Outline of Annual Research Achievements |
(1)二次性の過眠症40例を検討している.MRIでは,全例に間脳/視床下部周辺の両側性/対称性病変を認めた.いずれも過眠症状を呈していたが,情動脱力発作を呈した症例はなかった.髄液OXは低値が15名,中間値が25名であった.これら低値と中間値であった症例では,OX値は,免疫抑制療法後にいずれも正常化した.間脳/視床下部と第四脳室周囲にはAQP4が高発現するため,この抗体を介した免疫学的機序による障害が生じ,OX神経も二次的に障害され,過眠症/ナルコレプシー(NA)を来していると考えられた.早期に診断し,不可逆的な障害が生じる前に,ステロイドや免疫抑制療法によって治療介入することが重要である.今後はAQP4抗体の他に同様に視神経脊髄炎の原因となり得る抗MOG抗体の検討も必要である. (2) むずむず脚症候群(RLS)とは異なり,NAでは髄液中のトランスフェリン(TF)と鉄イオン(Fe)が有意に高値であり,鉄代謝が昂進している可能性がある.この所見はOX神経の脱落による1次的なものか,ドーパミン代謝の昂進の代償等による2次的なものであるのかは不明である.NAでは周期性四肢運動障害が高率にみられるが,治療薬への反応もRLSとは異なり,鉄代謝と合わせて,病態は異なると考えられた.周期性四肢運動の数(PLMS index)とTFに相関があることが判明した(r=0.6, p=0.04).フェリチンとTFにも相関があることが判明した(r=0.51, p=0.04)年齢と性別で標準化した%BMIとFeにも相関が認められた(r=0.63, p=0.02).栄養状態が良いと想定される%BMIが高値の人ほど,Feも高値であるのではと当初は考えていた.しかし最近のパーキンソン病で睡眠障害のある群と無い群の比較検討をした報告では(Yu, 2013),我々と同様に睡眠障害のある群では,髄液中のTFとFeが有意に高値であり,睡眠障害に特有である可能性を考えている.
|