2012 Fiscal Year Research-status Report
光線力学的細胞膜酸化による多剤排出トランスポーターの機能破壊
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24650268
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
宮本 裕一 埼玉医科大学, 保健医療学部, 准教授 (00313718)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 生物・生体工学 / ナノバイオ / 細胞・組織 / 光線力学的治療 |
Research Abstract |
本年度は主として以下の二項目に関する実験検討を行った。 (1)抗がん剤耐性獲得HeLa細胞の作製: シスプラチン(CDDP)およびパクリタキセル(TXL)に対して耐性を有するHeLa細胞を、それぞれの抗がん剤の濃度を段階的に上昇させるTakaraらの方法にしたがって確立した。抗がん剤に対する耐性の評価は、XTT assayによって増殖阻害曲線を作成、その50%増殖阻害率(IC50)を通常培養されたHeLa細胞と比較することで行った。その結果、CDDP耐性HeLa細胞のIC50は、通常培養されたHeLa細胞のそれの2.1倍以上の濃度を、またTXL耐性HeLa細胞のIC50は、10.2倍以上の濃度を示し、Takaraらの確立した各耐性HeLa細胞と同等の耐性を確認することができた。 (2)光感受性色素およびレーザ光照射条件の検討(PDT条件の検討): 著しい細胞死を誘導することのないよう、連続波レーザ光を励起光とする下記PDT条件に対するHeLa細胞の細胞生存力を評価した。①光感受性色素:Photofrin(10 ug/ml)、②光感受性色素の接触条件:血清存在下にて15分間、③励起光源:赤色半導体レーザ(波長637 nm)、④パワー密度:5mW/cm2、⑤総光照射量:0.5J, 1.0J, 3.0J, 5.0J/cm2。その結果、総光照射量3J/cm2以下において、その細胞生存力は95%以上を示し、また5J/cm2適用時においても、90%以上の細胞生存力が確保されていた。これらの結果から、本研究における抗がん剤耐性獲得HeLa細胞の細胞傷害効果は、上記①から④と3J/cm2以下の総光照射量を適用することで、PDTによる細胞死誘導の影響を考慮せずに評価できるものと考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
耐性獲得メカニズムの異なる二つの抗がん剤それぞれに対する耐性獲得細胞の確立を試み、ほぼ既存の報告と同等の耐性を得ることができた。それゆえ今年度の主たる研究目的は達成できたものと考える。当初は励起光源としてパルス波レーザも評価する予定であったが、発振のトラブルがあり、連続波レーザのみの評価となってしまったが、PDTによる脂質酸化の誘導に問題はないものと考えられ、当初の研究計画そのものに大きく影響するものではない。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度にて確立した抗がん剤耐性獲得HeLa細胞を用い、特にPDTによる多剤排出性膜輸送たんぱく質の機能損傷効果を評価し、最終的にはPDTによる抗がん剤耐性克服作用を実証したい。先に確立したTXL耐性獲得HeLa細胞の耐性化の本質は、P-gp/MDR1によるTXLの排出であり、この排出機構にフォーカスした評価が重要である。Rhodamin123(Rh123)は生細胞内のミトコンドリアの膜電位を反映した蛍光を発する試薬であるが、TXL耐性獲得HeLa細胞の場合、P-gp/MDR1の機能により、Rh123は細胞外に排出され、蛍光強度が減弱してしまうが、PDTによってこの排出能が阻害されるものと考えている。Rh123の排出過程は、1分子蛍光イメージングシステムおよびフローサイトメーターを用いた定量評価により捉えることができ、また耐性機構の異なるCDDP耐性獲得HeLa細胞との比較検討を行うことで、PDTの抗がん剤耐性克服作用を考察したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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