2012 Fiscal Year Research-status Report
多動症は遺伝子疾患か?CIN85異常による多動症の遺伝子診断法の確立
Project/Area Number |
24651219
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
下川 哲昭 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90235680)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究の目標は「多動症の家系における遺伝子の解析により、CIN85異常によるヒト多動症の遺伝子診断法の確立」にある。これまでに明らかになった、CIN85欠損マウスの多動性やヒトCIN85の染色体上の位置などを考え合わせると、多動症患者におけるCIN85遺伝子異常の可能性は高い。 ドイツ ゲッチンゲン大学 医学部附属病院のShoukier博士から提供されたヒト多動症家系3名分のゲノムDNAのCIN85遺伝子における塩基配列をIllumina HiSeqによる次世代シークエンス(オペロンバイオテクノロジー株式会社に外注)により解析した。 遺伝子欠損の可能性のある404部位について、タンパク質をコードする部位をNational Center for Biotechnology Information (NCBI, 米国国立生物工学情報センター)のMap viewerを使って精査した。 その結果、男性患者の13番目のエクソンに31塩基の欠損(12,688,962-12,688,992)を発見した。この領域の後半13塩基は、CIN85のアミノ酸をコードする部位である。この欠損によってアミノ酸の翻訳のためのコドンが変化し、本来のCIN85とは異なったアミノ酸配列のタンパク質が生合成される。特に欠損部位はCIN85の構造上Proline-rich領域 (Pro-rich) と呼ばれているドメインで、他のタンパク質と結合することによって情報伝達機能を担う部位である。多動症患者ではアミノ酸のフレームシフトによってProline残基(アミノ酸配列内でPで表示)がすべて消えてしまっている。このProline-rich領域の機能の消失が正常な脳機能における細胞内情報伝達機構を撹乱し多動症を発症させると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の初年度において当初掲げた多動症患者におけるCIN85遺伝子異常の同定には成功した。この結果は多動症にCIN85が深く関わっていることを強く示唆する。多動症の発症メカニズムを理解するうえで極めて重要な知見である。しかし、解析した全ての患者DNAから異常が同定された訳ではない。今後、解析する患者のDNA数を増やし統計的な解析が必要である。また、最終目標である遺伝子診断法の確立には未だ至っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. CIN85の結合タンパク質の検索:平成24年度の研究においてCIN85のプロリンーリッチドメインにその変異を認めることができたので、免疫沈降法などで結合タンパク質を解析し多動症の発症機序を予測する。変異を同定できたプライマー セットと解析法を「CIN85異常によるヒト多動症の遺伝子診断法」として、そのプロトコールを作製する。 2. CIN85と精神疾患との関連性の解析:CIN85遺伝子はヒトX染色体(Xp22.1-p21.3)に存在し、X連鎖精神遅滞の原因遺伝子オリゴフレニン1や脆弱 X精神遅滞発症に関与しているPSD-95と神経細胞樹状突起棘で共存していることを突きとめた。このことはCIN85がX染色体にリンクした精神疾患の発症メカニズムに深く関与していることを示唆している。これらの病因としてスパインの形成と形態異常が指摘されている。CIN85欠損によりスパインの形成に異常が発生するかを詳細に観察する。 3. 記憶・学習におけるCIN85の役割:CIN85は海馬CA3領域に強く発現している。この領域は記憶・学習を司っていることが知られている。CIN85ノックアウトマウスにFear-Potentiated Startle Testを行うと恐怖における 反応が大きく増加した。この事はCIN85が恐怖の記憶保持に関連していることを強く示唆している。記憶の保持は神経細胞のシナプス伝達の効率が上昇する現象である。これを「長期増強」(Long Term Potentiation:LTP)として電気生理学的に検出する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品:神経細胞培養用器材、培養液、牛胎児血清、siRNA合成、一般試薬 旅費:研究成果の発表を目的とした外国旅費及び国内旅費 その他:シークエンサーの利用料金
|
Research Products
(11 results)
-
-
[Journal Article] Effects of Perinatal Lipopolysaccharide (LPS) Exposure on the Developing Rat Brain; Modeling the Effect of Maternal Infection on the Developing Human CNS.2013
Author(s)
Xu M, Sulkowski ZL, Parekh P, Khan A, Chen T, Midha S, Iwasaki T, Shimokawa N, Koibuchi N, Zavacki AM, Sajdel-Sulkowska EM.
-
Journal Title
Cerebellum
Volume: 12
Pages: 205-213
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Alterations of biochemical marker levels and myonuclear numbers in rat skeletal muscle after ischemia-reperfusion.2013
Author(s)
Itoh M, Shimokawa N, Tajika Y, Murakami T, Aotsuka N, Lesmana R, Farenia R, Iwasaki T, Okda J, Yorifuji H, Koibuchi N.
-
Journal Title
Mol Cell Biochem.
Volume: 373
Pages: 11-18
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-