2012 Fiscal Year Research-status Report
教員養成学部における「ものづくり」を重視した理科教育プログラムの開発
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24650541
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Research Institution | Toyama University of International Studies |
Principal Investigator |
原 稔 富山国際大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20019061)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 理科ものづくり / 実験器具製作 / 学習成果ものづくり / コンピュータ制御 |
Research Abstract |
研究目的が理科の授業で使用できる実験器具を教員が製作できるようにする、学習内容を応用した児童・生徒の「ものづくり」およびそのシステム構築であるので、24年度は次の事項に取り組んだ。 1.教員養成学部の学生といえども、理科実験器具は業者から購入するものという認識が強い。そこで、その意識改革のために、授業科目「理科」において小学校理科実験器具を学生に作らせたところ、大きな効果があった。(1)ろうそく立てを針金とアルミホイルで作る。(2)集気びん中の燃焼の実験で使用する集気びんの蓋を、合板とアルミホイルで作る。 2.小学校6年生の理科「電気の利用」における電熱線実験で使用する電熱線実験器具および安価な電源装置の製作を卒業研究の一環として試行錯誤を行わせたところ、次の(1)~(3)にある成果の他に、学生の回路技術が格段に向上した。(1)電熱線の長さを一定にして、電気的接続を確実にするには、電熱線を圧着で接続するのが最適であった。 (2)小学校理科学習指導要領に沿った出力1.5Vと3.0Vの電源装置を作製した。経費は市販品の1/10であった。(3)市販のデジタル電圧計キットを組み立てて使用した。価格は、教材用指針型電圧計の1/10であった。 3.天動説の周転円モデルで地球から見た火星の見かけの動きは、地動説における見かけの動きと同じになることを理解させることはかなり難しい。そこで、卒業研究の一環として、天動説と地動説の惑星の運動を示す模型を、組み込みコンピュータ制御のパルスモーターを利用して製作したところ、一目瞭然の装置とすることができた。 4.ファラデーの電気分解の法則の実験は、今の教科書でも50年前の古典的方法が紹介されている。しかし、最新のデジタル電流計を使用すると、安価な実験装置で非常に正確な実験結果が得られることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの成果を「24年度研究計画」と対比すると、下記が未実行であるが、25年度内に実行できる。 1.小学校「理科」学習指導要領でいう「ものづくり」、すなわち、学習成果を応用したものづくりについては学生達に、何を作るか、材料は何が必要か、どのような道具・工具類が必要かを一覧表として提出するように伝えてあるので、結果を待って作業を進めていく。 2.実験に必要な器具を教員が作る場合の例として、発光ダイオードの過大電流防止、検流計での発光ダイオードに流れる電流の測定をまだ行っていないが、今年度の「理科」の実験中に行う。 3.太陽系模型の製作の過程において、組み込みコンピュータによるパルスモーターの制御は、非常に正確にできることが分かったが、モジュール化には至っていない。可能な限り、特別な器具を使わずに、パソコンだけで条件設定ができるようにする。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画を以下のようにする。 1.昨年度の研究計画の中で積み残した部分を実行する。 2.理科実験器具としての組み込みコンピュータの活用を進めるため、モジュール化等でさらに利用しやすくする。 3.小学校理科における学習成果を利用するオモチャなどの「ものづくり」例として、小学校6年生の「電気の利用」単元を取り上げ、「理科教育法」履修生全員に10Fの電気二重層コンデンサーと手動式発電機を貸し出してものづくりに利用させる。特に、昨年来の理科実験で行ってきた「風の力で走る自動車模型」、「ゴムの力で走る自動車模型」、「乾電池で走る自動車模型」、「光電池で走る自動車模型」等の「いろいろな力で走る自動車模型」シリーズの集大成として、「充電して走る電気自動車模型」を例示として扱う。学生たちの反応を分析し、小学校理科における「ものづくり」の効果、問題点などについて考察を加え、今後の小学校理科における「ものづくり」のあり方について提言する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の「研究計画・方法」のうち、下記の変更をする。 1.発光ダイオード(LED)に流れる電流を測定するために、小学校で通常使われている簡易型検流計を改造してより定電流を測定するようにすることを計画していた。しかし、学生達に電流計の分流抵抗を変えることでレンジを変えることができることを実感させることは意義があるが、市販品を改造するのはメンテナンスの上で問題がある。そこで、検流計のレンジは通常の500mAのままにし、LEDの電流制限抵抗が異なるものをいくつか準備して、LEDの明るさにより電流値をかろうじて計れる場合と検流計の指針がほとんど触れない場合があることを経験させるにとどめる。 2.小学校教員養成課程の全学生に組み込みコンピュータモジュールの製作をさせるのは無理があるので、授業では試作モジュールでこのような事ができるということにとどめ、興味・関心を抱いた学生には指導することにする。 3.学生達が9月に行う小学校教育実習において、実習校での許可が下りれば「ものづくり」を取り入れていただくことを予定していたが、無理な注文はしないことにした。その代りに、今年度から全国的に新しく始まる「小学校・中学校における観察実験アシスタント配置事業」には、本学部の多くの学生がアシスタントとして登録しているので、その配置校の担当者と連絡を取り合って、「ものづくり」支援に関わっていくこととする。
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