2013 Fiscal Year Research-status Report
作って・測って・判断できる放射線教育システムの構築
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24650543
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Research Institution | Tottori University of Environmental Studies |
Principal Investigator |
足利 裕人 鳥取環境大学, 環境学部, 教授 (00612342)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 和道 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (00134403)
竹谷 篤 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 研究員 (30222095)
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Keywords | 教育用放射線検出器 / ガンマ線スペクトル / 半減期 / 逆2乗減衰法則 / 霧箱 |
Research Abstract |
教育用放射線検出器のプロトタイプを製作し,各基板ではCsからの660KeVガンマ線のピークを観察するための十分な性能を確認していたが、組み合わせ試験では,ノイズにより十分な性能が出せなかった。この性能劣化の原因は,リセット信号の電圧値が大きすぎ,アンプ部に雑音を送り込んでいることだとわかった。このため、リセット信号のレベルを下げるよう回路の変更を行い,量産への道筋をつけた。またグラフィック液晶表示部分のソフトの見直しを行い,高速化を図った。 2011年3月11日の直後から,福島の土壌のガンマ線スペクトルを約3か月おきに継続測定してきたが,134Csの0.694MeVガンマ線ピークの面積と137Csの0.662MeVガンマ線ピークの面積の比は約2年で半減し,134Csの半減期を学習するのに適した教材となることが分かった。面積を測定する方法として大学生にはグラフ解析ツールによる積分操作を高校生には図形をはさみで切り取って電子天秤で秤量する方法を開発した。高校生に授業を行い,おおむね良い反応が得られたので,今後はより定量的な評価を試みたい。 放射線副読本に紹介されている放射線の基礎理解について,実験の手引書をつくる下準備として「放射線強度の距離に対する逆2乗減衰法則」の実験を取り上げた。GM管を用いてこの実験を行うと,距離の定義を「線源とGM管の体積中心部までの距離」とおけば「逆2乗減衰法則」はきれいに成り立つことが分かった。霧箱のβ線の飛跡からエネルギーを推定する実験等も開発したので,実験手引書の作成にかかりたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
・Csのガンマ線スペクトルが表示されなかった技術的問題が,表示部のPICへ送るリセット信号の大きさであることが判明したため,量産化への道が開けた。 ・ガンマ線スペクトル測定による半減期測定については,教材開発を達成した。 ・GM館を用いた放射線強度の距離逆2乗減衰についても,教材開発を達成した。 ・β線とβ+線の磁場をかけた霧箱内の飛跡によるローレンツ半径の測定から,β線,β+線のエネルギーが計算できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
7月をめどに、量産までの詳細な回路設計,ソフトウェアの改良を終了し,夏に兵庫県の物理の教員の協力により教育用簡易放射線測定器の量産をおこない。合わせて教師用と中・高校生用の教材マニュアルを作成し,秋以降にキットとして教育現場に提供を開始し,各地の学校で実践を行い,アンケート調査を行って機器の評価をする。 また,ガンマ線スペクトル測定による半減期測定については,今後は教材として実践し,アンケート等によって効果を検証していく。また,GM館を用いた放射線強度の距離逆2乗減衰についても,今後は,教材として実施し,教育用簡易放射線測定器や霧箱実験等と併せて,放射線計測の実験手引書を執筆する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
簡易放射線検出器の各基板を組み合わせた試験で,ノイズによりCsの660KeVガンマ線の十分なピークが得られなかったため,その原因を突き止め,回路設計をやり直した。ピークが得られなかった原因は,表示部のPICへのリセット信号の電圧値が大きすぎ,アンプ部に雑音を送り込んでいることだと分かった。そのため量産体制が遅れた。また,グラフィック液晶表示部分のソフトの見直しを行い,高速化を図った。 現在新たな回路基盤を設計してテストしている。7月には回路が決定し,組み立てキットのプロトタイプができる予定であり,量産化のめどがついた。 9月以降は組み立てキットを全国の中・高等学校へ配布し,実践を重ねてデータを取り,機器の改良とともに,教育手法を改善しながら適切な教員用,生徒用マニュアルも併せて作成していく計画である。
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