2014 Fiscal Year Annual Research Report
日本の直接投資とローカル企業の形成:タイ自動車産業の例
Project/Area Number |
24651279
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
上田 曜子 同志社大学, 経済学部, 教授 (20223472)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | タイ / 自動車部品産業 / 日本の直接投資 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度においては、平成24・25年度に収集したタイ自動車部品産業に関するデータを用い、資本所有、設立年等について分析を行った。これを含めた研究期間全体を通じた研究成果は、以下の通りである。 1952年から2008年までの期間に、タイにおいて設立された自動車部品メーカー625社のデータを分析した結果、45.4%に相当する284社が日系企業であった。第一にタイ自動車部品産業の生成に関しては、日本企業が果たした役割が非常に大きいという点が確認できた。 第二に、タイの自動車部品メーカー設立の急増は1980年代後半に始まり、設立数が多い状況は、1997年のアジア通貨危機の発生まで継続した。この背景にある要因は三点である。まずプラザ合意後の円高により、タイに進出した日本の部品メーカーが増加したという点である。次に、1978年に開始された自動車組み立て工場の新規建設禁止が、1993年に廃止されたという点である。これにより、日本の自動車メーカーは、タイをASEANの中核となる生産拠点として位置付け、日本から部品メーカーの進出が増大した。最後に、BBC(Brand to Brand Coplementation)スキームが、1988年に導入され、ASEAN4内の自動車部品の取引に関して、関税の優遇措置を受けられるようになった点があげられる。 要約すると、円高と自由化により、日系部品メーカーがタイ進出を果たし、それを中心として、タイの自動車部品産業が形成されてきた。一方ローカルの部品メーカーは、自動車産業の発展に従って成長したとはいえ、その競争力は日本企業より弱い。 リーマンショック(2008年)後は、小規模あるいは零細な日本の部品メーカーがタイに進出するようになった。このブームは、2011年から2012年にピークを迎え、ローカルの部品メーカーは、厳しい競争に直面している。
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