2013 Fiscal Year Research-status Report
日本の直接投資とローカル企業の形成:タイ自動車産業の例
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24651279
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
上田 曜子 同志社大学, 経済学部, 教授 (20223472)
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Keywords | タイプラスワン / ラオス |
Research Abstract |
タイ経済の新たな動きである「タイ+1」(タイプラスワン)と呼ばれる現象についてラオスにて調査を行った。そして同現象と、タイ資本の形成との関連性についても考察を行った。近年、タイ企業や日本企業の中で、労働集約的な工程をタイから周辺の低賃金国へ移転させる動きがみられるようになった。カンボジア、ラオス、ミャンマーの三か国が、このような国に相当し、「タイ+1」と呼ばれている。 インラック政権は、農村部の人口を支持基盤としている。首相は、農村部からの支持をより強固なものとするために、地方の賃金を引き上げ、かつバンコクと農村部の賃金を同水準とする政策を実施した。この結果、賃金の低かった遠隔の地方県において、大幅な法定最低賃金の引き上げが実施された。そのため、タイは、労働集約的な産業において、競争力を失いつつある。 賃金の高騰を受けて、タイの製造業企業の中に、労働集約的な生産工程を低賃金の労働力が確保できる周辺三国に移転する動きがみられるようになった。本年度は、この点に関し、ラオスにて現地調査を行った。ラオスでは、工業団地やタイから移転した日系の製造業企業、タイ資本の病院や農場、ラオス政府などを訪問し、情報を収集した。 これらの情報を分析した結果は以下の通りである。第一に、タイの製造業企業でラオスに生産工程を移転した企業は、日系企業が多く、タイ資本の製造業企業の移転は、まだ顕著な現象にはなっていない。第二に、タイ資本でラオスで操業している企業は農業(農場経営)、病院やホテルなどのサービス業であり、非製造業企業であった。 以上の点から、タイの地場資本の製造業は、ラオスに生産工程の一部を移転するには至っていないことが明らかとなった。よって、タイ経済を牽引する日系の製造業企業と比べると、タイ資本の製造業企業は、海外進出というダイナミズムに欠けることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、情報収集に関して大きな問題は生じていないため、研究の目的はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、タイあるいはタイ企業が進出している周辺国などで、現地調査を行い、タイ資本の成長について、情報収集を行う。本研究は、自動車産業を対象としているので、自動車関連企業について調査及び情報収集を継続する。
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