2012 Fiscal Year Research-status Report
頭頚部姿勢の音声への影響:dysarthriaの評価及び治療への応用を目指して
Project/Area Number |
24652085
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
吐師 道子 県立広島大学, 保健福祉学部, 教授 (40347779)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 姿勢と発話 / 妥当性 / 聴覚印象評定 / フォルマント周波数 |
Research Abstract |
2012年度は1)妥当性を有する姿勢定義の確立と姿勢測定誤差の推定、2)発話姿勢の違いは聞き分け可能か、3)姿勢変化のフォルマント周波数への影響、について検討した。1)の結果に基づき、本研究で使用する中間位, 前傾位, 円背の3姿勢を姿勢間に測定誤差推定値を超える差を持たせて定義した。またこれら3姿勢について、言語聴覚士は中間位は健常者がとる「良い姿勢」,前傾位と円背は「頭を突き出した悪い姿勢」にほぼ相当すると評価した。2)では、若年健常男性が中間位,前傾位,円背のそれぞれの姿勢で発話した短文を,健常若年者が聞き分けることが可能であるかを聴覚印象評定にて検討した。その結果、姿勢の良さ,姿勢の普通さ,発話の明瞭さ,発話の苦しさの評定値が3姿勢間で異なっており,姿勢による音声の違いを聞き分けることが可能であった。ほとんどの項目で中間位が最も良く評価され,次いで前傾位,円背であった。3)姿勢変化のフォルマント周波数への影響に関しては単独で発話された日本語母音については/i/, /e/, /o/のフォルマント周波数に姿勢間で有意差が認められ、F1は/i/と/o/において円背が中間位より低く、F2は/i/と/e/で円背が中間位より高いという結果となり、姿勢の違いは母音フォルマント周波数に影響を与えることが明らかになった。1)及び2)は学部生の卒業論文となり3)は大学院生の修士論文として完成した。この他姿勢変化の調音運動への影響を検討するため、WAVE Speech Research Systemを用いて3姿勢での調音データが収集され、今年度分析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2012年度には以下の実験を行う予定であった。 予備実験:妥当性と信頼性の高い姿勢の定義を確立し、頭部前方突出位の発話への影響を探る。 実験1:日本語音声の音響的特徴への頭部前方突出位の効果を検討し,発話者年齢及び性別の上記効果への影響について検討する。 実験2:3次元動作解析装置及びWAVE speech research systemを用いて日本語音声の調音運動への頭部前方突出位の効果を検討する。 このうち実施できたのは予備実験、実験1及び2の一部である。実験1に関しては音響的特徴を検討する前に、聞き手が発話姿勢を聞き分けることが可能であるのかを検討し、聞き分けが可能であるという結論から音響的特徴の差の存在が確定された。従って実験1は2013年度も継続して分析を進めることとなる。実験2についてはデータ収集が行われたが、外注した分析ソフトウェアの完成納品が2012年度後半であったこともあり、分析は2013年度に持ち越される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度のゴールは1)発話姿勢の聞き分けの音響的手掛かりの解明、2)姿勢間での母音フォルマントの相違の再検討、3)姿勢変化の調音運動への影響解明、とする。1)については2012年度の聴取実験に使用した文章発話を用いて、聴取者の各発話刺激に対する印象自由記述を参考に「姿勢の悪さ、発話の不明瞭さ」の印象の原因となった音響特性を最初に検討する。特に注目するパラメーターは、発話の明瞭さに関連すると考えられる文章中での母音フォルマント周波数、およびイントネーションの平板さに関連すると思われる基本周波数の変化特徴である。これらのパラメータで姿勢間に差が認められた場合にはこの差が発話が繰り返された場合にも観察されるかを検討し、さらにこれらのパラメータを操作することで姿勢の良しあし、発話の明瞭さの印象が変化するかを検討する。 2)に関しては1)で検討する文章発話中での母音フォルマント周波数との比較を行い、また、被験者数を増やしての検討を行う。3)に関しては2012年度に収集された調音データを解析するとともに、2012年度に問題となった被験者のフィールドジェネレータからの距離による測定精度の劣化に対する対策を行い、さらなるデータ収集を計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度の研究費90万円(直接経費)の配分は以下の通りである。 物品費:100,000 旅費:200,000 謝金等:100,000 その他:500,000 その他に配分された500,000円の主な用途は、調音データ収集のためのWAVE Speech Research Systemのレンタル料(1日当たり100,000円)である。謝金は被験者謝礼及び研究補助アルバイトの雇用に使用される。旅費は主に学会発表に使用され、本年度は海外1件または国内2件の発表を予定している。物品費はデータ収集管理に伴う消耗品の購入に充当される。
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