2013 Fiscal Year Research-status Report
種間相互理解:ヒト-チンパンジー間相互行為における能力の構成
Project/Area Number |
24650136
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高田 明 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (70378826)
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Keywords | 社会性 / 大型類人猿 / 比較認知科学 / 相互行為 |
Research Abstract |
本研究では,飼育下および野生の環境下におけるチンパンジーとヒトとの相互行為を分析し,両者の行動が時間的にどのように組織化されているのかを解明する.とくに身ぶり,物,音声という3種類の記号論的資源に注目して,チンパンジーとヒトがこれらを用いて相互に行動を調整し,相互行為的な能力を構成するプロセスを明らかにする. プロジェクトの2年目となる平成25年度は,研究補助員として研究員1名および複数の謝金バイトを雇用して,これまでに(株)林原生物化学研究所類人猿研究センター(GARI)等で収集してきたチンパンジーとヒトの相互行為場面の動画資料について,整理を進めた.また,とくにヒト-チンパンジー間相互行為における物の利用に焦点をあて,組織的な分析を行った.とくに注目すべき相互行為場面では,身ぶりや会話を分析するためのソフトウェアであるELANを用いて動画資料を取り込み,(1)ヒトとチンパンジーの言語的・非言語的やりとりの書き起こし,(2)背景から動作や身ぶりを切り抜いた静止画像,(3)チンパンジーが扱っている物の静止画像を作成し,これらを関連づけながら,相互行為が時間的にどのように組織化されているかを分析した.11月と3月には京都大学においてデータセッションを行い,上記の分析の妥当性を検討した.また毎月行っている「コミュニケーションの自然誌研究会」では,連携研究者を含む霊長類学者らとヒト-チンパンジー間相互行為についての議論を重ねている.本報告書に記したように,これらの研究の成果は各種学会等での発表に加え,論文として公表してきている.また,本プロジェクト独自のHPを作成し,プロジェクトの進行や成果を随時公開している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は,GARIの研究員を務めていた連携研究者(座馬)を本プロジェクトの研究員として迎え,その協力のもとに謝金バイトを組織して各種の作業にあたった.その結果,これまでに得られた計400時間にも及ぶ動画資料の整理と解析が劇的に進んだ.また研究代表者は,ヒト-チンパンジー間相互行為についてのデータセッションやコミュニケーションの自然誌研究会の世話役を務め,定期的・継続的に分析の妥当性についての検討を重ねている.研究の成果は,各種学会等での発表や論文を通じて公表しつつあることに加え,本プロジェクト独自のHPを通じて公開している.
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Strategy for Future Research Activity |
本プロジェクトの採択にあたっては,交付額が当初の申請額より39%程度減額されたが,既存の研究機材を活用したり,研究補助員に依頼する予定にしていた作業を研究代表者や連携研究者が直接行ったりして研究費の節約に努めている.その結果,平成24~25年度はプロジェクトの基本方針を変えることなく,目標として据えた課題をおおむね達成することができた.事業最終年度にあたる平成26年度も引き続き,申請書に記した計画・方法に沿ってプロジェクトの運営を進める.ただし,平成25年度と平成26年度の2回行うことを予定していたマハレ山塊国立公園での現地調査は,予算の制約から連携研究者が別予算で同地を訪問した際に併せて行うこととした.またGARIは資金難等から平成25年3月に閉鎖したが,GARIのチンパンジーはすべて熊本サンクチュアリに移管された.これを受けて,本プロジェクトでも熊本サンクチュアリでの活動を強化するために調整を重ねている.
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