2012 Fiscal Year Research-status Report
アナタース型酸化チタンと生理活性物質の併用による細胞死誘導効果増強の研究
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24651054
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
吉見 陽児 東京理科大学, 理工学部, 助教 (70609362)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 酸化チタン / 光触媒 / ナノパーティクル / 酸化ストレス / 細胞死 / 活性酸素 / 皮膚がん / 紫外線 |
Research Abstract |
本年度は酸化チタンによる細胞傷害の測定方法の確立を目的とした基礎検討を行った. 具体的な検討項目は次のとおりである.1)各種酸化チタンの溶媒中の粒径の測定,2)紫外線照射による有機物分解反応の検討,3)MTTアッセイおよびWST-8アッセイによるナノパーティクルとしての酸化チタンの細胞生存活性への影響,4)紫外線照射による効率的な細胞死誘導条件の探索. 得られた結果は以下のとおりである.1)用いた酸化チタンは溶液中ではいずれも500~700nm程度の凝集体として存在した.2)細胞培養培地に混在する成分が,酸化チタン存在下の紫外線照射によって発生する活性酸素種の働きを妨げた.3)WST-8を用いた方法により簡便に細胞生存活性を測定できた.酸化チタンの投与のみでは細胞生存活性にほとんど影響を与えなかった.4)培地を無機塩をベースとした緩衝液に置き換え,酸化チタン存在下で細胞に紫外線照射を行うと効率的に細胞が傷害された.この傷害の様式は恐らくネクローシスと考えられた. これまでの研究においては,酸化チタンを加えただけでは細胞へ与える影響は低く,酸化チタンが安全な物質であるという従来の考えをおおむね支持する結果を得た.しかし一方で,光触媒活性を有する結晶型の酸化チタンは紫外線照射を伴う条件下で極めて有効に細胞を傷害することが明らかとなった. WST-8を用いたアッセイ法が支障なく利用できること,および光触媒活性が細胞を傷害するための条件を見出せたことにより測定方法の骨格部分が確立され今後の研究の進展のためのが基盤が整備されたと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備実験の段階で,ナノパーティクルとしての酸化チタンの細胞生存率へ与える影響は小さいと予想される結果を得たことおよび,紫外線照射を伴う場合との実験条件の整合性を事前に検討しておくことが望ましいと考えられたことから,検討項目を絞った上で当初予定されていたナノパーティクルとしての酸化チタンの細胞生存率への影響のみならず紫外線照射を伴う条件での細胞生存率への影響の検討も含めた実験を行った.そのため次年度に行う研究を一部先取りして進めたことになる.しかしながら,進められたナノパーティクルとしての酸化チタンの研究および紫外線照射を伴う研究は細胞種,細胞生存率判定方法において計画より検討項目を絞って行われていることから,今年度はいわば広く浅く研究を実施したといえる.当初の計画は深く狭くといったものであったが,結果に応変な対応をした適切な計画修正と考えている.以降の研究において検討項目を掘り下げていくことで最終的に研究計画は達成される予定である. これらの事情を総合すると,研究の進捗はおおむね予定通りであると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに確立された細胞傷害の測定方法を用い細胞傷害性を細胞の種類を拡充した検討を行う,一方で細胞傷害性の測定についてWST-8アッセイと異なる方法が利用可能であるか調査を行う.主として実験計画にある細胞死判定に用いられる生化学的手法を試みる予定であるが,これにより細胞傷害のメカニズムの輪郭が明らかとなると考えられる. 現時点では酸化チタンの光触媒活性により発生する活性酸素から細胞を防護する因子としてグルタチオンに着目した実験を念頭に置いている.具体的にはグルタチオン合成酵素の阻害剤との併用,細胞内グルタチオン濃度変化の測定を行い光触媒による細胞傷害のメカニズムの解明の手がかりが得られるものと考えている.これにより本研究の主題である細胞傷害性の増強効果をもたらす併用薬剤について見通しが立つものと考えている. また,活性酸素により生じる過酸化脂質が細胞傷害を引き起こす主要因子であることが予想されるため,細胞の過酸化脂質のイメージングを行い過酸化脂質の分布ならびに発生量と細胞傷害の関係を明らかにするなど,過酸化脂質に関連した解析を進めることも予定している.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用は主に細胞培養に必要な消耗品としての試薬および培養器具ならびに細胞死解析測定用試薬および器具の購入に充てられる予定である.その他、論文発表および学会発表にかかる費用に一部使用される見込みである. 具体的な数字は以下の通り計画している. 細胞培養関連試薬・器具 1,100 (千円), 細胞死活性解析試薬・器具 1,042 (千円), 英文校閲 200 (千円), 論文別刷り 100 (千円), 学会発表 100 (千円) 合計 2,542 (千円)
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Novel tamoxifen derivative Ridaifen-B induces Bcl-2 independent autophagy without estrogen receptor involvement2013
Author(s)
M Takeyoshi, S Sakemoto, I Shiina, K Nakata, K Fujimori, Y Wang, E Umeda, C Watanabe, S Uetake, T Yamori, S Dan, Y Yoshimi, T Shinomiya, M Ikekita
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Journal Title
Biochemical and Biophysical Research Communications
Volume: In press
Pages: In press
Peer Reviewed
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[Presentation] 新規細胞死誘導剤リダイフェンGの作用機構の解析並びに標的分子の同定2012
Author(s)
羽鳥麻奈美, 山本卓, 友光裕子, 椎名勇, 梅田絵梨, 戸田年総, 大篭友博, 岩本真知子, 森田明典, 渡邊千尋, 植竹祥子, 矢守隆夫, 吉見陽児, 四宮貴久, 池北雅彦
Organizer
第85回日本生化学会大会
Place of Presentation
福岡
Year and Date
20121214-20121219