2012 Fiscal Year Research-status Report
留学生のICTを用いた言語実践の実態調査:学際的な視点から
Project/Area Number |
24652109
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
村田 晶子 関西大学, 国際部, 講師 (60520905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
毛利 貴美 関西大学, 国際部, 講師 (60623981)
古川 智樹 関西大学, 国際部, 講師 (60614617)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 留学生教育 / ICT / 教室外の学び / 国際交流 / Eポートフォリオ / ITリテラシー教育 / 教育工学 / 教育メディア |
Research Abstract |
本研究は、留学生(日本語学習者)の教室外の学びに注目し、教室外の言語実践、学びの方略をICT利用と関連付けながら分析し、留学生がICTの利用を通じてどのような学習、そしてネットワーキングをしているのかを明らかにするものである。 本年度は、調査の第一段階として、留学生の寮内での言語実践の基礎的な調査、そして、留学生の生活空間でのICTの利用実態調査を行った。調査対象として、大学の留学生別科(教室等教育施設)に隣接する留学生寮に住んでいる留学生の中から調査協力者を募集し調査を行った。調査は主に次の3点である。 ①まず、留学生の寮内での言語行動の基礎調査である。留学生の寮内での言語行動の録画を行い、学生の教室外の交流においてどのような交流と学びが観察されるのか分析した。調査結果から学生寮における留学生と日本人のレジデント・アシスタントの交流の実態、そして双方の期待するものが異なることなどを明らかにした。②次に、留学生のICT利用の実態調査である。留学生の学生寮や学生寮に隣接する自習室でのICT利用の過程の録画、関係者のインタビューなどのデータ収集を行い、留学生のICTを利用した学習の様々な形態について分析した。③最後に、留学生別科に入学予定の学習者を対象とした渡日前教育に関する調査である。LMS上のデータを収集し、来日前の学習者がICTを用いてどのような学習を行ったのかを分析した。 今年度の調査結果は、日本語学習者の教室外での言語使用実態の解明に貢献するための貴重な資源であり、ICT を活用したいと考える多様な研究機関の環境整備に貢献しうる貴重なデータとして期待できるものである。また、本調査における留学生の教室外のネットワーキングの調査は、留学生の人的ネットワークの拡大、変容を明らかにするものとして貴重な視点を提供するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目的は、留学生の教室外での交流、言語実践におけるICT利用の位置付けを明らかにすること、そして留学生の教室外におけるICTを用いた人的ネットワークの広がりを明らかにすることにある。 本年度は調査の初年度として、この目的を達成するための基礎調査を3つの視点から行った。 ①日本語学習者の教室外での学びの全体像を把握するための調査を行い、学生寮内での言語行動の録画データの分析を行った。そしてこれにより、学生寮内での留学生とレジデント・アシスタントの交流実態を明らかにした。②上記の調査と並行してよりICT利用に特化した調査として学生のICT利用の録画データおよびインタビューを行い、学生のICTを利用した学びとネットワーキングの実態を分析した。③最後に留学生別科に入学予定の学習者を対象とした渡日前教育に関する調査を行い、来日前の学習者がICTを用いてどのような学習を行ったのかを分析した。さらに、来日後の学習者のインタビューも行い、データを継続的に収集している。 初年度は以上の①から③のような調査を行うことができたので、調査はおおむね順調に進行していると言える。今後は、初年度の調査により明確になったデータ分析の枠組みに基づき、さらにデータの蓄積を図ると同時に、より多角的な視点からの調査研究も並行して行っていきたいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降(平成25 年度、26 年度)は、本年度(平成24年)に実施したデータ収集の手法、そして分析の枠組みを用い、さらに多くのデータの収集・分析を行っていく。 調査対象として、初年度と同じ大学の留学生別科(教室等教育施設)に隣接する留学生寮に住んでいる留学生(日本語学習者)の中から調査協力者をさらに20名程度募集し、学生寮での交流における言語実践の調査、ICT利用調査を継続して行う。 これに加えて次年度からは留学生の教室内と教室外の学習のICTを用いた学びや交流を、より多角的に調査するために、渡日前教育におけるコミュニティーの形成に関する調査、留学生とボランティア日本人学生とのSNSを用いた交流実態の調査、自宅学習におけるICTを用いた情報収集ストラテジーに関する調査なども、関係者の調査許可が得られる範囲で分析していく予定である。また、調査対象をより広い範囲に広げ、学生のICTの利用について広く分析し、より普遍性のある分析結果を出すために、次年度より他の大学でも調査を行う予定である。 調査データの分析に関しては、本年度のデータ分析の枠組みを次年度以降に収集する新しいデータの分析の過程で再検討し、新しく分析すべき項目が出てきた場合には、分析の枠組みの修正、調整を行っていく予定である。そして、調査結果を研究メンバーで継続的にコーディングし、体系的な分析を行っていく予定である。 次年度の平成25年度にはデータの中間報告の発信としての学会発表、論文発表を積極的に行い、最終年度の平成26年度の前半にはデータ収集を完了させ、後半に最終的な研究成果をまとめる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は初年度であったため、観察録画・録音データの文字起こしを研究チームのメンバーが行い、記述方法を確立する必要があった。そのため、予定していたよりも外部に委託する文字化の費用がかからなかった。次年度からはより多くのデータを収集するため、外部への文字起こしの委託が増えると予想され、本年度の費用は主にこの用途で使用する予定である。また、データをより多く収集するために録画カメラ数を増やす予定である。
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Research Products
(7 results)