2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24652003
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
森下 直貴 浜松医科大学, 医学部, 教授 (70200409)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
別所 良美 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (10219149)
李 彩華 名古屋経済大学, 経営学部, 准教授 (10310583)
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Keywords | 日本哲学 / 良心論 / 農本思想 / 哲学辞典 / 権利論 / 日本美術 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本の近代から現代にわたる思想全体の基盤に明治期の「日本哲学」があるという見通しの下に、その骨格を描くことにある。そのさい、長らく忘却されてきた井上哲次郎にとくに注目し、彼の哲学思想を基軸にして、形而上学だけでなく、国民道徳論から、国家論、農本思想、宗教思想、日本美術思想、アカデミズム体制まで関連づけるとともに、当時の東アジアの思想動向(近代儒教、進化論、キリスト教)をも考慮する。以上を通じて、西洋思想と伝統思想の衝突の中で「日本哲学」がどのように形成され、いかに展開されて行ったのかを、第一世代の西周から第二世代の井上をへて第三世代の西田幾多郎まで跡づけようとする。 今年度は定例の研究会を4回開き、報告された6本をめぐって討議を重ねた。5月(名古屋)「「良心」をめぐる大西祝と井上哲次郎をめぐって」では、最初期の『哲学会雑誌』と『哲学雑誌』を具に読み解く中で、当時の哲学者たちの論争の実態を明らかにした。9月(浜松)「江渡狄嶺における「農」と「生命」」では、横井時敬と柳田国男の農業思想や農業産業論を比較検討することで、明治から大正にかけて広がった農本主義の前提を解明した。そのほか、明治・大正期の哲学事典に関する文化史的考察を試みたり、また宗教思想を中として明治期哲学全体を見直したりした。11月(岐阜)には「加藤弘之の『強者の権利』を丁寧に読み、3月「岡倉天心の『東洋の理想』」では、日本哲学と日本美術とのパラレルな関係を確認したが、これは我々の視野を広げるのに大いに役立った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究を通じて、明治期から大正期にかけての哲学思想の広がりや、日本哲学と日本美術とのパラレルな関係を浮かび上がらせることができた。またそれらの成果をふまえて、10月の日本倫理学会の主題別討議「近代日本倫理学の総括ないし反省」において堤題を行ない、井上哲次郎を中心とする「明治哲学」のもつ重要性を指摘することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
西周を中心とする日本哲学の第一世代をも本格的に研究するために、欧米思想と伝統思想との衝突の中で生じた自己変容という視座を設定し、西らの第一世代と井上らの第二世代と西田の第三世代とのあいだの継承関係をいっそう明確にする。また、日中のシンポジウムを北京と西安で開き、現地の研究者と交流することで東アジアの広がりの中に「日本哲学」を位置づける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
来年度の9月12-17日、中国の北京で日中の共同シンポジウムを開催し、欧米思想と伝統思想(儒教)との衝突を受けて、両国の哲学思想がいかなる自己変容の過程を辿ったかを比較する(中華日本哲学会との共催)。これと併せて、西安でも地元の日本思想の研究者との交流や歴史遺産の視察を企画している。このために初年度の24年度から支出額をできるだけ押さえてきた。 日中シンポジウムの開催費用、渡航費、謝金に支出する。
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Research Products
(8 results)