2012 Fiscal Year Research-status Report
憲法はなぜ人権を保障するのかーーコマーシャル・スピーチを素材としてーー
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24653009
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
高橋 和之 明治大学, 法務研究科, 教授 (70061223)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 表現の自由 / コマーシャル・スピーチ / 憲法上の権利の価値 |
Research Abstract |
コマーシャル・スピーチがいかなる憲法上の保障を受けるかは、それがいかなる憲法的価値の実現に役立っているかという問題に帰着する。その憲法的価値の候補としては、従来、表現の自由が議論の対象となってきた。コマーシャル・スピーチが表現の自由の価値に奉仕するのかどうかは、表現の自由がいかなる価値を保障していると解するかに依存する。この点につき、従来の議論は、表現者にとっての価値よりは、表現受領者にとっての価値に着目してきた。この点に疑問を感じたのが、本研究の出発点であり、かかる問題意識から、2012年度は、関連する文献の収集を中心に研究を進めた。アメリカにおける文献については、ミシガン・ロースクールの図書館のデータベースを利用させてもらうことができ、法律雑誌に掲載された論文や書籍で入手可能なものの大半を収集できたと考えている。収集と平行して、コマーシャル・スピーチに関する判例・学説が、コマーシャル・スピーチを修正一条の保護のもとに置いた最初の判決がだされた1970年代以降今日までに、どのような変遷をたどっているかのおおよその見取り図を頭に入れる作業を行った。 他方で、本研究はコマーシャル・スピーチの保護のあり方についてのアメリカとヨーロッパ諸国の比較も課題としており、2012年度はこれに関する文献をパリ第2大学の図書館において検索・収集した。特に未公表の博士論文をいくつか参照することができ、フランスにおける議論の概略を知ることができた。しかし、ヨーロッパ諸国におけるこの領域の規律は、主としてヨーロッパ人権裁判所の判例が先行していることが分かったので、この点の文献の収集も行った。 収集した文献を読み解き、整理・分析するのが2013年度の作業となると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の主要な作業は文献の収集であると考えていたので、この点ではほぼ予想通り進めることができた。この点で不十分に終わったと感じているのは、パリ第2大学図書館で検索した博士論文を丹念に読み解く時間的余裕がなかった点である。目次等を手がかりに私の問題意識に関連すると思われる箇所を拾い読みすることしかできなかった。 アメリカのコマーシャル・スピーチ論の学説・判例の展開を精査するという中心手課題に関しては、私の問題意識を確認するために、出発点にもどってレーディシュ・ベイカー論争を再読し、レーディシュ説とそれに依拠したバージニア・ボード判決が表現受領者の「受け取る自由」を基礎に議論を組み立てたこととその問題点を整理するという作業を行うことを本年度の作業として予定していたが、予定通りに進めることができた。 ヨーロッパ諸国でこの問題をどのように処理しているかについては、とりあえずフランスについて概略を調べ、表現の自由の保護を受けるという前提は学説上受け入れられているが、表現の自由との関連で法律を審査した判例は存在しない(具体的規範統制の制度を導入したのは最近のことであるということも一つの原因)ということ、むしろヨーロッパ人権裁判所が表現の自由を保障した8条により審査をしているいくつかの判例があること、しかし、表現の自由を侵害するものとして条約違反であるとした判決は厳密には存在しないことなどを確認した。この方面の研究も、予定通りの進行であると考えている。 ただし、獲得した知見を論文にまとめるところまでは進めなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、収集した文献を整理・分析し、論文にまとめるのが、今後の課題である。しかし、文献の収集に関して、パリ第2大学で調査したいくつかの博士論文につき気になる点があるので、これだけは再調査したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ヨーロッパ諸国における状況、およびヨーロッパ人権裁判所の関連判例について、なお文献が十分ではないと感じているので、この補充をしたいと考えており、そのためにパリ第2大学への出張を予定している。
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