した。また、初年度、遊離アミノ酸を分析対象とした光学活性有機金属のエナンチオ選択的配位子交換系を光学異性分析のための質量分析に活用することも試みた。昨年度、質量分析法のみでの遊離アミノ酸光学純度決定に活用できることを見出した。また、円二色スペクトル法、NMR法などで錯安定度定数決定、錯形成挙動および錯構造なども明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に合成した化合物を用いて、本研究目的の質量分析法による光学異性分析に重要な、光学活性ホストと光学活性ゲストのそれぞれの絶対配置と質量分析での評価結果に一定の傾向を見出すことができたため。また、別のアプローチである光学活性有機金属を用いた系でも、質量分析のみでの光学純度決定法を確立できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
単一の光学活性ホスト同位体標識・非標識光学異性体ペアでなく、複数の光学活性ホストペアの混合物中に光学活性ゲストを加えて、1枚のマススペクトルで得られる光学異性識別に関する情報(それぞれのホストの光学異性識別能、異なるホストの光学異性識別能の差異など)を増やし、それらとキラルゲストの構造要因(側鎖の大きさ、官能基の種類、キラルセンターからの距離など)との相関関係をを多変量解析法で調べ、昨年度見出した傾向を、明確化する。混合系の質量分析はサプレッション効果など、別のファクターの寄与も無視できないので、イオン化法や測定条件、また、装置の違いなども詳細に調べて、本研究課題の目的を達成する方策である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究が順調に進捗したため、想定していた追加実験を回避できた。そのため、25年度当当初見込みより、消耗品のいくつかを購入せずに済んだため。また、納入業者による値引きが想定より大きかったため。 光学活性ホストおよびゲストの合成で溶媒や試薬類(同位体標識試薬や光学活性試薬)が必要である。また、そのエナンチオ選択性評価実験での質量分析に関連した消耗品が必要となる。それらを遂行するにあたって一般的な実験消耗品も必要である。以上の目的で必要な消耗品を購入する(850,355円)。また、本課題の成果の発表、関連技術の情報収集などの目的で、関連学会に参加する(旅費 200,000円)。その他として、研究成果を欧文論文誌に投稿する。その際の投稿論文の英文校閲費や学会参加費などが必要である(100,000円)。以上の内容で研究費を使用する計画である。
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